朝に愁いじ夢見るを

二色燕𠀋

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 なんだ、疲れるほどあの子を弄り倒したのか。それとも寝たふりか。

 どちらでも良いけれどあてはまず奈木にのし掛かり、髪を垂らして頬に触れた。

 奈木は目を瞑ったまま「んー…冷た…くもないな」と、寝惚けているのかいないのか、ただ手をすりすりして薄目を開け「ほれ」と布団を捲る動作。

 いりませんよそんなもの。

 奈木はそんなあてに構わず布団を被せ「ひやっこいわぁ」と言った。

 寝惚け眼のままあての尻に触れ「あん子はどやった?」と聞いてくる。

「せやけど返してやらんよ、慣れるまで。まぁだ、指の、」

 奈木は行灯の油を指に塗り、菊座をすりすりした後すぐ、人差し指の先を入れ「ここまでや」と楽しそうに言う。

「辛そうやったで。どや?あれから」

 うるさい喋るなと口付けをし、舌を入れてきたのを噛めば引っ込んでいった。

「そん調子なら、抜いてでもやったか?可哀想に」

 あてが一睨みすれば「おぉ怖、」と言いながら奈木は行灯の火を付け…まるで慈しむように頬を撫でてくる。

「綺麗な面しとるなぁ、怒っとると、より」

 ぐっと一気に二本目の指が入ってきて、口から声が出そうになるけれども、それをわかっていて奈木はずりずりずりずりと中を擦ってくる。
 一気に熱くなってきた。

 彼ははっとあての頭を抱え髪を撫で、菊座を弄りながら「そうまでせんでよかよ、このアホが」と…流れるような動作で濡れた髪を解かし、そして首筋から唇を這わせていった。

「なんの犠牲もいらんねんよ、み空」

 …やめてよ、
 あんたは本当に酷い人。だから今抱かれに来たというのに。

 声もなく息遣いで彼はあての首から、肩から、鎖骨から、乳首から、肋骨からと…するすると丁寧にあてを脱がせ、触れ、食み、これは子供に接するそれなのだろうか、自然と力が抜けていくけれど。

 ぐっと熱く彼が入り込んできたのはいきなりで、眉が寄った。
 今までの優しさが嘘のように、がつがつと下から突かれる。

 一気に喉が苦しくなると、「なぁ、お前はさ、」と、奈木はとても楽しそうに笑った。

「同情されたいわけでも勿論なく、同情されたくないわけでもない。
 同情したくないのは「自分よりお前のがましや」と思うのが嫌だからだろ?なぁ?」

 片手で喉仏をコリコリし力を入れ、それがまるで…乳首を擦るような手付き。

 まるで知った口を利く。

 腹が立って一度殴ってやろうと手を翳せば、腰を支えていた手をぱっと離し動き止め、制された。
 何故か、彼は一度悲しそうな顔をしたのでふっと、自分でも力が抜けて行くのがわかった。

「…なんで殴るんだよ、そうじゃないだろ、お前は、」

 ……全く、どうしてそうやって、あんたって人はあてを傷付けていくの。

 それから徐々に徐々にまたゆっくりと動きながら「み空」と呼び、手を取り頬をすりすりとする。まるで、口付けでもするように。

「優しすぎても残酷だし、冷たすぎても…酷いもんだよ。人は皆自分しか愛さない。自分を許せよ、たまには」

 …上方訛りでない語り。
 これは心地良いのに、まるで刺されて行く、心が。

 切なそうに笑った彼に聞きたかった、貴方には一体何があったのと。野暮なことを知りたくなる、いつも。

 こんなことで知れることなんて全くない。

 ただ、彼がさっと体位を変え天井に顔が浮かんだとき、やっぱりしにくい。少し余裕もない表情になるくせに、あてはどうしても手を伸ばしてしまうのだ。

 彼は側に来て「うん、」と言いながら動き、あての中に熱を残す。
 顔を見合わせいつも、髪はぐちゃぐちゃに混ぜられ口もぐちゃぐちゃにしてくる乱暴さがある人なのに。

 一度たりとも語ってくれたことはないのだ。こんな間ですら。自分の話など、まるで。

 一通りぐちゃぐちゃと終わった頃、「今度買い出し…いや、そこの桜まで付き合えよ」と、奈木はよくわからないことをほざいた。

「見慣れてるかも知れねぇけどな、あの端の見世じゃ」

 そう言ってふっと目を閉じた奈木に、もうあんたも歳やねんな、と、歳も知らないが、そう思ったりした。
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