89 / 376
The 7th episode
7
しおりを挟む
「じゃぁさ、あんたさ、毒薬と麻薬は?どこで手に入れたの?」
「…會澤組だけど?」
「あっそう…。別に會澤組は毒薬なんて扱ってなかったけどねぇ。
あんたさ、ゼウスの鮫島さんって知らない?Hestiaでは但馬って名前で出入りしてるみたいだけど」
全員の顔を見渡すと、やはり従業員はさっぱりという顔をしていた。
「…この子達、なんも知らないんだな。
君らに教えてやるよ、逃げるなら今だ」
「やめろ」
「このままここに残っていたら知らない間にこの男に毒殺される。ただ、今のこいつがそれを出来るとは思えない。多分、わかってるやつがこの中にいるか…」
銃を浅井に向け、ハンマーを引く。
「もう聞けることもないならあんたはいらない。こんな危険分子はいずれにしても終身刑だ。どうする?せめて俺は客だけでも逃がしていいんじゃないかと思うが」
「待ってください」
そう、空気を裂くような冷静さで言い放ったのは、洋巳だった。
「わかりました。俺がお客さんは逃がしてきます。それからまずは話をさせてください」
「君が?どうして」
「それはこの店のボーイだからです。お客様を最初に迎え入れ、最後に見送るのが僕の唯一の仕事だからです」
「…あっそう。
いいよ。好きにしたらいい。ただお宅らは信用できない。諒斗、一緒について行って。不審な行動を取ったらその場でそいつを確保しろ」
「はーい」
「ちなみに全員の血液検査は…」
「とゆうか、薬は押収した。持ってたやつは身分証明書を写メって政宗さんに送っといた」
「了解。外に政宗はいるよな?」
「いますよ。応援も要請しました」
流石、警官よりは場馴れしてるだけあるな。
さて、電話をしようとケータイを取り出したその時、掛けようとしていた相手からの着信が入る。まるでこちらを見ているかのようなタイミングだ。
「はいはい。丁度掛けようとしていましたよ政宗。只今人質を解放」
『あぁ、そうか…。わかった…』
なんだ?なんだか、声の感じと雰囲気が、焦っているようだが。
「どうしました?」
『…谷栄一郎が、不信死した』
「えっ…」
『會澤組の一件から取調室にいて、そして、捜査員が少し外ている間に死んでいたらしい。いま司法解剖待ちだが、遺体の様子を見る限り、毒薬かなんかを飲んだんじゃねぇかって…』
「毒薬…?」
『だが、急遽家宅捜索や研究所を捜索してみても、今のところそんなもの、見つかってない』
「なんだって?」
どーゆーことだ?
つまり、これは…。
浅井を見ると、薄ら笑いを浮かべていた。
「どういうことだ?」
それはつまり谷栄一郎は殺害されたと考えるのが自然だったとして。
誰が、何故、このタイミングで。
「…時間は?」
『18時頃だそうだ』
「潤、鮫島がHestiaに来店したのは何時ごろだ?」
「…20時より前なのは確か。多分19時くらい…」
やられた。
「…その件に関しては了解しました。
取り敢えず今は、この現場を片付けます」
諒斗と目が合い、俺が頷くと、諒斗は洋巳に連れられるように、人質がいるのであろうVIPルームへ向かった。
「どうゆーことなんだよ浅井さん、」
稔が、いまだ真実が飲み込めない様子で言う。
浅井はそれに、笑ったまま告げる。
「どうって?見たまんまじゃない」
「ふざけんなよ、俺たち、あんたに騙されてたのかよ!」
「侵害だなぁ。お前たち皆、この仕事がクリーンなんかじゃないってわかってただろ?」
「それは…」
「くっだらね」
ホント、くだらねぇ。
「は?」
「いまの若い子はどうしてこう自我がないんだろうな。
稔くん。確かにこいつは人間のクズだ。だがなぁ、そいつが言うように、どっかでわかってたんじゃないのか?おかしいと思うだろ?」
「だって最初は、普通にホストとして入って、気付いたら」
「甘ったれんなよ。あー、説教するのも面倒臭い。気付いた時点で確信犯なの。世の中そんな甘くないよ。
本気で媚薬だと思った?アフターピルだと思った?
まぁいいよ、そこはそう思ったとして。
それ売り付けて来いとかおかしいでしょ?第一ね、アフター取って来いってお前ね、君の道徳には貞操観念ってもんがないのかい?」
「流星、こんなバカ相手にしてどーすんの?」
「一応これも大人の仕事だよ潤。
いいか?人を容易に信用するな。信頼できるのなんて自分だけだからな、世の中。現にお前ら今な、無い知恵絞らねぇとこのクレイジー野郎に俺たちもろとも毒殺されちゃうよ」
「…だから、それって」
「ねぇ、浅井さん。誰が毒薬もってんの?そこのアバズレ?それともこの子達?つか嘘なんじゃないの?いい加減にしないと踏み込むよ外の警察が」
「それは出来ないだろうな」
「つまりそういうことか。潤、諒斗に無線飛ばして。あの子だよ」
そう言うと潤はすぐさまインカムで諒斗に連絡を取った。
「諒斗?そのボーイの子、静かに捕まえて戻ってきて。うん。人質はそのままでいいよ、勝手に逃げるだろうから」
なんとなくそんな気はした。浅井との新密度や、この状況下やら自分の待遇に、やけに物わかりが良すぎるところも含めて。
普通なら、稔のように、少しくらい動揺してもいいだろう。
「…會澤組だけど?」
「あっそう…。別に會澤組は毒薬なんて扱ってなかったけどねぇ。
あんたさ、ゼウスの鮫島さんって知らない?Hestiaでは但馬って名前で出入りしてるみたいだけど」
全員の顔を見渡すと、やはり従業員はさっぱりという顔をしていた。
「…この子達、なんも知らないんだな。
君らに教えてやるよ、逃げるなら今だ」
「やめろ」
「このままここに残っていたら知らない間にこの男に毒殺される。ただ、今のこいつがそれを出来るとは思えない。多分、わかってるやつがこの中にいるか…」
銃を浅井に向け、ハンマーを引く。
「もう聞けることもないならあんたはいらない。こんな危険分子はいずれにしても終身刑だ。どうする?せめて俺は客だけでも逃がしていいんじゃないかと思うが」
「待ってください」
そう、空気を裂くような冷静さで言い放ったのは、洋巳だった。
「わかりました。俺がお客さんは逃がしてきます。それからまずは話をさせてください」
「君が?どうして」
「それはこの店のボーイだからです。お客様を最初に迎え入れ、最後に見送るのが僕の唯一の仕事だからです」
「…あっそう。
いいよ。好きにしたらいい。ただお宅らは信用できない。諒斗、一緒について行って。不審な行動を取ったらその場でそいつを確保しろ」
「はーい」
「ちなみに全員の血液検査は…」
「とゆうか、薬は押収した。持ってたやつは身分証明書を写メって政宗さんに送っといた」
「了解。外に政宗はいるよな?」
「いますよ。応援も要請しました」
流石、警官よりは場馴れしてるだけあるな。
さて、電話をしようとケータイを取り出したその時、掛けようとしていた相手からの着信が入る。まるでこちらを見ているかのようなタイミングだ。
「はいはい。丁度掛けようとしていましたよ政宗。只今人質を解放」
『あぁ、そうか…。わかった…』
なんだ?なんだか、声の感じと雰囲気が、焦っているようだが。
「どうしました?」
『…谷栄一郎が、不信死した』
「えっ…」
『會澤組の一件から取調室にいて、そして、捜査員が少し外ている間に死んでいたらしい。いま司法解剖待ちだが、遺体の様子を見る限り、毒薬かなんかを飲んだんじゃねぇかって…』
「毒薬…?」
『だが、急遽家宅捜索や研究所を捜索してみても、今のところそんなもの、見つかってない』
「なんだって?」
どーゆーことだ?
つまり、これは…。
浅井を見ると、薄ら笑いを浮かべていた。
「どういうことだ?」
それはつまり谷栄一郎は殺害されたと考えるのが自然だったとして。
誰が、何故、このタイミングで。
「…時間は?」
『18時頃だそうだ』
「潤、鮫島がHestiaに来店したのは何時ごろだ?」
「…20時より前なのは確か。多分19時くらい…」
やられた。
「…その件に関しては了解しました。
取り敢えず今は、この現場を片付けます」
諒斗と目が合い、俺が頷くと、諒斗は洋巳に連れられるように、人質がいるのであろうVIPルームへ向かった。
「どうゆーことなんだよ浅井さん、」
稔が、いまだ真実が飲み込めない様子で言う。
浅井はそれに、笑ったまま告げる。
「どうって?見たまんまじゃない」
「ふざけんなよ、俺たち、あんたに騙されてたのかよ!」
「侵害だなぁ。お前たち皆、この仕事がクリーンなんかじゃないってわかってただろ?」
「それは…」
「くっだらね」
ホント、くだらねぇ。
「は?」
「いまの若い子はどうしてこう自我がないんだろうな。
稔くん。確かにこいつは人間のクズだ。だがなぁ、そいつが言うように、どっかでわかってたんじゃないのか?おかしいと思うだろ?」
「だって最初は、普通にホストとして入って、気付いたら」
「甘ったれんなよ。あー、説教するのも面倒臭い。気付いた時点で確信犯なの。世の中そんな甘くないよ。
本気で媚薬だと思った?アフターピルだと思った?
まぁいいよ、そこはそう思ったとして。
それ売り付けて来いとかおかしいでしょ?第一ね、アフター取って来いってお前ね、君の道徳には貞操観念ってもんがないのかい?」
「流星、こんなバカ相手にしてどーすんの?」
「一応これも大人の仕事だよ潤。
いいか?人を容易に信用するな。信頼できるのなんて自分だけだからな、世の中。現にお前ら今な、無い知恵絞らねぇとこのクレイジー野郎に俺たちもろとも毒殺されちゃうよ」
「…だから、それって」
「ねぇ、浅井さん。誰が毒薬もってんの?そこのアバズレ?それともこの子達?つか嘘なんじゃないの?いい加減にしないと踏み込むよ外の警察が」
「それは出来ないだろうな」
「つまりそういうことか。潤、諒斗に無線飛ばして。あの子だよ」
そう言うと潤はすぐさまインカムで諒斗に連絡を取った。
「諒斗?そのボーイの子、静かに捕まえて戻ってきて。うん。人質はそのままでいいよ、勝手に逃げるだろうから」
なんとなくそんな気はした。浅井との新密度や、この状況下やら自分の待遇に、やけに物わかりが良すぎるところも含めて。
普通なら、稔のように、少しくらい動揺してもいいだろう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
黄金の魔族姫
風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」
「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」
とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!
──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?
これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。
──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!
※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。
※表紙は自作ではありません。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
初恋
藍沢咲良
青春
高校3年生。
制服が着られる最後の年に、私達は出会った。
思った通りにはなかなかできない。
もどかしいことばかり。
それでも、愛おしい日々。
※素敵な表紙をポリン先生に描いて頂きました。ポリン先生の作品↓
https://www.comico.jp/articleList.nhn?titleNo=31039&f=a
※この作品は「小説家になろう」「エブリスタ」でも連載しています。
8/28公開分で完結となります。
最後まで御愛読頂けると嬉しいです。
※エブリスタにてスター特典「初恋〜それから〜」「同窓会」を公開しております。「初恋」の続編です。
愛のかたち
凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。
ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は……
情けない男の不器用な愛。
27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?
藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。
結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの?
もう、みんな、うるさい!
私は私。好きに生きさせてよね。
この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。
彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。
私の人生に彩りをくれる、その人。
その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。
⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。
⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる