ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

文字の大きさ
49 / 376
The 3rd episode

6

しおりを挟む
「んんっ…」

 手になんか、生暖かい感触がして目覚める。
 なんだかとても嫌な夢を見た気がする。

「んー…」

 なんだこの声は。

 目を開けてみたら天井。
 待った。腹がなんか重い。首辺りになんか生温かいもんが掛かる、多分人の吐息。

 隣の光景にビビって、飛び退くように離れたら壁に頭をぶつけた。痛い。

 潤が、無茶苦茶気持ち良さそうに同じベットで寝ていた。

 何これ何これどーゆこと?
 え?しかもなんか布団からさ、潤の肩とか足とか生で出てねえ?

 自分を見てみる。服着てる。

 え、え?軽く、いや、かなりパニック。待って待って何これ怖い。

 いや待って思い出して俺。ここどこ?どう頑張っても俺ん家。うん。これは間違いない。

 え?昨日?
 帰りは確か…。

「このまま一人で帰ったら俺は多分死んでいるね。ほらこれ」

 とか言って潤にスミスアンドウェッソンをぶん投げるように見せられて。

「サイレンサーあるしね。自律神経失調症だし。明日行かない」

 とか、このクソ野郎が言い出したから。

「つったって俺ん家には伊緒がいるし…」
「いい。一人にして。もう人生どうでもよくなった」
「あぁうざい。そーゆーのが一番うざい。俺の前で言うな。
 うざいから俺ん家来い強制。帰って風呂入って寝る。さっき高田に電話したらみんな午後からだってよ。もう他にも通達したっつーし。
 俺ら始末書書かなきゃだし丁度いいだろ」
「やだよふざけんな死ね」
「はいはい。死ぬから帰るぞ。
 俺もいまのメンタルであの家に一人で帰ったら睡眠薬過剰摂取する自信がある。だから来てください」
「なんだよ気持ち悪いな」
「はっはっは!まぁいいんじゃねぇ、傷でも舐めあえ」

 とか言ってそのまま無理矢理俺の家に確かに連れ込んだ。うん。

 しかし俺は連れ込んだあと思い出したんだよ。こいつのヤバイ疑惑を。

 だからこいつには先に風呂入らせて、俺が風呂入っている間寝かせとく作戦を決行しようとしたら。

「寝れないんだよね…」

 とか言っていたので。

「わかった。俺がソファーで寝る。ベットで寝ろ。寝心地いいから」
「やだ。お前の体液とかマジ死にたい」
「お前はどこまでも可愛くないな。じゃぁソファーで寝ろ」
「それも嫌だ!」
「は?」
「一緒に寝る!」
「え?それはいいの?嫌だよふざけんなって」

 とか言ってたらあっさり人のベットに寝転びやがって。

「早く!怖いんだから!」
「ガキかてめぇは」
「実はさ…その…。
 なんかさ、俺の素行が悪いのはこの恐怖症のせいなのね」
「は?てか自覚ありかよ」
「うん。
 なんかね、同じ空間に何かいないと眠れないんだよ、ガチで」
「タチ悪っ」
「そう。だからいいから。別にお前近くにいなくてもいいからこの空間にいて、俺が寝るまで」
「あーもーわかった。うるさい。寝るぞ」

 で、そのまま二人であっさり眠気が来て寝たはずなんだけどなんだこれ。

 あれから間違えて一回起きたのか、そして一回間違えて一線越えてしまったのか。

 だとしたら俺はどっちだったんだ。
 いや、知りたくない。

「んー、ありゃ…?」

 あ、起きた。

「…いない?」

 なんだよなんだよ。
 何故かこっちが息を殺してしまった。
 が、

「あ、いた…」

 そう言って潤が寝ぼけて手を伸ばして来るから。

「おおおはようございます…あの…」

 まずお前自分の腕とか視界に入ってさ、あれ?裸じゃね?とかなんも思わないの?なにその神的感覚のズレ。

「はぁー…」

 潤は漸く上半身を起した。
 あぁやっぱり脱いでるよね。

 顔を擦ったのち、「おはよう…頭痛っ…」とか普通に言ってまた寝転んでしまう。

 えええええ!

「…ちょ、おま、」
「…血圧低いんだよ。話し掛けんな」
「わかった。水でも飲むか?」
「あ、うん。タバコ」

 なにこいつ。

「うん。起きたタバコは旨いからな。
 潤、お前なんで裸なんですか」
「は?」

 不機嫌ボイスの「は?」を頂きました。

「仕方ないよ。気付いたらいつもこうなんだよ」
「え?」
「大丈夫、パンツ履いてるよ?」
「あぁ、はい」

 いやそこじゃねぇよ。いやそこも確かに重要だけど。

「え、なにそれ」
「あ、お前まさかなんかした?」
「それ俺が聞きてぇんだよ俺なんかした?してねぇよな寝たよな?」
「え?どっちの意味で?」
「死ね!朝から死ね!Sleepingの方だよ!」
「うん、記憶が正しければな」
「あぁよかった…。ふー、タバコ吸おう…」

 寿命が1週間は縮まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

灰かぶりの姉

吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。 「今日からあなたのお父さんと妹だよ」 そう言われたあの日から…。 * * * 『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。 国枝 那月×野口 航平の過去編です。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?

藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。 結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの? もう、みんな、うるさい! 私は私。好きに生きさせてよね。 この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。 彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。 私の人生に彩りをくれる、その人。 その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。 ⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。 ⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。

黄金の魔族姫

風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」 「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」  とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!  ──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?  これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。  ──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!   ※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。 ※表紙は自作ではありません。

愛のかたち

凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。 ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は…… 情けない男の不器用な愛。

初恋

藍沢咲良
青春
高校3年生。 制服が着られる最後の年に、私達は出会った。 思った通りにはなかなかできない。 もどかしいことばかり。 それでも、愛おしい日々。 ※素敵な表紙をポリン先生に描いて頂きました。ポリン先生の作品↓ https://www.comico.jp/articleList.nhn?titleNo=31039&f=a ※この作品は「小説家になろう」「エブリスタ」でも連載しています。 8/28公開分で完結となります。 最後まで御愛読頂けると嬉しいです。 ※エブリスタにてスター特典「初恋〜それから〜」「同窓会」を公開しております。「初恋」の続編です。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

処理中です...