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「現場検証が終わったら連絡致します。
齋藤の件ですが、こちらは本星と繋がるか…情報が来ていません。
所長、よろしいでしょうか」
「……武装許可はデスクに置いといた。
人員は…そちらはつまり404の齋藤家へ、ウチは同時で202へ、ということですよね?
一課さんには青木透花の見張りもいるようですし…組対さんにも応援要請を願いたい。海江田はまだ外せませんね。
海江田、これでいいか?」
「はい。…まぁ、行けばわかりますよ。現場捜査員と一緒なら共有に齟齬がな…」
誰かのケータイが振動した。
一課の長谷川が「…失礼します」と立ち、「はい」と話し始める。
それからすぐに「すみません!」と青ざめた。
「…青木透花ですが……母親と名乗る女が引き取りに来たそうで、」
「…は?」
場が、一瞬で凍りついた。
「…病院側もウチも、母親と言われて…唯三郎さんの痣を主張はしたようなんですが…」
だから手始めに警視庁の捜一を回してきたのか。結果、下調べの段階でこうなるとは…。
やられた。いや、やりやがった…。
わかっていたが公安、これではただの足止めになったじゃないか。
だが……。
皮肉なことに転がりはしたな、麻薬に関しては。やはり規模がデカすぎたか。
「…確かに現状証拠としては確証、立証は案件を流されただけのあんたらじゃ、主張が難しかったでしょうね。親族が申し出れば…仕方な」
「…なんだとっ、若造が!
あんたらキャリアにはわから」
「ないですね。紀子という確証があったから、病院側も渋々…でしょうね。
まず…そのまま事情を最後まで、男は一緒か、養祖父はどうかと、」
指示を出しながら安慈は迷わず平良に電話を掛ける。
恐らく平良は今、江崎新と共にいて…。
「父親と共に来院し二人とも」と聞けたところで『はい』と平良が出た。
「もしもし平良さん。今…どちらに?」
『私用で花村病院ってところに』
やはりか。
「そちらにもしかすると柏村が、人質を連れカチコミするかもしれません。
…あの人一緒なんでしょ、」
『へーい。続けろ』
低い声がする。スピーカーだろう。
「青木紀子が父親と名乗る男を連れ、透花と唯三郎両名を退院させたと、警視庁刑事部から今、連絡が来ました」
「……その電話は誰と」
起点をきかせた坂下がしっ、と合図し「こちらの情報屋です」と説明した。
『…それは確かなのか?』
長谷川を見、「男は40代程のガタイが良い、見慣れない男だったそうです。女は確かに免許証の写真等から、青木紀子本人だったそ」『わかった』と情報共有。
『組対と一課と合同会議中だよな?』
「はい」
『はーい挙手。
ちょっと組対…誰かわかんねぇけど変われる?江崎でわかるだろうよ』
「…いいんすか、それ」
『何が?お前らはそれぞれ現場に行けよ』
…まるで、この状況を読めていたような口調だ。
渋々「馬込さん、」と渡そうとした瞬間『パチモンロレックス渡してやれよ』と聞こえてきた。
聞こえた瞬間わかったらしい。
さっと電話を奪い取った馬込が「江崎かおい、」と話し始める。
「お前だったのか!
つまりあれか!?ルート知ってんのか!?
……は!?こっちは任意なんだよ、それ以上は言わん!
……………そっちにある可能性はあんのか?
……誰が無能だっ、他にも同時進行してたんだよ、知ってる事言わねぇとお前をしょっぴくしかねぇけどっ!?
……なんでそんな詳しいんだよクソ野郎……。サイバーは別件でも使ってんだよ!仕事しとるわ!その平良……さん、ってマトリから聞いたのか?
………なんだとこのヤロ、お前のガセだったらマジでブタ箱ぶち込むかんな!
……所長さん、組対は今から別件…という事で一課さんとこ…団地に力を入れます」
「え、何?」
一課がポカンとしている…急に「ヤクザを取り扱ってきた人」感が出たからだろうか…。
「海江田さん坂下さん、お仲間も向かってるそうですし花村病院に向かった方が良さそうです」
「……ちょ、待った、ウチは聞いてませんが!?馬込さん」
「……行けばわかるって、そーゆー事ですね?海江田さん」
「え、いや今急にわからなくなりました、共有して欲しそうな内容もちらほら聞こえましたよ?」
「……こいつとどーゆう繋がりかわかりませんが…山ノ井でわかりますよね?柏村が地主の」
「あ、はい。サイトダウン要請したのはウチですし…」
「…数日前、差出人不明で3箱分のロレックスが送られてきたんですよ。
中身開けりゃ、全ての電池箇所にシャブの反応が…。付着していた指紋は山ノ井と一致しました」
「あー、それじゃ拘留中ですかね?」
だからこんなタイミングで礼状が取れたのか。
「そうです。家宅捜索してパケを押収しその足で来たところですよ。
あと、箱に…少しですが花咲組の分派の柏村隆太郎と…女かな、前科前歴がない小さめの指紋も出てきました」
「…ちょっと遡りますかねぇ…」
少しスマホを弄った坂下は「あ、ホントだ、紀子の案件が引っ掛かりました」と言った。
「あー、これパチモンなら詐欺でも引っ張れそうですね、一課さん?組対が先にヤクを掴んでいるなら、確かに俺らは病院に向かった方が効率的だけど……」
坂下が所長を見ると「…わかった、そっちも申請急かしとく」と苦い顔。
「ただ…外れた場合察して逃げられるのも面倒ですね所長」
「……あーわかったよ!
団地ですが、二人ほど諜報から派遣します」
「…了解しました。
多分すぐ終わるのでちゃちゃっと漁って花村で合流、で如何でしょうか、」
「…わかりました。というかなんだかありがとうございます…なんですよね?
一刻を争うのでこちらはそれぞれの部署に電話入れときます。
海江田、坂下。終わったらすぐ向かう」
齋藤の件ですが、こちらは本星と繋がるか…情報が来ていません。
所長、よろしいでしょうか」
「……武装許可はデスクに置いといた。
人員は…そちらはつまり404の齋藤家へ、ウチは同時で202へ、ということですよね?
一課さんには青木透花の見張りもいるようですし…組対さんにも応援要請を願いたい。海江田はまだ外せませんね。
海江田、これでいいか?」
「はい。…まぁ、行けばわかりますよ。現場捜査員と一緒なら共有に齟齬がな…」
誰かのケータイが振動した。
一課の長谷川が「…失礼します」と立ち、「はい」と話し始める。
それからすぐに「すみません!」と青ざめた。
「…青木透花ですが……母親と名乗る女が引き取りに来たそうで、」
「…は?」
場が、一瞬で凍りついた。
「…病院側もウチも、母親と言われて…唯三郎さんの痣を主張はしたようなんですが…」
だから手始めに警視庁の捜一を回してきたのか。結果、下調べの段階でこうなるとは…。
やられた。いや、やりやがった…。
わかっていたが公安、これではただの足止めになったじゃないか。
だが……。
皮肉なことに転がりはしたな、麻薬に関しては。やはり規模がデカすぎたか。
「…確かに現状証拠としては確証、立証は案件を流されただけのあんたらじゃ、主張が難しかったでしょうね。親族が申し出れば…仕方な」
「…なんだとっ、若造が!
あんたらキャリアにはわから」
「ないですね。紀子という確証があったから、病院側も渋々…でしょうね。
まず…そのまま事情を最後まで、男は一緒か、養祖父はどうかと、」
指示を出しながら安慈は迷わず平良に電話を掛ける。
恐らく平良は今、江崎新と共にいて…。
「父親と共に来院し二人とも」と聞けたところで『はい』と平良が出た。
「もしもし平良さん。今…どちらに?」
『私用で花村病院ってところに』
やはりか。
「そちらにもしかすると柏村が、人質を連れカチコミするかもしれません。
…あの人一緒なんでしょ、」
『へーい。続けろ』
低い声がする。スピーカーだろう。
「青木紀子が父親と名乗る男を連れ、透花と唯三郎両名を退院させたと、警視庁刑事部から今、連絡が来ました」
「……その電話は誰と」
起点をきかせた坂下がしっ、と合図し「こちらの情報屋です」と説明した。
『…それは確かなのか?』
長谷川を見、「男は40代程のガタイが良い、見慣れない男だったそうです。女は確かに免許証の写真等から、青木紀子本人だったそ」『わかった』と情報共有。
『組対と一課と合同会議中だよな?』
「はい」
『はーい挙手。
ちょっと組対…誰かわかんねぇけど変われる?江崎でわかるだろうよ』
「…いいんすか、それ」
『何が?お前らはそれぞれ現場に行けよ』
…まるで、この状況を読めていたような口調だ。
渋々「馬込さん、」と渡そうとした瞬間『パチモンロレックス渡してやれよ』と聞こえてきた。
聞こえた瞬間わかったらしい。
さっと電話を奪い取った馬込が「江崎かおい、」と話し始める。
「お前だったのか!
つまりあれか!?ルート知ってんのか!?
……は!?こっちは任意なんだよ、それ以上は言わん!
……………そっちにある可能性はあんのか?
……誰が無能だっ、他にも同時進行してたんだよ、知ってる事言わねぇとお前をしょっぴくしかねぇけどっ!?
……なんでそんな詳しいんだよクソ野郎……。サイバーは別件でも使ってんだよ!仕事しとるわ!その平良……さん、ってマトリから聞いたのか?
………なんだとこのヤロ、お前のガセだったらマジでブタ箱ぶち込むかんな!
……所長さん、組対は今から別件…という事で一課さんとこ…団地に力を入れます」
「え、何?」
一課がポカンとしている…急に「ヤクザを取り扱ってきた人」感が出たからだろうか…。
「海江田さん坂下さん、お仲間も向かってるそうですし花村病院に向かった方が良さそうです」
「……ちょ、待った、ウチは聞いてませんが!?馬込さん」
「……行けばわかるって、そーゆー事ですね?海江田さん」
「え、いや今急にわからなくなりました、共有して欲しそうな内容もちらほら聞こえましたよ?」
「……こいつとどーゆう繋がりかわかりませんが…山ノ井でわかりますよね?柏村が地主の」
「あ、はい。サイトダウン要請したのはウチですし…」
「…数日前、差出人不明で3箱分のロレックスが送られてきたんですよ。
中身開けりゃ、全ての電池箇所にシャブの反応が…。付着していた指紋は山ノ井と一致しました」
「あー、それじゃ拘留中ですかね?」
だからこんなタイミングで礼状が取れたのか。
「そうです。家宅捜索してパケを押収しその足で来たところですよ。
あと、箱に…少しですが花咲組の分派の柏村隆太郎と…女かな、前科前歴がない小さめの指紋も出てきました」
「…ちょっと遡りますかねぇ…」
少しスマホを弄った坂下は「あ、ホントだ、紀子の案件が引っ掛かりました」と言った。
「あー、これパチモンなら詐欺でも引っ張れそうですね、一課さん?組対が先にヤクを掴んでいるなら、確かに俺らは病院に向かった方が効率的だけど……」
坂下が所長を見ると「…わかった、そっちも申請急かしとく」と苦い顔。
「ただ…外れた場合察して逃げられるのも面倒ですね所長」
「……あーわかったよ!
団地ですが、二人ほど諜報から派遣します」
「…了解しました。
多分すぐ終わるのでちゃちゃっと漁って花村で合流、で如何でしょうか、」
「…わかりました。というかなんだかありがとうございます…なんですよね?
一刻を争うのでこちらはそれぞれの部署に電話入れときます。
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