ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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The 7th episode

7

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「じゃぁさ、あんたさ、毒薬と麻薬は?どこで手に入れたの?」
「…會澤組だけど?」
「あっそう…。別に會澤組は毒薬なんて扱ってなかったけどねぇ。
 あんたさ、ゼウスの鮫島さんって知らない?Hestiaでは但馬って名前で出入りしてるみたいだけど」

 全員の顔を見渡すと、やはり従業員はさっぱりという顔をしていた。

「…この子達、なんも知らないんだな。
 君らに教えてやるよ、逃げるなら今だ」
「やめろ」
「このままここに残っていたら知らない間にこの男に毒殺される。ただ、今のこいつがそれを出来るとは思えない。多分、わかってるやつがこの中にいるか…」

 銃を浅井に向け、ハンマーを引く。

「もう聞けることもないならあんたはいらない。こんな危険分子はいずれにしても終身刑だ。どうする?せめて俺は客だけでも逃がしていいんじゃないかと思うが」
「待ってください」

 そう、空気を裂くような冷静さで言い放ったのは、洋巳だった。

「わかりました。俺がお客さんは逃がしてきます。それからまずは話をさせてください」
「君が?どうして」
「それはこの店のボーイだからです。お客様を最初に迎え入れ、最後に見送るのが僕の唯一の仕事だからです」
「…あっそう。
 いいよ。好きにしたらいい。ただお宅らは信用できない。諒斗、一緒について行って。不審な行動を取ったらその場でそいつを確保しろ」
「はーい」
「ちなみに全員の血液検査は…」
「とゆうか、薬は押収した。持ってたやつは身分証明書を写メって政宗さんに送っといた」
「了解。外に政宗はいるよな?」
「いますよ。応援も要請しました」

流石、警官よりは場馴れしてるだけあるな。

 さて、電話をしようとケータイを取り出したその時、掛けようとしていた相手からの着信が入る。まるでこちらを見ているかのようなタイミングだ。

「はいはい。丁度掛けようとしていましたよ政宗。只今人質を解放」
『あぁ、そうか…。わかった…』

なんだ?なんだか、声の感じと雰囲気が、焦っているようだが。

「どうしました?」
『…谷栄一郎が、不信死した』
「えっ…」
『會澤組の一件から取調室にいて、そして、捜査員が少し外ている間に死んでいたらしい。いま司法解剖待ちだが、遺体の様子を見る限り、毒薬かなんかを飲んだんじゃねぇかって…』
「毒薬…?」
『だが、急遽家宅捜索や研究所を捜索してみても、今のところそんなもの、見つかってない』
「なんだって?」

どーゆーことだ?
つまり、これは…。

 浅井を見ると、薄ら笑いを浮かべていた。

「どういうことだ?」

 それはつまり谷栄一郎は殺害されたと考えるのが自然だったとして。

誰が、何故、このタイミングで。

「…時間は?」
『18時頃だそうだ』
「潤、鮫島がHestiaに来店したのは何時ごろだ?」
「…20時より前なのは確か。多分19時くらい…」

やられた。

「…その件に関しては了解しました。
 取り敢えず今は、この現場を片付けます」

 諒斗と目が合い、俺が頷くと、諒斗は洋巳に連れられるように、人質がいるのであろうVIPルームへ向かった。

「どうゆーことなんだよ浅井さん、」

 稔が、いまだ真実が飲み込めない様子で言う。
 浅井はそれに、笑ったまま告げる。

「どうって?見たまんまじゃない」
「ふざけんなよ、俺たち、あんたに騙されてたのかよ!」
「侵害だなぁ。お前たち皆、この仕事がクリーンなんかじゃないってわかってただろ?」
「それは…」
「くっだらね」

ホント、くだらねぇ。

「は?」
「いまの若い子はどうしてこう自我がないんだろうな。
 稔くん。確かにこいつは人間のクズだ。だがなぁ、そいつが言うように、どっかでわかってたんじゃないのか?おかしいと思うだろ?」
「だって最初は、普通にホストとして入って、気付いたら」
「甘ったれんなよ。あー、説教するのも面倒臭い。気付いた時点で確信犯なの。世の中そんな甘くないよ。
 本気で媚薬だと思った?アフターピルだと思った?
 まぁいいよ、そこはそう思ったとして。
 それ売り付けて来いとかおかしいでしょ?第一ね、アフター取って来いってお前ね、君の道徳には貞操観念ってもんがないのかい?」
「流星、こんなバカ相手にしてどーすんの?」
「一応これも大人の仕事だよ潤。
 いいか?人を容易に信用するな。信頼できるのなんて自分だけだからな、世の中。現にお前ら今な、無い知恵絞らねぇとこのクレイジー野郎に俺たちもろとも毒殺されちゃうよ」
「…だから、それって」
「ねぇ、浅井さん。誰が毒薬もってんの?そこのアバズレ?それともこの子達?つか嘘なんじゃないの?いい加減にしないと踏み込むよ外の警察が」
「それは出来ないだろうな」
「つまりそういうことか。潤、諒斗に無線飛ばして。あの子だよ」

 そう言うと潤はすぐさまインカムで諒斗に連絡を取った。

「諒斗?そのボーイの子、静かに捕まえて戻ってきて。うん。人質はそのままでいいよ、勝手に逃げるだろうから」

 なんとなくそんな気はした。浅井との新密度や、この状況下やら自分の待遇に、やけに物わかりが良すぎるところも含めて。
 普通なら、稔のように、少しくらい動揺してもいいだろう。
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