UlysseS ButTerflY NigHt

二色燕𠀋

文字の大きさ
45 / 57
S

4

しおりを挟む
「現場検証が終わったら連絡致します。
 齋藤の件ですが、こちらは本星と繋がるか…情報が来ていません。
 所長、よろしいでしょうか」
「……武装許可はデスクに置いといた。
 人員は…そちらはつまり404の齋藤家へ、ウチは同時で202へ、ということですよね?
 一課さんには青木透花の見張りもいるようですし…組対さんにも応援要請を願いたい。海江田はまだ外せませんね。
 海江田、これでいいか?」
「はい。…まぁ、行けばわかりますよ。現場捜査員と一緒なら共有に齟齬がな…」

 誰かのケータイが振動した。

 一課の長谷川が「…失礼します」と立ち、「はい」と話し始める。
 それからすぐに「すみません!」と青ざめた。

「…青木透花ですが……母親と名乗る女が引き取りに来たそうで、」
「…は?」

 場が、一瞬で凍りついた。

「…病院側もウチも、母親と言われて…唯三郎さんの痣を主張はしたようなんですが…」

 だから手始めに警視庁の捜一を回してきたのか。結果、下調べの段階でこうなるとは…。
 やられた。いや、やりやがった…。

 わかっていたが公安、これではただの足止めになったじゃないか。

 だが……。
 皮肉なことに転がりはしたな、麻薬に関しては。やはり規模がデカすぎたか。

「…確かに現状証拠としては確証、立証は案件を流されただけのあんたらじゃ、主張が難しかったでしょうね。親族が申し出れば…仕方な」
「…なんだとっ、若造が!
 あんたらキャリアにはわから」
「ないですね。紀子という確証があったから、病院側も渋々…でしょうね。
 まず…そのまま事情を最後まで、男は一緒か、養祖父はどうかと、」

 指示を出しながら安慈は迷わず平良に電話を掛ける。
 恐らく平良は今、江崎新と共にいて…。

 「父親と共に来院し二人とも」と聞けたところで『はい』と平良が出た。

「もしもし平良さん。今…どちらに?」
『私用で花村病院ってところに』

 やはりか。

「そちらにもしかすると柏村が、人質を連れカチコミするかもしれません。
 …あの人一緒なんでしょ、」
『へーい。続けろ』

 低い声がする。スピーカーだろう。

「青木紀子が父親と名乗る男を連れ、透花と唯三郎両名を退院させたと、警視庁刑事部から今、連絡が来ました」
「……その電話は誰と」

 起点をきかせた坂下がしっ、と合図し「こちらの情報屋です」と説明した。

『…それは確かなのか?』

 長谷川を見、「男は40代程のガタイが良い、見慣れない男だったそうです。女は確かに免許証の写真等から、青木紀子本人だったそ」『わかった』と情報共有。

『組対と一課と合同会議中だよな?』
「はい」
『はーい挙手。
 ちょっと組対…誰かわかんねぇけど変われる?江崎でわかるだろうよ』
「…いいんすか、それ」
『何が?お前らはそれぞれ現場に行けよ』

 …まるで、この状況を読めていたような口調だ。

 渋々「馬込さん、」と渡そうとした瞬間『パチモンロレックス渡してやれよ』と聞こえてきた。

 聞こえた瞬間わかったらしい。
 さっと電話を奪い取った馬込が「江崎かおい、」と話し始める。

「お前だったのか!
 つまりあれか!?ルート知ってんのか!?
 ……は!?こっちは任意なんだよ、それ以上は言わん!
 ……………そっちにある可能性はあんのか?
 ……誰が無能だっ、他にも同時進行してたんだよ、知ってる事言わねぇとお前をしょっぴくしかねぇけどっ!?
 ……なんでそんな詳しいんだよクソ野郎……。サイバーは別件でも使ってんだよ!仕事しとるわ!その平良……さん、ってマトリから聞いたのか?
 ………なんだとこのヤロ、お前のガセだったらマジでブタ箱ぶち込むかんな!
 ……所長さん、組対は今から別件…という事で一課さんとこ…団地に力を入れます」
「え、何?」

 一課がポカンとしている…急に「ヤクザを取り扱ってきた人」感が出たからだろうか…。

「海江田さん坂下さん、お仲間も向かってるそうですし花村病院に向かった方が良さそうです」
「……ちょ、待った、ウチは聞いてませんが!?馬込さん」
「……行けばわかるって、そーゆー事ですね?海江田さん」
「え、いや今急にわからなくなりました、共有して欲しそうな内容もちらほら聞こえましたよ?」
「……こいつとどーゆう繋がりかわかりませんが…山ノ井でわかりますよね?柏村が地主の」
「あ、はい。サイトダウン要請したのはウチですし…」
「…数日前、差出人不明で3箱分のロレックスが送られてきたんですよ。
 中身開けりゃ、全ての電池箇所にシャブの反応が…。付着していた指紋は山ノ井と一致しました」
「あー、それじゃ拘留中ですかね?」

 だからこんなタイミングで礼状が取れたのか。

「そうです。家宅捜索してパケを押収しその足で来たところですよ。
 あと、箱に…少しですが花咲組の分派の柏村隆太郎と…女かな、前科前歴がない小さめの指紋も出てきました」
「…ちょっと遡りますかねぇ…」

 少しスマホを弄った坂下は「あ、ホントだ、紀子の案件が引っ掛かりました」と言った。

「あー、これパチモンなら詐欺でも引っ張れそうですね、一課さん?組対が先にヤクを掴んでいるなら、確かに俺らは病院に向かった方が効率的だけど……」

 坂下が所長を見ると「…わかった、そっちも申請急かしとく」と苦い顔。

「ただ…外れた場合察して逃げられるのも面倒ですね所長」
「……あーわかったよ!
 団地ですが、二人ほど諜報から派遣します」
「…了解しました。
 多分すぐ終わるのでちゃちゃっと漁って花村で合流、で如何でしょうか、」
「…わかりました。というかなんだかありがとうございます…なんですよね?
 一刻を争うのでこちらはそれぞれの部署に電話入れときます。
 海江田、坂下。終わったらすぐ向かう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

睿国怪奇伝〜オカルトマニアの皇妃様は怪異がお好き〜

猫とろ
キャラ文芸
大国。睿(えい)国。 先帝が急逝したため、二十五歳の若さで皇帝の玉座に座ることになった俊朗(ジュンラン)。 その妻も政略結婚で選ばれた幽麗(ユウリー)十八歳。 そんな二人は皇帝はリアリスト。皇妃はオカルトマニアだった。 まるで正反対の二人だが、お互いに政略結婚と割り切っている。 そんなとき、街にキョンシーが出たと言う噂が広がる。 「陛下キョンシーを捕まえたいです」 「幽麗。キョンシーの存在は俺は認めはしない」 幽麗の言葉を真っ向否定する俊朗帝。 だが、キョンシーだけではなく、街全体に何か怪しい怪異の噂が──。 俊朗帝と幽麗妃。二人は怪異を払う為に協力するが果たして……。 皇帝夫婦×中華ミステリーです!

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...