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道行Music Beat
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新大阪駅のホーム。
まず改札目の前に、似合わないのか見慣れないのかはわからないけど、灰色スーツに青いネクタイ姿の胡散臭い勇咲くんが、凄く不服そうな顔で腕組仁王立ちで出迎えてくれた。
勇咲くんがゴッド師匠には軽く頭を下げたのは見えたが、「勇咲くーん!」と、若干アルコールで紅い顔をした依田が手を振れば、
「あけまして。なんでなん?」
と言った。依田は構わずシュウマイが入った袋を、一度勇咲くんに見えるように掲げ、小走り。
近いけど、遠目から眺めていれば勇咲くん、依田が近付いた瞬間、依田の首にがしっと片腕を回し、明らかに恐喝に見えるようにじゃれていた。多分本当に不満を口にしているのだろう。
「痛い!痛い!」
「どーゆーことなんですぅ、雀次兄さんん…」
「まっ、その件、東京でやった!堪忍、堪忍してっ!痛い!」
やはり。
「あけおめ~ことよろ~」
「SMツキコちゃんまでお出ましなの?あけおめことよろ」
「勇咲、何故儂の家に?あけまして」
「うぃーっすあけましてっす~。
いや、え?雀三に「ヤバい来て」って言われたんですがまさかシュウマイ運びだけじゃないっすよね。
依田ちゃんどーなん?俺なんで呼ばれたん?」
首を離さず勇咲くんが依田を引っ張り出口へ歩いていくのに着いていくあたしと師匠。なんだ、どうしたの?
「え、えぇっ、雀三が呼んだの!?はいシュウマイ」
「は?
なんかあんたん家で悶着するから一緒に行けって」
勇咲くん、シュウマイを受け取りながら依田を離す。
「待ち勇咲、お前も依田家に直行すんのか」
「え?しないんですか」
「んー?」
一息吐いて勇咲くん、一度見回してから「てか」と言う。
「なに?結婚会見的メンツじゃね?なんで?」
ズバリやん。
ホントはなんか知ってんじゃないの的な目でみんな見つめ合う。
しかしあたくし卯月の予想。
みんななんも知らねぇんじゃね?
これはあたくしが先頭を切りましょう。
「あたくし依田の婚約者、(フリ)をしに大阪まで出向きそうろー」
「へぃ?」
「おっ、」
疑問深まる勇咲くんに、焦る依田。
なにこれ楽しい。
「なにそれ」
「んーわかんない。依田マザーがうるさいって聞いたよ?変態要因で来たの?勇咲くん」
「変態要因ってどーゆーこと!?」
「え、いや、依田家にSM出張かなと」
「いやだから亀ちゃん、」
「ははーん、なるほどだね依田ちゃん」
「え、違うっ、何っ!?」
「あれかー。
清姫撃退に暴れちゃえ的なやつか」
「ちゃうわ勇咲、」
あー確かにね。
状況的にそれ凄い察しだね勇咲くん。だから依田も「カミングアウトしちゃえ」って言ってたわけか。じゃ、何故ジャクソンくんの差し金なんだ?
「え違うんですか雀生師匠」
「うん…せやからそのな、亀田さんをそいつの嫁として紹介して」
「え、嫁なん?」
皮肉にも依田とハモって「ちゃう、」と言ってしまった。
「俺今日は普通に、『今年も新たなる夫婦として』的な挨拶をしに来たんですが雀生師匠。花師匠にもそー言われたしぃ。俺的に嫁に貰うようなもんだから父、師匠のとこにまぁ仕来たりとして出向いたらえ?何?依田母に会うの?みたいな」
へぇ。
大変古典芸能。
「いや、お前は来なくてもよかったんだが我々が依田家にな、行くからな、雀三にシュウマイを頼もうかと思ったらお前が家に来る言うからシュウマイを家まで頼もうと」
「え?なに?」
若干勇咲くん。
怖い。ヤンキーチック。ゴッド師匠思わず「うぐっ、」と怯む。
「いや、あの勇咲くん、」
「んー、だったら流石にあのめんどくさがり雀三でも、あんな感じで言ってこないと思うんすけど」
「そんな重要そうだったの?」
「うん。もう依田家ヤバいって。なんか弟くんまで出て来て師匠が呪い殺される~言うて」
「お、弟!?」
「鵜助がどうした?」
おっとぅ。
古典芸能大混乱。待て、あたしが一番まず、人物自体わかってねぇぞー。
「だからなんですかって聞いたんすけど。だって俺関係なくね?」
「んー、確かに」
「けど雀三が俺に言うのにはなんか、関係あんのかなって。何?俺変態要因?」
「いや変態はやらんから、やらんからぁ!」
これはつまり。
「…行ってみなくちゃマジでわかんないやつ?」
みんなあたしの一言に黙った。
なんせ、まず当人たちがわかってないじゃん。
「…古典芸能よくわかんないけど、つまり仕来たり関係ありな感じ?」
「んー」
「世継ぎの話なら正直亀ちゃんと俺とまぁ、師匠でいいもんな…」
「世継ぎ?」
「あーうん。父が死んだからね」
「あー、なるほどね。え、鵜助じゃねぇの?」
依田は溜め息を吐き、まずは勇咲くんに先日の話をし始めた。
聞いてあたしもまとめた。
要するに、世継ぎ問題の話し合いをしに、親代わり師匠と共にあたしと依田が女狐母親のところに行くはずが、何故か本来女狐実子の依田弟がしゃしゃり出、勇咲くんはジャクソンくんからピンチヒッターを任された。
しかし何故勇咲くんなのか、相方だからなのか…。ということらしい。
まず改札目の前に、似合わないのか見慣れないのかはわからないけど、灰色スーツに青いネクタイ姿の胡散臭い勇咲くんが、凄く不服そうな顔で腕組仁王立ちで出迎えてくれた。
勇咲くんがゴッド師匠には軽く頭を下げたのは見えたが、「勇咲くーん!」と、若干アルコールで紅い顔をした依田が手を振れば、
「あけまして。なんでなん?」
と言った。依田は構わずシュウマイが入った袋を、一度勇咲くんに見えるように掲げ、小走り。
近いけど、遠目から眺めていれば勇咲くん、依田が近付いた瞬間、依田の首にがしっと片腕を回し、明らかに恐喝に見えるようにじゃれていた。多分本当に不満を口にしているのだろう。
「痛い!痛い!」
「どーゆーことなんですぅ、雀次兄さんん…」
「まっ、その件、東京でやった!堪忍、堪忍してっ!痛い!」
やはり。
「あけおめ~ことよろ~」
「SMツキコちゃんまでお出ましなの?あけおめことよろ」
「勇咲、何故儂の家に?あけまして」
「うぃーっすあけましてっす~。
いや、え?雀三に「ヤバい来て」って言われたんですがまさかシュウマイ運びだけじゃないっすよね。
依田ちゃんどーなん?俺なんで呼ばれたん?」
首を離さず勇咲くんが依田を引っ張り出口へ歩いていくのに着いていくあたしと師匠。なんだ、どうしたの?
「え、えぇっ、雀三が呼んだの!?はいシュウマイ」
「は?
なんかあんたん家で悶着するから一緒に行けって」
勇咲くん、シュウマイを受け取りながら依田を離す。
「待ち勇咲、お前も依田家に直行すんのか」
「え?しないんですか」
「んー?」
一息吐いて勇咲くん、一度見回してから「てか」と言う。
「なに?結婚会見的メンツじゃね?なんで?」
ズバリやん。
ホントはなんか知ってんじゃないの的な目でみんな見つめ合う。
しかしあたくし卯月の予想。
みんななんも知らねぇんじゃね?
これはあたくしが先頭を切りましょう。
「あたくし依田の婚約者、(フリ)をしに大阪まで出向きそうろー」
「へぃ?」
「おっ、」
疑問深まる勇咲くんに、焦る依田。
なにこれ楽しい。
「なにそれ」
「んーわかんない。依田マザーがうるさいって聞いたよ?変態要因で来たの?勇咲くん」
「変態要因ってどーゆーこと!?」
「え、いや、依田家にSM出張かなと」
「いやだから亀ちゃん、」
「ははーん、なるほどだね依田ちゃん」
「え、違うっ、何っ!?」
「あれかー。
清姫撃退に暴れちゃえ的なやつか」
「ちゃうわ勇咲、」
あー確かにね。
状況的にそれ凄い察しだね勇咲くん。だから依田も「カミングアウトしちゃえ」って言ってたわけか。じゃ、何故ジャクソンくんの差し金なんだ?
「え違うんですか雀生師匠」
「うん…せやからそのな、亀田さんをそいつの嫁として紹介して」
「え、嫁なん?」
皮肉にも依田とハモって「ちゃう、」と言ってしまった。
「俺今日は普通に、『今年も新たなる夫婦として』的な挨拶をしに来たんですが雀生師匠。花師匠にもそー言われたしぃ。俺的に嫁に貰うようなもんだから父、師匠のとこにまぁ仕来たりとして出向いたらえ?何?依田母に会うの?みたいな」
へぇ。
大変古典芸能。
「いや、お前は来なくてもよかったんだが我々が依田家にな、行くからな、雀三にシュウマイを頼もうかと思ったらお前が家に来る言うからシュウマイを家まで頼もうと」
「え?なに?」
若干勇咲くん。
怖い。ヤンキーチック。ゴッド師匠思わず「うぐっ、」と怯む。
「いや、あの勇咲くん、」
「んー、だったら流石にあのめんどくさがり雀三でも、あんな感じで言ってこないと思うんすけど」
「そんな重要そうだったの?」
「うん。もう依田家ヤバいって。なんか弟くんまで出て来て師匠が呪い殺される~言うて」
「お、弟!?」
「鵜助がどうした?」
おっとぅ。
古典芸能大混乱。待て、あたしが一番まず、人物自体わかってねぇぞー。
「だからなんですかって聞いたんすけど。だって俺関係なくね?」
「んー、確かに」
「けど雀三が俺に言うのにはなんか、関係あんのかなって。何?俺変態要因?」
「いや変態はやらんから、やらんからぁ!」
これはつまり。
「…行ってみなくちゃマジでわかんないやつ?」
みんなあたしの一言に黙った。
なんせ、まず当人たちがわかってないじゃん。
「…古典芸能よくわかんないけど、つまり仕来たり関係ありな感じ?」
「んー」
「世継ぎの話なら正直亀ちゃんと俺とまぁ、師匠でいいもんな…」
「世継ぎ?」
「あーうん。父が死んだからね」
「あー、なるほどね。え、鵜助じゃねぇの?」
依田は溜め息を吐き、まずは勇咲くんに先日の話をし始めた。
聞いてあたしもまとめた。
要するに、世継ぎ問題の話し合いをしに、親代わり師匠と共にあたしと依田が女狐母親のところに行くはずが、何故か本来女狐実子の依田弟がしゃしゃり出、勇咲くんはジャクソンくんからピンチヒッターを任された。
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