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Prologue
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「奥さんは、お返しろとの連絡が」
「へぇ…いつ?」
「あなた方がここに来る少し前です」
「奥さん、それは本当ですか?」
答えない。
「…我々としてはどちらかと言うと未来あるお子さんの方を先に解放したい。貴方、犯人と連絡取れますよね?俺が直接交渉してもいいですか?」
「出来ません」
「でしょうね。だって、あんたもエレボスの一員だもんな」
「…は?」
俺は目で奥さんに合図する。奥さんが娘の手を掴んだところで漸く、俺は懐に忍ばせていた銃を高塚に向けた。
「徳田を殺したのはお前だな、高塚明」
「はい…?」
「俺の読みはこうだ。
徳田に事件を起こさせる、これはダミーだ。最終的にはどんな形であれ始末するつもりだった。
ここの立て籠りの目的は官房長へのコンタクト。そして明日の会合の阻害。こうしてこっちに人権を割いている間、大使館爆破かなんかを目論んでいる。どうだろう?大雑把に言ってみたけど。
あんたはなんだ?買収された?それともムショに入ってる間に接点があったの?」
「…ふっ、ははは」
狂ったようにそれから高塚は笑い出した。
「大筋はその通りだな。だが、ツメが甘いよ坊っちゃん。俺たちを誰だと思ってんだよ」
次の瞬間、高塚は片手で拳銃を奥さんの方へ伸ばしたのが見えて。
瞬時にその手を撃ち抜いた。
空中に鮮血とピースメーカーが舞った。スローモーションのような景色。そして崩れ落ちる高塚。
奥さんの悲鳴が聞こえる。娘は声を殺して泣いている。
「逃げて!潤、二人を…」
潤は伊緒を離し、二人に駆け寄る。
俺の後ろでカシャッと音がする。多分俺は高塚に銃を向けられている。
すぐさま潤は奥さんを背にし、俺の後ろ側に銃口を向けた。
高塚はピースメーカーを拾おうと、腕を庇いながら撃ち抜かれていない左腕を伸ばしている。
「やってみろよ。俺を誰だと思ってんだ貴様ら」
高塚の左手がピースメーカーを探しあて、奥さんと娘の方に向けられようとしていて。
「伊緒、クーデターっつうのはこうやんだよ」
高塚の脳天に一発、パラベラム弾が貫通した。高塚が、前のめりに倒れる。
「逃げろ、潤」
潤は指示通り、伊緒に再び銃口を向けながら奥さんと娘を立たせ、速やかにドアから二人を逃がした。
伊緒の手は、先程と違って震えていた。
「そんなんで俺を殺せると思ってんじゃねーよクソガキ。
行くぞ潤。まだ仕事は残ってる」
去り際に伊緒の震える手を掴み、銃を取り上げとやる。
「ついてくるなら早く来い。自殺をするならそいつが握ってる拳銃を使え。じゃぁな」
その場で俺は弾を全て捨てて伊緒に銃を返し、先を行くことにする。
シグザウエルは俺には撃ち易すぎる。
これ以上、俺は銃を増やしたくない。
あとは、決めた生き方次第だ。
「お前にしちゃ、珍しく優しいね」
「別に」
しばらくすると、後ろから足音がした。仕方なく一度立ち止まり、振り向いてやる。
「遅い。早くしろ」
それだけ言い捨てたが、俺の前を歩く潤が吹き出すように笑った。
「へぇ…いつ?」
「あなた方がここに来る少し前です」
「奥さん、それは本当ですか?」
答えない。
「…我々としてはどちらかと言うと未来あるお子さんの方を先に解放したい。貴方、犯人と連絡取れますよね?俺が直接交渉してもいいですか?」
「出来ません」
「でしょうね。だって、あんたもエレボスの一員だもんな」
「…は?」
俺は目で奥さんに合図する。奥さんが娘の手を掴んだところで漸く、俺は懐に忍ばせていた銃を高塚に向けた。
「徳田を殺したのはお前だな、高塚明」
「はい…?」
「俺の読みはこうだ。
徳田に事件を起こさせる、これはダミーだ。最終的にはどんな形であれ始末するつもりだった。
ここの立て籠りの目的は官房長へのコンタクト。そして明日の会合の阻害。こうしてこっちに人権を割いている間、大使館爆破かなんかを目論んでいる。どうだろう?大雑把に言ってみたけど。
あんたはなんだ?買収された?それともムショに入ってる間に接点があったの?」
「…ふっ、ははは」
狂ったようにそれから高塚は笑い出した。
「大筋はその通りだな。だが、ツメが甘いよ坊っちゃん。俺たちを誰だと思ってんだよ」
次の瞬間、高塚は片手で拳銃を奥さんの方へ伸ばしたのが見えて。
瞬時にその手を撃ち抜いた。
空中に鮮血とピースメーカーが舞った。スローモーションのような景色。そして崩れ落ちる高塚。
奥さんの悲鳴が聞こえる。娘は声を殺して泣いている。
「逃げて!潤、二人を…」
潤は伊緒を離し、二人に駆け寄る。
俺の後ろでカシャッと音がする。多分俺は高塚に銃を向けられている。
すぐさま潤は奥さんを背にし、俺の後ろ側に銃口を向けた。
高塚はピースメーカーを拾おうと、腕を庇いながら撃ち抜かれていない左腕を伸ばしている。
「やってみろよ。俺を誰だと思ってんだ貴様ら」
高塚の左手がピースメーカーを探しあて、奥さんと娘の方に向けられようとしていて。
「伊緒、クーデターっつうのはこうやんだよ」
高塚の脳天に一発、パラベラム弾が貫通した。高塚が、前のめりに倒れる。
「逃げろ、潤」
潤は指示通り、伊緒に再び銃口を向けながら奥さんと娘を立たせ、速やかにドアから二人を逃がした。
伊緒の手は、先程と違って震えていた。
「そんなんで俺を殺せると思ってんじゃねーよクソガキ。
行くぞ潤。まだ仕事は残ってる」
去り際に伊緒の震える手を掴み、銃を取り上げとやる。
「ついてくるなら早く来い。自殺をするならそいつが握ってる拳銃を使え。じゃぁな」
その場で俺は弾を全て捨てて伊緒に銃を返し、先を行くことにする。
シグザウエルは俺には撃ち易すぎる。
これ以上、俺は銃を増やしたくない。
あとは、決めた生き方次第だ。
「お前にしちゃ、珍しく優しいね」
「別に」
しばらくすると、後ろから足音がした。仕方なく一度立ち止まり、振り向いてやる。
「遅い。早くしろ」
それだけ言い捨てたが、俺の前を歩く潤が吹き出すように笑った。
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