ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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The 2nd episode

10

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 それから少しの間、俺は銃の撃ち方やら何やらを瀬川に教えた。

 しかしこいつも一応警察官だ。初心者ではない。それほど教えることもないが、なんだか凄く一生懸命に聞いている。

「てか、そんなに教えることもなくないか?」
「…僕、下手くそなんです。なんて言うか、的に当たらない」

 確かに瀬川にセンスはない。これでもかというくらいに的を外している。

「うーん。まず握ったときブレてるんだよ。しっかり持って構えて、標的を捉えればそんなに外さないよ。これは練習するしかないけど。
 あとは練習するコツとしては、距離を変えてみることかな」
「距離、ですか?」
「自分のコントロールしやすい射程距離っていうもんがあるはずだからね。それを掴まないと。あとは最初はやっぱり姿勢とか」
「…なるほど…」

 だがなんだか…。

「お前、こっち、こっち見ろって!」

 やけに人の顔ばかり見る。手元を見ないから構えがイマイチなんだよな。

「あ、はい…」

 手を取り、手の添え方とかを教えてやる。

「あとは撃ってみて」

 ちょっと疲れた。横でタバコを吸うことにした。

 案外良くなった。重心もブレずちゃんと的を射ている。どうやら飲み込みは早いらしい。

「あっ…」
「いいじゃん。あとは、打った後よろけるな。誤射して頭撃ち抜いたら死ぬからな」

 なんだか子供のように無邪気な笑顔でこっちを見てくる瀬川に、取り敢えず頭を撫でてやると、物凄く照れたように俯いた。

「…部長、」

 背後から、低めの女の声がした。

 あぁ、忘れてた。

「あ、そうだった」

 振り向けばやはり。山瀬愛蘭が呆れたような顔で瀬川を見ていた。

「…恭太に呼びにいかせたのが間違いでした」
「ごめん愛蘭」
「もういい。貴方は仕事に戻って。
 部長、頼まれていた件ですが」
「あぁ、うん。戻るよ」

 取り敢えず3人で部署に戻ることにした。

「あのさ、ひとつ聞いていい?」
「はい、なんでしょう」
「君ら、仲良いの?」

 甚だ疑問だ。
 なんとなく、瀬川は慕っていそうな気がするが、山瀬は少しクールな子だ。正直読めない。

 そしてなんとなく、この二人、ここに来る前から顔見知り、むしろ知り合いではあるのがさっき伺えた。

 しかし、元いた部署から察するに、接点はなさそうに思える。これは無駄な詮索だろうか。

「…愛蘭は、お姉ちゃんみたいな感じなんです」
「は?」
「…警察学校で一緒だったんです」
「あ、あぁ…」

 なるほど。納得。
 あれ、でも…履歴書を見るかぎりだと学課が違っていた気もする。

 山瀬は完璧なるサイバー犯罪向け、いわばパソコンに強いような、情報処理と言うかなんか説明に難しい学課で、瀬川は一般だった気がする。少なくとも印象には薄い。

 まぁここからは多分無駄な詮索だ。やめておこう。

「部長と副部長もそんな感じなんですか?」
「ん?うーん。あいつはね、同じ課の先輩かな」
「仲良しですよね。あと千種ちくささんと、監察官と」

 なんか役職呼びってなかなか慣れないな…。警官だと当たり前なんだよな…でもこれ嫌だな。

「ユミルは同僚?潤はまぁ腐れ縁というか…。潤とは学校一緒だったよ。でも俺らは学校一緒だけど昔から喧嘩しかしてないからね」

 ホント、思い返せば口論しかしてない。

「腐れ縁…ですか」

 ふと、いままでは聞く側だった山瀬がぽつりと言う。

「言葉に出来る関係でもねぇけどな、あいつは。あんなんでも癪だが仕事は頼れるところもあるからな」
「…良い関係をお築きですね」
「いや、面倒だよ」
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