ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

文字の大きさ
24 / 376
The 1st episode

11

しおりを挟む
 半日、引っ越しで終わってしまった。意外にも引っ越しで一番時間を食ったのは俺だった。

 いつもその身一つで荷物がなかった分、一ヶ所に所属して身を置くことになってしまったせいだ。一から物を揃えなければならなかった。

「リュウはホントに銃しか持ってないんだね」

 と、ユミルすら呆れていた。

「ユミルはどうしてんのだってさ」
「僕はだってハンドガンとパソコンとその時のテレフォンだけあればいいんだもん」

 確かに。言われてみれば俺はパソコンすら持っていなかった。

「こーゆーのを単細胞バカっていうんだよ、ユミル」
「あぁ!?」
「ジュンちゃん、それは英語でなんていうの?」
「simple-minded」
「あー!そーゆー意味か!わかる!リュウはsimple-mindedだね!」
「うるさいなぁ!手伝えよ潤!」
「やだよ。射撃練習してくる」
「僕も行く!」

 クソ野郎…。
 あ、てゆーか。

「ユミルはダメ!」
「ナンで!」
「…ユミルが持ってるハンドガンは日本警察が許可してるやつじゃないから!それ狙撃場で撃ってたら捕まるよ!」
「はぁ!?
 日本ホントつまんない!じゃぁリュウの貸して!」
「俺のも大体ダメ!取り敢えずわかった、政宗の借りて!」
「えぇぇえ!やだよ!僕の握力じゃチーターなんてトリガーぶっ壊れてマシンガンになっちゃうよ!」
「大丈夫だ。なんせ俺で壊れないように改造してある」

 凄い爽やかスマイルで政宗がテキトーな嘘をユミルに吐いた。上手い。上手すぎる嘘だ。だが騙せる。なんせ政宗の握力はゴリラ並みだということをユミルも知っているからな。

「改造!?ナニソレ貸して!」

 ユミルの単純さをわかっているから吐ける嘘だ。

「おー、いいぞ。
 悪いな流星、テキトーに帰ってくるから」
「あぁ…取り敢えずその化け物をどうにかしてくれ」

 そう言って俺以外の幹部たちが早々に遊びに行ってしまっても黙々と仕事をこなしてくれる部下達に感謝せざるを得なかった。

「あーうるせぇのいなくなった…」

 漸く怪物、ユミルもいなくなり、捗るかと思いきや…。

 3人が出て行って僅か15分、どたばたとドアが開いた。やつらだ。

「だってつまんなかったんだもん!」
「仕方ないでしょ!あんたも大人なんだからさ!」
「あーいた…。流星、」

 ドアが開いた時点で無視を決め込んでいたが、政宗がやれやれと言わんばかりに俺を呼んだ。

「…なんですか」
「ちょっと…。ユミルが…」

 不機嫌を顔に張り付けて3人とももれなく睨み付けてやったら途端になんか静かになった。

 そそくさと3人が部署に入ると、いかにも“警察官”のヤツが、「あなたが責任者ですか?」と、不機嫌そうに腕組をして言ってきた。

 状況を把握した。仕方なくFBI手帳(いまはまったく有効じゃない)をちらつかせて、「はい。どうしました?」と不機嫌に返せば、

「あ、いや…」

とどもった。

「お前ら何をやったんですか。一般の警察官がご迷惑なようですが。順を追って話してくださいまずは荒川さん」
「…ユミルが自分の銃を乱発しました」
「はい次は星川さん」
「以下同文です」
「はい千種さん」
「だって…やっぱり面白くなかったんだもん」
「間違いありませんか?」

 警官に訪ねると、何故だか物凄く萎縮して「は、はい」と頷いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜

白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳 yayoi × 月城尊 29歳 takeru 母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司 彼は、母が持っていた指輪を探しているという。 指輪を巡る秘密を探し、 私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。

27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?

藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。 結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの? もう、みんな、うるさい! 私は私。好きに生きさせてよね。 この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。 彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。 私の人生に彩りをくれる、その人。 その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。 ⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。 ⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

黄金の魔族姫

風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」 「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」  とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!  ──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?  これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。  ──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!   ※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。 ※表紙は自作ではありません。

初恋

藍沢咲良
青春
高校3年生。 制服が着られる最後の年に、私達は出会った。 思った通りにはなかなかできない。 もどかしいことばかり。 それでも、愛おしい日々。 ※素敵な表紙をポリン先生に描いて頂きました。ポリン先生の作品↓ https://www.comico.jp/articleList.nhn?titleNo=31039&f=a ※この作品は「小説家になろう」「エブリスタ」でも連載しています。 8/28公開分で完結となります。 最後まで御愛読頂けると嬉しいです。 ※エブリスタにてスター特典「初恋〜それから〜」「同窓会」を公開しております。「初恋」の続編です。

処理中です...