ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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Past episode four

7

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 銀行(強盗)を切り上げて本題の教会テロ現場に直行した。

 丁度、政宗が車の前でタバコを吸い始めていた。
 3人を見つけるとにやっと笑い、「お待ちしておりやした、姫と王子とSP」と憎まれ口を叩く。

「ゴリラ!」
「よぅルーク。それ誰に教わったんだ?」
「はろーセンパーイ。遅くなりやしたー」
「おぅ。相変わらずナメてやがるな」
「てか政宗、キツくないですかこっちの方が。なんで樹実はルークをこっちに?」
「まぁまぁまぁ。お前はタバコでも吸おうか。てかなにこの拷問じみた挨拶合戦。タバコ吸わせろてめぇら」

 車の中では、先程話題に上がった十津川陸が無線で連絡か何かを入れている。
 3人に会釈だけを寄越してきたので潤が笑顔で助手席のドアを開け、「よぅりっくん」と、少し低い声で挨拶をした。

 陸はその童顔に似合う、可愛らしい笑顔を見せて照れたように俯いた。
 彼はヤケに潤や流星に対してそーゆー態度を見せる。なんと言うか色目遣いに近い物がある。

「照れんなよりっくん」

 こうふざけて潤は言うが、それを聞いている流星や政宗は少し、潤の声のトーンに不穏さを感じた。

「りっくん、情報頂戴」

 不穏だ。

「潤チャンなんか狙ってンノかな?」
「さぁな。政宗、情報頂戴」

 流星は少し車から離れるように政宗に促した。
 疑問符を表情に浮かばせながらも、流星がタバコに火をつければ、政宗はそれに応じてくれる。

「あいよ。
 犯人は元陸軍と元海軍のやつを筆頭にした7人くらいで、いつもパターンだ。麻薬密売と人身売買。宗教関係者に成り済まして占拠したっぽいな。ただ、それだけでこうもあっさり行くとは考えにくい」
「ちなみに銀行は被害者に仲間がいたよ」
「なるほどな。だが教会くらいのデカい組織ともなると」
「ストップ。あんま喋らないほうがいい」
「は?」
「まずは自分を疑えってね。盗聴機とかさ」
「何言ってんの?お前、より性格悪くなっ」

 流星は政宗の襟元辺りに手を伸ばす。
 丁度襟首辺りに感触を感じ、それを外して政宗に見せると、政宗は驚いた顔をしていた。
 合図として流星がちらっと車を見るのに半信半疑な様子ながらも政宗が黙ったので、流星はそのままポケットに盗聴機をしまった。

 実はここに向かう最中、三人で話をしていたのだ。陸について。
 ここ最近、ヤケに相手方に手を読まれている、恐らくは内通者が組織内か、警察内部にいるだろうということ。

「ルーク、大変だったな、あっちは」
「ホントだよ、死ぬかと思った」
「マジか、そんなに?」
「えぇ、まぁ。そういや爆弾処理出来ました?」
「それが…なんも情報がないんだよ」
「なるほどね。
 あの指名手配犯、多分『エレボス』だろ?」
「え?そうなの?」
「ぽかったよ」
「あそう、目的は?」
「わからん。強盗でないのは確かです。なんせ金は抜かれていない。
 最初に聞いていた犯人3人中2人は取り逃がした。行った頃にはもう逃げていた」

 法螺を吹く。

「もう一人は?」
「逮捕した。さらに現れたニュー犯人も逮捕した。こっちに合流するかもな、逃亡犯」
「そりゃ困ったな」
「下手すりゃもうしてたりしてな。それは困るからやっぱ政宗、応戦しようとしてましたけどここには政宗が残り、いざというときに逃げてきたそいつらを撃ち殺してください。
 戦力は欲しいけどここはひとつ、陸を連れて行きます」
「そうだな。なんかあったらまぁ樹実に呼ばれるだろ」

 嘘臭い作戦会議が終わったところで、それを見計らったかのように潤と目が合う。寄り掛かっていた助手席の窓から、こちらにふらっと歩いてきた。

 なかなかなチームワーク。毎回サポートに入る度にルークは感心するのだ。
 要するに流星と潤と政宗は、一瞬にして陸を黒と判断しデマ会議をしたわけだ。

「さて、行こうか」
「あぁ。陸を連れてく」
「あっそう。政宗は?」
「置いてく」
「ハイヨ。
 オーイ、リク。行きマスよ」

 今まで黙って事を聞いていたルークが、空気を読んで陸を車から引っ張り出してくれた。

「は、はい?」
「予定変更。政宗一人に残ってもらう」
「わかりました…」

 どうやら動揺しているようだ。

「ま、現場慣れしましょーよ」

 潤が場にそぐわないような笑顔で言うと、陸はじっとその笑顔を見つめて「は、はい」と上の空で返事をした。
 なんとなく、さっきより二人が親密なのに違和感を感じる。

「そだ、政宗」
「どうした姫」
「俺死んだら水葬にしてね」
「なんだよ、柄でも縁起でもねぇな」
「そんだけ。じゃぁね」

 各々手を振ったり、敬礼をしたり後ろ手を振ったり。向かう4人の背中を見つめながら政宗は、再びタバコに火をつけた。
 後はただ、検討を祈るしかない。

「大人になりましたねぇ…」

 後ろで聞き覚えのない声が聞こえた。
 政宗が声に振り向くと、眼鏡の見慣れない、スッキリした顔立ちの男が慈しむような表情で4人の背中を眺めている。

…誰だかわからない。

「…誰だあんた」

 男は、眼鏡をくいっとあげて微笑んだ。
 ストパーよろしくな直毛はもったいないことに寝癖である。しかも足元は健康サンダル。
 はっきり言ってこんな胡散臭いやつ、政宗は知らない。

「どうもはじめまして」
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