ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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Past episode four

4

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「Damn it.」
「はいはい、いまは我慢してよ。これじゃルークの方が悪者っぽいよ?」

 漸く銃をしまった。ひと安心。
 取り敢えずは自動ドアをこじ開けて中に侵入出来た。
 途端に銃器の、カチャッという音が聞こえる。

 震える手で銃を構えて向けているのは金髪で痩せ型、目がラリったジャンキーみたいなヤツが一人。
 まわりには人質たちが十何人かが皆一様に受付の椅子にぼんやりと座っている。

ナメられたものだ。というかまさかこんなクソ野郎にここは乗っ取られたのか?そんなわけがない。

「なにあのジャンキー」
「多分威嚇要員だろ。どうする?」
「殺したらダメなんデスか?」
「ダメなんデス。あいつ捕まエル。一番楽。オーケー?」

 「Oh,yeah!」と、目を輝かせながらスキップをするようにルークはそいつの元へ嬉々として歩む。
 そのキチガイじみた様子に三下犯人はすぐさまビビって後ずさるが、敵わない。あっさりルークにぶん殴られ、捕獲成功。

 その隙に潤と流星は先へ進む。
 最早あんなクレイジー軍人は巻いてしまった方が後々楽である。

「さてと」
「堂々と正面から入ったがこりゃぁ裏口かなぁ」

 一応、裏口の警備体制は整えてある。
 犯人に逃げる道は与えてはいないが、三下が残っているのを見ると、目的が掴めない。

「なぁんかさ」

 ふと潤が、ひょいっとカウンターに飛び乗った。そして下を指差し、「流星、」と呼ぶので流星も乗って見てみる。

「あぁ、なるほど」

 カウンターの下には、事前にデータで見た死刑囚の残り二人が、頭を撃ち抜かれて死んでいた。

「ルーク!」
「はぁい」
「撤収!」
「hun?」

 明らかにルークは眉間にシワを寄せ不機嫌になってしまった。

そりゃぁそうだ。

 そもそも何故こんなに陳腐な強盗だかなんだかわからない現場に化け物級のスナイパーを寄越したのか。そこには、何か樹実の意図がありそうだ。

 人質の疲弊した様子を見れば、長期だったのは分かる。

 まずは速やかに人質である従業員やら客やらを入り口から外へ誘導することにしたが、どうも、解放されたというのに人質全員の足取りが重いのが気掛かりだった。

「ヤッパあのガキ使えナイと思うんダヨここダケの話ネ」
「あのガキ?」
「アイツだよ、アノ、smirkなガキ」
「あ、あぁ」
りくか」

 十津川とつがわりく
彼は、今年採用の、謂わば潤と流星の後輩である。

「なんでりっくん?まぁ…あれだけどさ」
「アイツに言われてキたんダヨ!」

 彼は今、部署ではどちらかと言えば情報収集を担当している。
 言われてみれば確かに近頃、少しばかり詰めが甘いというか、なんとなく隠蔽臭いというか、悪い方の公安へ傾いた感はあったような気はする。

「今そんでハデスのとこに居るンダヨー?」
「…また大胆だねぇ」

 樹実のそっちでのコードネームらしい。
 何故、奈落の神の名前が使われるか、それは彼のそっちでの仕事が影響するのだろうか。

「あんなデスクワーク上がりに拳銃持たせようとはまぁ、らしくないよな」
「あら、ヤキモチ?」
「いや単純に、なんかありそうだなと」

 でなければそんな危ない橋を、あの樹実が渡るだろうか。

「ルーク、ちなみに向こうの状況は?」
「ん?アァ。
 大使館に2人、元海軍ダカ陸軍のヘッドを筆頭にシテ15だったカナ。ハデスとクソガキとゴリラと…銀チャン」
「政宗と陸は踏み込みじゃないとしたら、二人か…」
「状況は壊滅的にキツそうだね」

 そんな話をしながら、最後の一人を外に出し、先程捕まえた三下を警官に引き渡そうかというときだった。
 「きゃぁ!」と、悲鳴が聞こえて話が終わる。人質の最後の一人、金髪で線が細い背中。
 警官が一人、脳天をぶち抜かれて倒れた。制帽が足元に転がる。

なるほどそう来たか。

 三下ジャンキーが、「ひっひっひ…」と、気が狂ったように引きつった笑い声を上げた。
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