ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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Past episode four

6

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 いや何これホントに一端の警察かよというほど、少しの残虐性と柔道のような手際。喧嘩慣れというかもしれない。
 捕らえられた青年も「いたたたたた!痛い!」と半泣き状態である。

「命拾いしたな、ただ死んどいた方が多分マシだぞ。
 で?俺の質問はどこ行ったテロリスト。こっちは次行かなきゃなんねーんだよ早く答えねーと真面目に殺すぞ。
 なぁ、これは宗教施設への足止めだな?」
「…うるせ」

 真横に、先程ハンマーを引きっぱなしだった一発をぶちかまして脅す。

「いいから早く答えろ、こっちは気が短ぇんだよ」

 恐怖で話せなくなる。悪循環だ。

「流星、止めとけよ。どうせ三下だろこいつら」
「あ?」

 流星に呆れた顔の潤と、少し驚いたルークがいた。

「人は見カケによらナイね」
「三下だろうがこっちは聞かなきゃなんねぇんだよ。第一気が立ってんだ」
「本音はそっちだろ」

 ぞろぞろと銀行に警官が入っていく。ジャンキーは然り気無くその場にいた刑事が連行した。

 あぁ、なんでみんなで入っていくかなぁ、いま爆破したらてめぇら全員ここが墓場だろうがと、つっこんでやりたいことは山程あった。
 というより全てが目についてしまって仕方がない。

「あぁ、もう。
 おいバカ!全員で行くなよ使えねーな!誰だ指揮か…」
「はいはい流星わかったうるさい。もうここは任せて行こう。お前こーゆー現場向かないな」
「…あぁ」

なるほど、そうかも。

 潤に言われてもの凄くすとんと腹に落ちる感覚がした。
 要するに現場指揮官的な、所謂上司的なヤツだったり、あとは現場だったり、その場の信頼感だったり、自分はわりとそーゆーので決まってしまうのだ。

「大人になれよ、センパイ」

ただその潤の一言は結構イラっとしたのだが、

「うるせぇクソガキ」

珍しくもそれくらいしか悪口が浮かばなかった。

「てか…」

 途端に流星なんてお構い無しになる。
 潤は青年の目の前に転がった警官に視線を落としていた。

「誰がこの人処理すんの?」

 確かに。
 仕方なさそうに潤がその死体に歩みより、抱えようとするから。

「ちょっ、待った、無理」
「は?」

 流星の思考は現実に引き戻された。

「よ、誰か呼んできます、俺が。あの…」
「え?何言ってんの」

お前。
 とまで潤は言うか言わないか、死体を抱えて振り返ろうとしたら「わー!待って待って!無理!ごめん!」と流星が一人突如パニックになって騒ぎ始めるのに疑問。

「え?なに?」
「ごめん、無理ぃ…」

 しかも半泣き。なんだこれは。

「なんでお前そんな平気なんだよ!」
「は?お前こそ何言ってんの?」

 そんな二人を見てルーク、思わず苦笑しかない。

「モシカシてリューセー、グロテスクだめなの?」

フリーズした。

「え?嘘ぉ」
「…もういい、はい、呼んできますので。と言うより現場検証とかございますので星川さん、あまりいじらないで頂けますか?」

怒ったらしい。

「確かに。はーい」

 最早面倒なやつなのであとは従うことにした。

「ワタシが呼んでくるよ!ついでにソコのサイコ野郎も引き渡して来ルヨ」

 空気を読んでルークが申し出る。
 青年の髪を禿げるんじゃないかという勢いで引っ付かみ、近くにいた警官に引き渡していた。
 相手は相当ビビっているようだった。

「…怖いんだよな」
「あ?」
「わかんねぇけど昔から。なんかダメなんだよ」
「あっそう」

覚えているけど、覚えていない。恐らくは、相当昔の、樹実と会う前から、こーゆーのはダメだった。

「なんで刑事になったんだよ」
「わかんね」
「まぁ俺が言えた口でもねぇけど。まぁ警察でよかったね。ほら、軍隊とかFBIだとそうじゃないっぽいじゃん?」
「うん確かに」
「俺も争いは基本嫌いだよ。面倒だから」
「あぁ、うん」
「お互いなりたくねぇな。ならないだろうけどな」

 無駄にこーゆーときに明るく声を掛けてくれる潤に、却って辛くなることもある。お互い少しばかり素性を知っているだけあって。

「ほら、へばってねーで次行こ次!次は多分ぶっ殺す系だよ」
「はは…。てめえホント性格破綻」

 潤が言うとおり、本気で次の現場はぶっ殺す系だった。
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