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Hydrangea
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救急車の音が遠くから急激に近くなって、止まった。そのまま救急隊員が降りてきて急いで血を処理する。動脈側を切ってしまっていてなかなか止まらない、これは緊急手術だと急いで病院を見つけて三人で救急車に乗り一番近くの病院へ移動。しかし、
「一応ここまで重症だと親族の方以外の立ち入りはお断りしたいのですが」
「多分無理です。今朝方父親がな亡くなったようで全員京都にいます。なかなか来れないでしょう。
事情は話します。連絡は取れるかわかりませんが俺じゃダメですか?この辺みんな親戚のような付き合いをしています。親族の人には一応連絡しますんで…」
「まずは連絡してみてください」
私たちはただただ手術室の前で待つしかなくなった。
マリちゃんが取り敢えずみっちゃんの血塗れのケータイから電話を入れた。
『なんやぁ!クソいっそがしい日に!』
「お久しぶりです。真里です」
『あ、あぁえ?ごめんなぁ、久しぶり…どないしたん?』
「クソ忙しいときにマジすみません。あいつ、やらかしまして」
『え?何…?』
「ただいま重症で、病院にいます。病院の人に連絡とってくれって言われたんですけど…。
今朝方ナイフで脇腹の下辺りをぐっさり刺されまして、しかもそれが動脈側で。血が止まらなくて緊急手術してます、今」
『…はっ?』
「出血量も多かったんでちょっと…」
『え、えぇー!ど、どないしよ!』
「取り敢えず事務の人に一回代わります」
マリちゃんはそれから事務案内まで走っていってケータイを渡した。しばらくしてケータイを返され、2、3言話して電話を切った。
「うん、もしもの時俺たちがICU入っちゃっていいって手続きいま事務の人がしてくれてる。ねぇちゃん多分ここ数日は無理かもしれんって」
「だよなぁ」
「助かるの?」
それには二人とも答えない。
「小夜ちゃん、何か飲む?」
「え?」
「疲れただろうから。だけどもうちょっとかかるだろうし」
ふと思い出して言ってみた。
「暖かいココア…」
「真里は?」
「俺買ってきますよ?」
「いいよ、たまには」
「…じゃぁ紅茶」
そう言うと柏原さんは立ち去った。
「リンゴとわさびどうしたよ?」
「うん…おんなじこと考えてた。実はまだあるんだよ」
「そんな長持ちしたんだ」
「うん。ちょっと壊れたら治してってやってたんだ。マリちゃん、」
私がマリちゃんの方を向くと、ふとマリちゃんは鞄からウェットティッシュを取り出して、私の頬から首筋辺りを拭いてくれた。忘れてたけどそう言えば血がべったりついてるんだった。
「小夜はさ、どうやってここまで生きてきた?」
「え?」
「俺は答えを知るためだった。あの人の側にいて、あの人が言ってることがどこまで嘘でどこまで本当か」
「…わかったの?」
「わかんない。けど、あの人必ずさ、嘘吐くときって、なんか優しいんだよ。それが時にすっごく残酷だってわかってないんだよね。
いや、もしかしたらわかってんのかな。わかってるけど敢えてやってるんだとしたら…」
「うん」
「それってどれだけ神経使うのかな」
遠い目をするマリちゃんがすごく切なく見えた。どうしてもわかり合えない。それはもう、仕方のないことかもしれないけど、私が見ているには辛かった。どうしてそれにマリちゃんもみっちゃんも堪えられるのかがわからない。
「私が生きてこれたのは…どうしてだろう。
日常はずっとつまらなかった。いつもいつも同じことばかりだった。皆なにも変わらないし皆なにもわかってくれないけど、そんな普遍も幸せなのかもしれないって思った。
けどなんだかさ、そう思うとすぐ二人のこと思い出しちゃうんだよね。8年も前だから薄らとしちゃってる記憶だってあるのに」
みっちゃんは8年前に言っていた。たった三ヶ月が、とっても色濃くて。そして…。
「みっちゃんあの時、また会えるよ、神様が会わせてくれるよって言ってた。そしてその後、“次に会う頃にはもう少し大人になってるね。そしたらまた、本当のこと教えてあげる”って言われた。それってなんだろうってずっと思ってた。会ったら聞こうってそう言えば思ってたんだ」
柏原さんが戻ってきて、私に暖かいココアとマリちゃんに紅茶をくれた。会釈して受け取った手が震えていることに今さら気づいた。
「でもさっきね、覚えてる?って。神様なんていないよって言われた。私がずっと8年聞きたかったこと、まさか…まさかこれじゃないよね?こんなかたちで終わっちゃったりしないよね?」
マリちゃんは、みっちゃんは残酷だって言った。もしそれが事実なら、私はもう、みっちゃんに会うことは叶わないんだろう。
「…小夜…」
声が震えているマリちゃんを見ると、泣きそうになっていた。
「あの人ね…でもね…、ものすごく嘘吐きだから。だから…」
「まったく…二人みてると光也ムカつくな」
とか言いながら優しく微笑む柏原さんからも愛情を感じた。
いつでもこうやってただ待つことしか出来ない。少し大人になってもそれは変わらないんだ。
それから2時間ほど経って手術中の赤いランプが消えた。
手術台に乗ったみっちゃんとそれを運ぶ医師達。追いかけようとするがそれを一人の医師に制された。
その女の医師はマスクを外し、会釈した。
「志摩光也さんのご親戚の方々でしょうか?」
「いえ…でもまぁ代理です。雇い主の柏原と申します」
「…ご親戚の方はいつ頃…?」
「多分いま京都で葬式の真っ最中のようでして…三日ほどは帰れないかと。いま事務手続きをお願いしていますが、ICUに入る場合も親戚の者は許可をしてるんで…」
「そうですか…」
「どうなんですか?」
「傷は塞いだんですけど…幸いにも腎臓は避けていたみたいで。あと数ミリずれていたら多分…。
ただ現在も意識不明の重体と言ったところで。大変危険な状態ではあります。ここ2、3日は安心できない状態ですかね…」
「そうですか…」
その医師の人は頭を下げるとすぐに後を追いかけた。それを見て柏原さんは肩をがくっと落とした。
しばらく待っていると、ようやく入室許可が降り、病室に入った。消毒やらマスクやら何やら、いろいろと厳重にして自動扉が開いた。
看護士に案内されたのは6人部屋の一番端、出入り口付近だった。カーテンを開けるとみっちゃんは血の気のない顔で寝ていて。まるでもう、死んじゃったみたいに見えた。唯一生きて感じるのは点滴がゆっくり落ちていっているのだけだ。
心電図モニターの68とか97とか、そんなのわかんないし、全然実感なんてなかった。
ふと首筋を触って確認して見ると、私より体温が低くて。だけととくとくと小さく脈だけは確認出来た。ようやく、堪えていた涙が溢れてきた。
「…よかったぁ…!」
肩に置かれた手が震えていて、見あげるとそれは柏原さんだった。目頭を押さえて、だけど顔をあげたときには涙は溢れていなくて。
「もう少しだな」
「なぁんかさ、光也さん…すっごい気持ち良さそうに寝てんなー」
「やめろよ!なんかそれ、起きなそうじゃん!」
「…そうか…」
案外俯いて言うマリちゃんはいま、何を考えてるんだろう。
「ここで言うと不謹慎かな…でもなんかさ…。
この人なんでいま…幸せそうに見えちまうんだろうな。やっと寝れたね、とかさ、もしかしてあんた…とか、ね」
マリちゃんが詰まった言葉を考えると、わからなくもないけど。
「真里、帰るか」
それがすごく優しい判断だなと思った。
「一応ここまで重症だと親族の方以外の立ち入りはお断りしたいのですが」
「多分無理です。今朝方父親がな亡くなったようで全員京都にいます。なかなか来れないでしょう。
事情は話します。連絡は取れるかわかりませんが俺じゃダメですか?この辺みんな親戚のような付き合いをしています。親族の人には一応連絡しますんで…」
「まずは連絡してみてください」
私たちはただただ手術室の前で待つしかなくなった。
マリちゃんが取り敢えずみっちゃんの血塗れのケータイから電話を入れた。
『なんやぁ!クソいっそがしい日に!』
「お久しぶりです。真里です」
『あ、あぁえ?ごめんなぁ、久しぶり…どないしたん?』
「クソ忙しいときにマジすみません。あいつ、やらかしまして」
『え?何…?』
「ただいま重症で、病院にいます。病院の人に連絡とってくれって言われたんですけど…。
今朝方ナイフで脇腹の下辺りをぐっさり刺されまして、しかもそれが動脈側で。血が止まらなくて緊急手術してます、今」
『…はっ?』
「出血量も多かったんでちょっと…」
『え、えぇー!ど、どないしよ!』
「取り敢えず事務の人に一回代わります」
マリちゃんはそれから事務案内まで走っていってケータイを渡した。しばらくしてケータイを返され、2、3言話して電話を切った。
「うん、もしもの時俺たちがICU入っちゃっていいって手続きいま事務の人がしてくれてる。ねぇちゃん多分ここ数日は無理かもしれんって」
「だよなぁ」
「助かるの?」
それには二人とも答えない。
「小夜ちゃん、何か飲む?」
「え?」
「疲れただろうから。だけどもうちょっとかかるだろうし」
ふと思い出して言ってみた。
「暖かいココア…」
「真里は?」
「俺買ってきますよ?」
「いいよ、たまには」
「…じゃぁ紅茶」
そう言うと柏原さんは立ち去った。
「リンゴとわさびどうしたよ?」
「うん…おんなじこと考えてた。実はまだあるんだよ」
「そんな長持ちしたんだ」
「うん。ちょっと壊れたら治してってやってたんだ。マリちゃん、」
私がマリちゃんの方を向くと、ふとマリちゃんは鞄からウェットティッシュを取り出して、私の頬から首筋辺りを拭いてくれた。忘れてたけどそう言えば血がべったりついてるんだった。
「小夜はさ、どうやってここまで生きてきた?」
「え?」
「俺は答えを知るためだった。あの人の側にいて、あの人が言ってることがどこまで嘘でどこまで本当か」
「…わかったの?」
「わかんない。けど、あの人必ずさ、嘘吐くときって、なんか優しいんだよ。それが時にすっごく残酷だってわかってないんだよね。
いや、もしかしたらわかってんのかな。わかってるけど敢えてやってるんだとしたら…」
「うん」
「それってどれだけ神経使うのかな」
遠い目をするマリちゃんがすごく切なく見えた。どうしてもわかり合えない。それはもう、仕方のないことかもしれないけど、私が見ているには辛かった。どうしてそれにマリちゃんもみっちゃんも堪えられるのかがわからない。
「私が生きてこれたのは…どうしてだろう。
日常はずっとつまらなかった。いつもいつも同じことばかりだった。皆なにも変わらないし皆なにもわかってくれないけど、そんな普遍も幸せなのかもしれないって思った。
けどなんだかさ、そう思うとすぐ二人のこと思い出しちゃうんだよね。8年も前だから薄らとしちゃってる記憶だってあるのに」
みっちゃんは8年前に言っていた。たった三ヶ月が、とっても色濃くて。そして…。
「みっちゃんあの時、また会えるよ、神様が会わせてくれるよって言ってた。そしてその後、“次に会う頃にはもう少し大人になってるね。そしたらまた、本当のこと教えてあげる”って言われた。それってなんだろうってずっと思ってた。会ったら聞こうってそう言えば思ってたんだ」
柏原さんが戻ってきて、私に暖かいココアとマリちゃんに紅茶をくれた。会釈して受け取った手が震えていることに今さら気づいた。
「でもさっきね、覚えてる?って。神様なんていないよって言われた。私がずっと8年聞きたかったこと、まさか…まさかこれじゃないよね?こんなかたちで終わっちゃったりしないよね?」
マリちゃんは、みっちゃんは残酷だって言った。もしそれが事実なら、私はもう、みっちゃんに会うことは叶わないんだろう。
「…小夜…」
声が震えているマリちゃんを見ると、泣きそうになっていた。
「あの人ね…でもね…、ものすごく嘘吐きだから。だから…」
「まったく…二人みてると光也ムカつくな」
とか言いながら優しく微笑む柏原さんからも愛情を感じた。
いつでもこうやってただ待つことしか出来ない。少し大人になってもそれは変わらないんだ。
それから2時間ほど経って手術中の赤いランプが消えた。
手術台に乗ったみっちゃんとそれを運ぶ医師達。追いかけようとするがそれを一人の医師に制された。
その女の医師はマスクを外し、会釈した。
「志摩光也さんのご親戚の方々でしょうか?」
「いえ…でもまぁ代理です。雇い主の柏原と申します」
「…ご親戚の方はいつ頃…?」
「多分いま京都で葬式の真っ最中のようでして…三日ほどは帰れないかと。いま事務手続きをお願いしていますが、ICUに入る場合も親戚の者は許可をしてるんで…」
「そうですか…」
「どうなんですか?」
「傷は塞いだんですけど…幸いにも腎臓は避けていたみたいで。あと数ミリずれていたら多分…。
ただ現在も意識不明の重体と言ったところで。大変危険な状態ではあります。ここ2、3日は安心できない状態ですかね…」
「そうですか…」
その医師の人は頭を下げるとすぐに後を追いかけた。それを見て柏原さんは肩をがくっと落とした。
しばらく待っていると、ようやく入室許可が降り、病室に入った。消毒やらマスクやら何やら、いろいろと厳重にして自動扉が開いた。
看護士に案内されたのは6人部屋の一番端、出入り口付近だった。カーテンを開けるとみっちゃんは血の気のない顔で寝ていて。まるでもう、死んじゃったみたいに見えた。唯一生きて感じるのは点滴がゆっくり落ちていっているのだけだ。
心電図モニターの68とか97とか、そんなのわかんないし、全然実感なんてなかった。
ふと首筋を触って確認して見ると、私より体温が低くて。だけととくとくと小さく脈だけは確認出来た。ようやく、堪えていた涙が溢れてきた。
「…よかったぁ…!」
肩に置かれた手が震えていて、見あげるとそれは柏原さんだった。目頭を押さえて、だけど顔をあげたときには涙は溢れていなくて。
「もう少しだな」
「なぁんかさ、光也さん…すっごい気持ち良さそうに寝てんなー」
「やめろよ!なんかそれ、起きなそうじゃん!」
「…そうか…」
案外俯いて言うマリちゃんはいま、何を考えてるんだろう。
「ここで言うと不謹慎かな…でもなんかさ…。
この人なんでいま…幸せそうに見えちまうんだろうな。やっと寝れたね、とかさ、もしかしてあんた…とか、ね」
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