あじさい

二色燕𠀋

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Hydrangea

13

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「何時ごろ行こっか」

 片手に灰皿を持って、流しでタバコを吸いながらみっちゃんは言う。

「飯食ってからいく?」
「何もないじゃん」
「うん、確かに」
「昼どっかで外食もありじゃん?」

 何かみっちゃんホント細いなぁ。横から見ると思う。

「昼飯どっかで食ってから行くか」
「そうしよ!」

 その方がみっちゃんなんか食べてくれそうだし。

「なんかずいぶん小夜気合い入ったな今」
「そう?ごちそうさまでした」

 今日の予定は決まり。

 マリちゃんも食べ終わったみたいで、私の食器もまとめて持っていってくれた。

 洗い物を始めていたみっちゃんの真後ろに立って左手で食器を置き右手でスポンジを奪うマリちゃん。一瞬後ろから抱きつくのかと思って息を飲んで見つめてしまった。

「なんだよ」
「小夜とどこ行くか会議してきてくださーい」
「わかった」

 軽く手を洗ってから灰皿を持ってみっちゃんが戻ってきた。

「ちょっとさ、調べてみようよ」

 と言ってパソコンを開く。紫陽花の名所を調べてみる。

 行けそうなところをいくつかみっちゃんとピックアップしてマリちゃんとも話し合う。昔住んでいたところの近くにもあり、そこに行くことになった。
 
 お昼までの時間は、みっちゃんが髪の毛を切ったり、それに便乗して私もちょっと髪の毛を整えてもらったりして過ごした。

「さっぱりしたね」
「軽くなったわ」

 昔からみっちゃんは自分で髪を切っていた。切るというより鋤き鋏で鋤く感じだけども。なんでも美容師の勉強もしたことがあるらしく、道具が整っているのだ。

 肩まであった髪が短くなってさっぱり。短くなるとより真っ直ぐ感が出る。

「みっちゃんさ、ストパーかけてるの?」
「それね、短くすると必ず言われる」
「しなくても言われてるじゃん」
「するとより言われるんだけどさ、なんもしてないんだよねー。
 なんか売れないバンドマンみたいで嫌なんだよな」
「最近じゃ売れてるやつらもやってるからいいじゃん」
「嫌だなー。パーマかけようかなマジで」
「綺麗じゃん。絶対パーマ似合わないし。てか俺的に多分そっちの方が好きだからそのままにしといて」
「なんだよそれ」
「うん、キレイだよねー」

 マリちゃんがみっちゃんの髪の毛をくしゃっと触った。

「あとね、触り心地好きなんだよね。なんか猫ってこんなんだよね」
「猫!?」

 私も触ってみる。確かになんか固いけど柔らかいみたいな感じがそうかも。

 二人でハマって触ってると、「はいはいはい、毛が落ちるから!」とか言って手を払いのける。そして、小さい掃除機で突然頭に掃除機をかけ始めた。

「えぇ!?」
「ん?何驚いてんの?」
「あーそっか、俺はわりと見慣れたからなぁ。
 光也さん間違ってちっちゃい掃除機買っちゃってから有効活用してんだよ」
「なにそれ…想像を絶するんだけど…」
「俺も最初は確かにビビった」

 当の本人結構夢中。その姿が結構異様である。頭が終わると次は洋服。それが終わってようやく床。「あー、やっぱり毛が…」とか言いながら最後はコロコロで終了。

「どうせ床掃除機かけるならいっかって。
だってさ、歩く度に絶対毛落ちてんだよ?面倒じゃん。だったら諸悪の根元からやっつけようかなって」
「ラスボスみたいに言うなぁ」
「あー、だめだチクチクするこれ洗濯。ちょっと風呂入ってきます。これ絶対まだ上に髪残ってる」

 そう言って部屋から出ていった。

「もはや綺麗好きなのか潔癖なのか物臭なのかよくわかんねぇよな。わかるのは、取り敢えず変わり者」
「うん、それごもっとも」
「俺もさ、わりとやってもらうんだけど、てかもうずっと美容室とか言ってないんだけど、俺ん家でやってもらうとあんなもんじゃないよ」
「どゆこと?」
「人のことの方がこだわるっての?マジで気持ち悪いくらいだよ。
 もうね、全然ビフォーアフター違いわかんねぇよってくらい細かいことこだわるわけ。なんだろ?本気で髪の毛一本一本染めてんじゃね?ってレベル。
 最後髪の毛一本も残さず帰るくらいの勢いで掃除して帰るぜ」
「うわぁ…でもどうしよう少し気持ちわかっちゃう、やだなぁ」
「まぁ気持ちはわかる。俺も料理結構そんなんだから。まぁあれまたちょっとなんかこだわり方違う気もするけど。
 単純に嬉しいけどさ」

 確かにさっきやってくれたとき、ちょっと嬉しかった。

 ふと思う。猫みたいな毛って言ったけどみっちゃんそもそも性格ものすごく猫っぽくないかな。マリちゃん多分犬タイプ。

「みっちゃんってさ。
 毛だけじゃなくてさ、性格猫っぽくない?」
「あ、それわかるわ!枕変わると寝れないとか人んち行くとそわそわし始めるとか」
「えぇ、そうなの?けど確かになんかちょっと想像できちゃうなー…。
 マリちゃん犬」
「俺犬?」
「うん。なんか忠誠心っぽい」

 扉が開いた。ちゃんと着替えて髪の毛まで乾かしてきたみたいだ。

「やっぱりパーマかけようかな」
「出たよにゃんこ」
「え?」
「なんでもねぇよ。な?」

 そう振られると頷くしかない。しかしそうすると、「え、気になるんですけどなに?」とか言ってくる。あぁ、ホントに猫っぽいなぁ。
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