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Hydrangea
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次の日起きた頃にはお昼近くだった。目覚ましが鳴るまであと5分。少しもったいない気はしたが、ちょっと気合いを入れたいのもあって、目覚ましを解除して食堂へ向かった。
食事を済ませたら丁度いい時間になったので支度を始める。
シャワーを浴び終えたところでふと気が付く。
履歴書書いてないな…。
確か前にバイトをこっちで探す用に書いてストックしておいたやつがあった筈だと思って段ボールを漁ってみると、案外すぐ見つかって。
志望動機をひたすらに考えていて、気が付くと結構ギリギリで、髪の毛が乾いていない。急いで乾かして取り敢えず履歴書をカバンに入れて部屋を出た。
そう言えばみっちゃんとは連絡取ってないけど時間とか場所とか大丈夫かな?
念のため、国分寺駅に待ち合わせでいいかメールを送る。
いいよ。飯食った?どれくらいでつく?と帰って来たので、食べました、とだけ返した。
みっちゃんは、制服に紺色のパーカーを羽織っていて、いかにも休憩中と言った格好だった。
私を見かけるとすぐ、いつものように微笑んで緩く手を上げた。みっちゃんの前まで行ってすぐ私は、とにかく頭を下げた。
「今日はありがとう。
昨日は本当にごめんね」
「…小夜」
みっちゃんはそんな私の肩に優しく触れた。顔を上げてみると少しだけ微笑んでくれていた。なんだか、自然さを感じるような表情だった。
「昨日ずっとそれ考えてたの?」
「うん」
「そっか」
それだけ言ってみっちゃんは背を向け、お店の方へと歩き出した。私もそれについていく。
「みっちゃん、私あのね、」
「うん」
「あの時、何も考えないままその場で思ったこと言っちゃったけど、後で考え直したらやっぱり私が悪かったなって思ったんだ」
「うん」
「マリちゃんにもみっちゃんにも嫌な思いさせたなって。何もわかってない私がでしゃばったことばっかり言ってさ」
「…まぁ真里になんて言われたかは知らないけどさ、たまにはいいかもしれないよ、あんなのも」
「…みっちゃんは怒ってないの?」
「怒ってはいないよ昨日も今日も。
おかげで俺も考えた。いや、いままで考えなかったわけではなかった。真里も俺もそう、昨日小夜に言われたことはわかってたけどずっと避けて通ってた。長い間。それを突きつけられたかな。
あいつがね、俺に気持ちを明確に伝えて来たのって実は一回だけなんだ。それは、あいつが俺と小夜と一緒に住むって決めた日なんだよ実は。小夜と初めて会った日かな」
「そうだったの!?」
「それが最初で最後。俺さ、あいつの優しさがちょっと受け入れられなくて、なんでそんなに俺に優しくするんだよって聞いたらすっげーあっさり言われた」
そっかあの日。みっちゃん熱で倒れたんだ。私は遥子お姉ちゃんのとこに預けられて…。
「俺があまりにバカだから、一緒に住むって。多分誰かと一緒じゃないと俺は死ぬだろうってさ」
「なんで?」
あの頃のみっちゃんは強くは見えなかった。だけどそんな、死ぬほど弱くも見えなかった。
「…真里にはそう見えたんだよ。ちょっと熱出しただけだったんだけど」
みっちゃんは言葉に詰まった。表情は見えないけどなんとなくこれは隠し事をしたり嘘吐いたりしているときだろうか。
マリちゃん言ってた、みっちゃんはわかりやすいって。
「みっちゃん?」
「でもその時、いい友達でいたいねって言われて…。それからあんまり俺もその件に関して言わなくなった。
あいつの気持ちが今どうなのかすらわからない。なんとなくは、多分あれから揺らがないのかもしれないなって思うけど。俺から聞くのもなんか違うし」
「みっちゃんは、どうしたいの?」
「うーん。俺は正直今のままがいい。また小夜に怒られそうだけど。気持ちには答えられないけど一緒にはいられるかなって。
曖昧なままの方が正直俺はいいかな。
だって本気であいつの為を思ったら俺はもうあいつの前から消えるしかないから。だけどあいつはそれを望まない。多分あいつも今のままが一番楽だから俺たち変わらないんだと思う。そしてわりと満足してる」
どこかではお互いにあまりよくないかもしれないとわかっているのに。
でも確かに二人から聞いた話をまとめると多分、いまが一番丁度いいポジションなのかもしれない。
「どちらかが何かをするとどちらかが辛くなるのか…」
「そうだね」
「うん、ホント昨日はでしゃばりました、ごめんなさい」
「はい、いいですよ。
だけど正直あんな一言もたまにはね、怠けた大人には必要だよ。
小夜の心配なとこはね、人のことをよく見すぎかな」
「え?」
「良いとこだけど悪いとこ。人に感傷をしすぎると結構無駄なところでつまづいて怪我してまたその怪我の上を引っ掻いたりして結局治らなくなったりするんだよ。人一人って案外強くないから。それを見極められたら小夜はもっと強くなるんだろうな」
「うーん」
なんだか難しいことを言われた気がする。
「一人で悩んじゃダメだよ。一人で悩んでも大体は解決しないから。小夜みたいなちょっとした強さや純粋さがあれば、人にもっと相談して解決することも出来るはずだから」
そう言って微笑むみっちゃんはとても優しくて、だけどなんだか翳を感じるような気がした。
食事を済ませたら丁度いい時間になったので支度を始める。
シャワーを浴び終えたところでふと気が付く。
履歴書書いてないな…。
確か前にバイトをこっちで探す用に書いてストックしておいたやつがあった筈だと思って段ボールを漁ってみると、案外すぐ見つかって。
志望動機をひたすらに考えていて、気が付くと結構ギリギリで、髪の毛が乾いていない。急いで乾かして取り敢えず履歴書をカバンに入れて部屋を出た。
そう言えばみっちゃんとは連絡取ってないけど時間とか場所とか大丈夫かな?
念のため、国分寺駅に待ち合わせでいいかメールを送る。
いいよ。飯食った?どれくらいでつく?と帰って来たので、食べました、とだけ返した。
みっちゃんは、制服に紺色のパーカーを羽織っていて、いかにも休憩中と言った格好だった。
私を見かけるとすぐ、いつものように微笑んで緩く手を上げた。みっちゃんの前まで行ってすぐ私は、とにかく頭を下げた。
「今日はありがとう。
昨日は本当にごめんね」
「…小夜」
みっちゃんはそんな私の肩に優しく触れた。顔を上げてみると少しだけ微笑んでくれていた。なんだか、自然さを感じるような表情だった。
「昨日ずっとそれ考えてたの?」
「うん」
「そっか」
それだけ言ってみっちゃんは背を向け、お店の方へと歩き出した。私もそれについていく。
「みっちゃん、私あのね、」
「うん」
「あの時、何も考えないままその場で思ったこと言っちゃったけど、後で考え直したらやっぱり私が悪かったなって思ったんだ」
「うん」
「マリちゃんにもみっちゃんにも嫌な思いさせたなって。何もわかってない私がでしゃばったことばっかり言ってさ」
「…まぁ真里になんて言われたかは知らないけどさ、たまにはいいかもしれないよ、あんなのも」
「…みっちゃんは怒ってないの?」
「怒ってはいないよ昨日も今日も。
おかげで俺も考えた。いや、いままで考えなかったわけではなかった。真里も俺もそう、昨日小夜に言われたことはわかってたけどずっと避けて通ってた。長い間。それを突きつけられたかな。
あいつがね、俺に気持ちを明確に伝えて来たのって実は一回だけなんだ。それは、あいつが俺と小夜と一緒に住むって決めた日なんだよ実は。小夜と初めて会った日かな」
「そうだったの!?」
「それが最初で最後。俺さ、あいつの優しさがちょっと受け入れられなくて、なんでそんなに俺に優しくするんだよって聞いたらすっげーあっさり言われた」
そっかあの日。みっちゃん熱で倒れたんだ。私は遥子お姉ちゃんのとこに預けられて…。
「俺があまりにバカだから、一緒に住むって。多分誰かと一緒じゃないと俺は死ぬだろうってさ」
「なんで?」
あの頃のみっちゃんは強くは見えなかった。だけどそんな、死ぬほど弱くも見えなかった。
「…真里にはそう見えたんだよ。ちょっと熱出しただけだったんだけど」
みっちゃんは言葉に詰まった。表情は見えないけどなんとなくこれは隠し事をしたり嘘吐いたりしているときだろうか。
マリちゃん言ってた、みっちゃんはわかりやすいって。
「みっちゃん?」
「でもその時、いい友達でいたいねって言われて…。それからあんまり俺もその件に関して言わなくなった。
あいつの気持ちが今どうなのかすらわからない。なんとなくは、多分あれから揺らがないのかもしれないなって思うけど。俺から聞くのもなんか違うし」
「みっちゃんは、どうしたいの?」
「うーん。俺は正直今のままがいい。また小夜に怒られそうだけど。気持ちには答えられないけど一緒にはいられるかなって。
曖昧なままの方が正直俺はいいかな。
だって本気であいつの為を思ったら俺はもうあいつの前から消えるしかないから。だけどあいつはそれを望まない。多分あいつも今のままが一番楽だから俺たち変わらないんだと思う。そしてわりと満足してる」
どこかではお互いにあまりよくないかもしれないとわかっているのに。
でも確かに二人から聞いた話をまとめると多分、いまが一番丁度いいポジションなのかもしれない。
「どちらかが何かをするとどちらかが辛くなるのか…」
「そうだね」
「うん、ホント昨日はでしゃばりました、ごめんなさい」
「はい、いいですよ。
だけど正直あんな一言もたまにはね、怠けた大人には必要だよ。
小夜の心配なとこはね、人のことをよく見すぎかな」
「え?」
「良いとこだけど悪いとこ。人に感傷をしすぎると結構無駄なところでつまづいて怪我してまたその怪我の上を引っ掻いたりして結局治らなくなったりするんだよ。人一人って案外強くないから。それを見極められたら小夜はもっと強くなるんだろうな」
「うーん」
なんだか難しいことを言われた気がする。
「一人で悩んじゃダメだよ。一人で悩んでも大体は解決しないから。小夜みたいなちょっとした強さや純粋さがあれば、人にもっと相談して解決することも出来るはずだから」
そう言って微笑むみっちゃんはとても優しくて、だけどなんだか翳を感じるような気がした。
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