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Hydrangea
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「うん、それ言われたわ。多分真里と小夜が初めて会った日。俺がグロッキーで真里が看病、三人で住むのが決まった日だよな?」
「そうそう。いや、こんなね、大の大人グロッキーにするとかどんなクソガキだよとか思ったらさ、違かったんだよ。この人がただ思った以上にバカだっただけだったよ。だからなんか殺意感じ取ってたなら小夜の観察眼は優秀だ。実は自分の身に危険迫ってたからな」
「然り気無く俺の悪口言ったよな、今」
「なるほどー。確かに遥子お姉ちゃんの家から帰ってきたらなんか優しかったかも…」
「懐かしいなー。けど楽しかったなー」
「考えてみたらさ」
みっちゃんがふと言ってタバコに火をつけ、立ち上がった。あぁ、こんなのも懐かしいな。きっと煙が来ないようにとか考えてくれてるんだろうな。
「みっちゃん、別にタバコ大丈夫だよ」
「あぁそう?
あそっか、水野さん確か吸うんだっけ」
そう言ってまた座った。
「三人で住んでたのってホントにごくわずかだったな」
それには少し前に私も気付いた。なんであんなに短い期間だったのにはっきりと覚えてるんだろうって東京で一人暮しをするって決めたときに考えた。
だって東京に住んだのも8年、三重に住んだのも8年だったのに。その中のたった三ヶ月だけが今までの短い人生で一番色濃く残っていて。
「一番楽しかったんだよ、あのときが」
それだけは言える。二人に会う前は本当、今思い返しても仕方なく生きていて。二人と別れた後も、楽しいこともたくさんあった、出会いだってあったけど。やっぱりそれを越えるものにはまだ出会えていない気がする。
だけどそこまで思うのに、思い出すとやっぱり悲しさもついてきていた。
「でもね、なんか二人を思い出すと、悲しくなってた。必ず花火の日を思い出すから。一番の人に出会えて、一番悲しいお別れだったの。
だけどちゃんと悲しくなったら思い出してた。みっちゃんが言ってたの。神様が会わせてくれるよって。今、それって本当だったんだって、やっぱりみっちゃん凄いんだなって、そう思ってるんだ」
いつでもみっちゃんは、間違ったことは教えなかった。
「だからいままで、辛くなったらあのときのことを思い出すの。ずっとそうしてたんだ」
「小夜は強いな」
みっちゃんは、どこか遠くを見るような目で私を見た。
「昔から変わらず強いな、ホントさ。なんでも一人で出来ちゃうんだもんな」
「そんなことないよ!」
「だとしたら、俺に比べて強いよ。俺には出来ない」
「なんかさ、二人とも似てるけど似てないな、全然」
マリちゃんはそう言うと、立ち上がってカウンターの向こうに手を伸ばした。何か取ろうとして苦戦中。相変わらず、物臭だなぁ。
みっちゃんが立とうとしたところでやっと取れたようで、お酒の瓶を持って座り直した。
「面倒臭がり」
「あんたに言われたくないな。飲む?」
「いや、家に帰ったらにする。お前車だろ?」
「まぁね。じゃぁ今日は光也さん家に泊まるかー」
「ったく。そのつもりだったんだろ」
「今は住んでないんだ、二人」
「そりゃぁ。まぁ近いから行き来してるけどね」
「いや、俺は住みたいよ?この人マジね、一人で置いとくとあれだからね」
「てか家帰るの何日ぶりかな…しばらく真里の家にいたからな」
「え?」
「うん。さっきの話だよ。ストーカーに家バレないように。流石にもう大丈夫でしょ。もう見ないしね。
あとこの人、昔から家に寄り付かないから。小夜がいた時は帰らなきゃならないから帰ってたけどね」
「え、でも真里わかんねぇ?なんか嫌じゃね?
なんか家に一人ってキモいんだよなー。この空間にいる生き物が自分だけかって思うと気が狂いそうになる。これ、一人暮しあるあるじゃないかな」
「そーゆーものなの?なんか怖いな…」
「あ、光也さん女の子の夢奪った」
「え、マジ?ごめん。
いや、小夜寮だし大丈夫大丈夫」
いつの間にかみっちゃんはご飯だけ食べ終えてた。量少なかったからな。
「あれからも二人で住んだの?」
「そうだねー、家賃更新のタイミングで引っ越し&店開く&俺卒業だったからタイミングよかったかなー。
今も半同棲くらいの勢いだよ」
「まぁな」
「そうだ!あれから遥子お姉ちゃんと仲直りは?」
「あー、したよ。ほらこれ」
みっちゃんがふとケータイ画面を見せてきた。高校生くらいの男の子と中学生くらいの男の子。高校生の子はなんだか野球部っぽい坊主頭で、中学生の子は眼鏡の、ちょっと内気そうな感じだった。
「勝海と竜太郎。大きくなったよコイツらも」
「なんか以外!あ、竜太郎くんの方が背が高い!」
「そうそう。勝海それが悔しくて野球部入ったみたいだよ」
「へー…」
何はともあれ、仲直りしてよかった。
「そうそう。いや、こんなね、大の大人グロッキーにするとかどんなクソガキだよとか思ったらさ、違かったんだよ。この人がただ思った以上にバカだっただけだったよ。だからなんか殺意感じ取ってたなら小夜の観察眼は優秀だ。実は自分の身に危険迫ってたからな」
「然り気無く俺の悪口言ったよな、今」
「なるほどー。確かに遥子お姉ちゃんの家から帰ってきたらなんか優しかったかも…」
「懐かしいなー。けど楽しかったなー」
「考えてみたらさ」
みっちゃんがふと言ってタバコに火をつけ、立ち上がった。あぁ、こんなのも懐かしいな。きっと煙が来ないようにとか考えてくれてるんだろうな。
「みっちゃん、別にタバコ大丈夫だよ」
「あぁそう?
あそっか、水野さん確か吸うんだっけ」
そう言ってまた座った。
「三人で住んでたのってホントにごくわずかだったな」
それには少し前に私も気付いた。なんであんなに短い期間だったのにはっきりと覚えてるんだろうって東京で一人暮しをするって決めたときに考えた。
だって東京に住んだのも8年、三重に住んだのも8年だったのに。その中のたった三ヶ月だけが今までの短い人生で一番色濃く残っていて。
「一番楽しかったんだよ、あのときが」
それだけは言える。二人に会う前は本当、今思い返しても仕方なく生きていて。二人と別れた後も、楽しいこともたくさんあった、出会いだってあったけど。やっぱりそれを越えるものにはまだ出会えていない気がする。
だけどそこまで思うのに、思い出すとやっぱり悲しさもついてきていた。
「でもね、なんか二人を思い出すと、悲しくなってた。必ず花火の日を思い出すから。一番の人に出会えて、一番悲しいお別れだったの。
だけどちゃんと悲しくなったら思い出してた。みっちゃんが言ってたの。神様が会わせてくれるよって。今、それって本当だったんだって、やっぱりみっちゃん凄いんだなって、そう思ってるんだ」
いつでもみっちゃんは、間違ったことは教えなかった。
「だからいままで、辛くなったらあのときのことを思い出すの。ずっとそうしてたんだ」
「小夜は強いな」
みっちゃんは、どこか遠くを見るような目で私を見た。
「昔から変わらず強いな、ホントさ。なんでも一人で出来ちゃうんだもんな」
「そんなことないよ!」
「だとしたら、俺に比べて強いよ。俺には出来ない」
「なんかさ、二人とも似てるけど似てないな、全然」
マリちゃんはそう言うと、立ち上がってカウンターの向こうに手を伸ばした。何か取ろうとして苦戦中。相変わらず、物臭だなぁ。
みっちゃんが立とうとしたところでやっと取れたようで、お酒の瓶を持って座り直した。
「面倒臭がり」
「あんたに言われたくないな。飲む?」
「いや、家に帰ったらにする。お前車だろ?」
「まぁね。じゃぁ今日は光也さん家に泊まるかー」
「ったく。そのつもりだったんだろ」
「今は住んでないんだ、二人」
「そりゃぁ。まぁ近いから行き来してるけどね」
「いや、俺は住みたいよ?この人マジね、一人で置いとくとあれだからね」
「てか家帰るの何日ぶりかな…しばらく真里の家にいたからな」
「え?」
「うん。さっきの話だよ。ストーカーに家バレないように。流石にもう大丈夫でしょ。もう見ないしね。
あとこの人、昔から家に寄り付かないから。小夜がいた時は帰らなきゃならないから帰ってたけどね」
「え、でも真里わかんねぇ?なんか嫌じゃね?
なんか家に一人ってキモいんだよなー。この空間にいる生き物が自分だけかって思うと気が狂いそうになる。これ、一人暮しあるあるじゃないかな」
「そーゆーものなの?なんか怖いな…」
「あ、光也さん女の子の夢奪った」
「え、マジ?ごめん。
いや、小夜寮だし大丈夫大丈夫」
いつの間にかみっちゃんはご飯だけ食べ終えてた。量少なかったからな。
「あれからも二人で住んだの?」
「そうだねー、家賃更新のタイミングで引っ越し&店開く&俺卒業だったからタイミングよかったかなー。
今も半同棲くらいの勢いだよ」
「まぁな」
「そうだ!あれから遥子お姉ちゃんと仲直りは?」
「あー、したよ。ほらこれ」
みっちゃんがふとケータイ画面を見せてきた。高校生くらいの男の子と中学生くらいの男の子。高校生の子はなんだか野球部っぽい坊主頭で、中学生の子は眼鏡の、ちょっと内気そうな感じだった。
「勝海と竜太郎。大きくなったよコイツらも」
「なんか以外!あ、竜太郎くんの方が背が高い!」
「そうそう。勝海それが悔しくて野球部入ったみたいだよ」
「へー…」
何はともあれ、仲直りしてよかった。
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