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Prologue
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青年が潤の横を横切った瞬間、潤は青年の腕を掴み、銃口を背中に押し当てる。
驚いた顔で青年は潤を見た。
潤は冷たい口調で「さっさと案内して頂戴」と言い捨てた。
助けを求めるように青年は一瞬俺を見たが諦めたのか、そのまま素直に歩き出した。
組織の人間にしては迂闊すぎるし、現場慣れしていない。それが俺の見解だった。
こいつ、実は本当にただの人質なんじゃないか?
ただ、そのわりには銃身がしっかりしていた。銃を構えるのは初めてではないのだろう。
なんだ?こいつはなんなんだ?
ある程度の可能性は予測していた。
多分、あっさり通過されてしまったのも、官房長一家が泊まっていて克つ、会合の3日前だなんて、こんな偶然はあり得ない。支配人が犯人側とグルの可能性があるなと。
一流ホテルだし、近辺施設のイベントを把握していて、しかも泊まっている政治家関係者を狙おうとするならそれが一番合理的だ。
だがこいつはどうも引っ掛かる。
エレボスが支配人や他のホテルマンを買収したとして。
そうだとしたら一般市民を買収したことになる。
それでは辻褄が合わない。
今回のやつらの目的はそもそもなんだ?やはり会合をぶち壊すためなのか?
そして局長が言った大きなヤマとはなんだ?
地下へ向かう階段に差し掛かると青年は、「ここからは無線が通じませんので」と、落ち着いた様子で言った。
「あなた方は迂闊ですね。ここで殺されては誰も助けに来ませんよ」
「あんたこそ、ここで殺されたらどうすんの?あんたなんて殺して置いといて地下に俺たち二人で行ったって別に困らないんだけど。あんたただの交渉人だろ?」
「そうでしょうね。それでも別に構いません」
「可愛くねぇガキ。昔のお前みたいだな流星」
「うるせぇ。ちょっとは静かに出来ねぇのか女顔」
「うるせぇのはてめぇだサイコパス」
「ふっ…」
ふと、青年が笑った。
「なに?」
「いや、仲良いですね」
「は?やめてよ気持ち悪い」
「そんなことで笑うのか…」
素直になんだか驚いたというか感心したというか。
「変ですか」
「まぁ…違和感」
もう少しなんと言うか、人形みたいだなと思ったから。
「…名前、なんてーの?」
「え?」
「まぁ、知ったところで」
「イオ…」
「ん?」
「…伊豆の伊に、糸編の緒で、伊緒。衛星の名前から取ったそうです」
「へぇ」
それから伊緒は喋らなくなった。
地下を降りて2つ目の部屋の前で伊緒は立ち止まる。
「…流星さん、でしたっけ」
「ん?なんだ?」
ふと、振り返る。少し見上げるその目には、なんとなく諦めが見える気がした。
ガキらしくない。
「…俺のこと、本当に救えますか」
小さな、消え入りそうな声だが、はっきりとその声は俺に届いた。
「…救って欲しいのか?」
伊緒はそれに答えなかった。
部屋をノックして、「連れてきました」と言ってドアを開ける。
「箕原くん…!」
部屋を開けると、30代くらいのホテルマンが歓声を上げた。
先程データで確認した、高塚明だった。
やはり、そうか。
奥には官房長の娘と奥さんが、手足を縛られた状態で疲れ果てた表情を浮かべていた。
「連邦捜査官のスミダだ。こっちが同じくホシカワ。犯人側からの要求で、我々と引き換えにお二人を返して頂きたい」
「あぁ…そうですか…!奥さん、よかったですね!」
高塚と奥さんたちが喜んでいる最中、俺は奥さんと娘さんを拘束している縄を解いた。
「大変お待たせいたしました。では…」
「待ってください」
高塚がしんとした声色で待ったを掛ける。
驚いた顔で青年は潤を見た。
潤は冷たい口調で「さっさと案内して頂戴」と言い捨てた。
助けを求めるように青年は一瞬俺を見たが諦めたのか、そのまま素直に歩き出した。
組織の人間にしては迂闊すぎるし、現場慣れしていない。それが俺の見解だった。
こいつ、実は本当にただの人質なんじゃないか?
ただ、そのわりには銃身がしっかりしていた。銃を構えるのは初めてではないのだろう。
なんだ?こいつはなんなんだ?
ある程度の可能性は予測していた。
多分、あっさり通過されてしまったのも、官房長一家が泊まっていて克つ、会合の3日前だなんて、こんな偶然はあり得ない。支配人が犯人側とグルの可能性があるなと。
一流ホテルだし、近辺施設のイベントを把握していて、しかも泊まっている政治家関係者を狙おうとするならそれが一番合理的だ。
だがこいつはどうも引っ掛かる。
エレボスが支配人や他のホテルマンを買収したとして。
そうだとしたら一般市民を買収したことになる。
それでは辻褄が合わない。
今回のやつらの目的はそもそもなんだ?やはり会合をぶち壊すためなのか?
そして局長が言った大きなヤマとはなんだ?
地下へ向かう階段に差し掛かると青年は、「ここからは無線が通じませんので」と、落ち着いた様子で言った。
「あなた方は迂闊ですね。ここで殺されては誰も助けに来ませんよ」
「あんたこそ、ここで殺されたらどうすんの?あんたなんて殺して置いといて地下に俺たち二人で行ったって別に困らないんだけど。あんたただの交渉人だろ?」
「そうでしょうね。それでも別に構いません」
「可愛くねぇガキ。昔のお前みたいだな流星」
「うるせぇ。ちょっとは静かに出来ねぇのか女顔」
「うるせぇのはてめぇだサイコパス」
「ふっ…」
ふと、青年が笑った。
「なに?」
「いや、仲良いですね」
「は?やめてよ気持ち悪い」
「そんなことで笑うのか…」
素直になんだか驚いたというか感心したというか。
「変ですか」
「まぁ…違和感」
もう少しなんと言うか、人形みたいだなと思ったから。
「…名前、なんてーの?」
「え?」
「まぁ、知ったところで」
「イオ…」
「ん?」
「…伊豆の伊に、糸編の緒で、伊緒。衛星の名前から取ったそうです」
「へぇ」
それから伊緒は喋らなくなった。
地下を降りて2つ目の部屋の前で伊緒は立ち止まる。
「…流星さん、でしたっけ」
「ん?なんだ?」
ふと、振り返る。少し見上げるその目には、なんとなく諦めが見える気がした。
ガキらしくない。
「…俺のこと、本当に救えますか」
小さな、消え入りそうな声だが、はっきりとその声は俺に届いた。
「…救って欲しいのか?」
伊緒はそれに答えなかった。
部屋をノックして、「連れてきました」と言ってドアを開ける。
「箕原くん…!」
部屋を開けると、30代くらいのホテルマンが歓声を上げた。
先程データで確認した、高塚明だった。
やはり、そうか。
奥には官房長の娘と奥さんが、手足を縛られた状態で疲れ果てた表情を浮かべていた。
「連邦捜査官のスミダだ。こっちが同じくホシカワ。犯人側からの要求で、我々と引き換えにお二人を返して頂きたい」
「あぁ…そうですか…!奥さん、よかったですね!」
高塚と奥さんたちが喜んでいる最中、俺は奥さんと娘さんを拘束している縄を解いた。
「大変お待たせいたしました。では…」
「待ってください」
高塚がしんとした声色で待ったを掛ける。
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