152 / 376
Past episode four
14
しおりを挟む
警察庁は、静かなる狂気を孕ませていた。
樹実はまず、何食わぬ顔をして理事官室に入り、そこにいたやつらを拘束した。
そのままパソコンにログインし、脅しながらパスワードを聞き出す。自分に必要なデータを引き抜き、最後にそのデータをデリート。デリート時にウイルスがサーバーを犯す。
その作業の間、特テロ部の名狙撃手だった吉田美玲が理事官を連れ、とある捜査資料を持ち出す。
持ち出しが成功した時点で理事官を射殺。
美玲は女のわりに、男勝りなやつだった。見た目も、金の短髪で迷彩服。実は元自衛隊の、完璧なる軍人だった。
その頃には異変に気が付いた者たちが騒ぎ始める。あとは、向かってくる者を威嚇したり殺したりしながら長官の部屋へ乗り込む。
拳銃片手に長官室のドアを蹴破った。
護衛の3人の銃口と、警察庁、曽田長官の挑発的な視線が一斉放射。すぐさま美玲がサブマシンガンを向ける。
「来たな」
「ちわっす。何でも屋の茅沼っす。長官にお届け物でーす」
そう言って樹実は、護衛に目もくれず真っ直ぐに曽田の前まで歩み、あの頃の捜査資料をテーブルに叩きつけた。
この間に一人の護衛が、美玲の射撃によって死亡した。その時点で曽田は、「やめろ」と命じ、他二人の護衛は動けない状態に陥った。
「君は、何がしたい」
何がしたい。
他でもない、自分がやって来たことへの腹いせと、何より…。
「なんだろな」
これはなんなのか。
「…今更これをほじくり返して何になる」
「何になる?覚えがあんのか」
「覚えとは?
君は何か勘違いをしている。我々がこの戦いで何をしたというのか」
「話の出来ないやつは嫌いだな。何をした?そうだな、何もしてねぇな。なーんも。
俺たちは全てこれらの、政府を、警察組織をクリーンにするための仕事をしてきたはずだった。だが実際は…なんだかな。
だがその影の組織が俺じゃダメだったんだよ、長官。
俺じゃ若すぎたんだ。あんたよりか血気盛んだ。だからこうして寝首かいてクーデターってやつを起こしに来たのさ」
「ほぅ、自分も荷担していたくせにか」
「…そうだな、まったくだ」
樹実は長官の机に座り、足を組んで長官の目の前でゆったりとタバコに火をつけた。
「だがな長官。あんただってバカじゃないだろ。つまりは、俺にとっちゃそんなことはどうでもいいのさ」
「じゃぁなんだって言うんだ」
「そうだなぁ、何だろうな。書類に目を通すのがあんたの仕事だろう」
何をしているか。
そんなのこっちが聞いてやりたいものだ。
「まあ気付いたよ。
どの組織に入っても結局のところ正義は、悪の上で成り立つってな。だが別にこれは正義感なんかじゃない。そんなもんはとっくに捨てている。
そうだなぁ…疲れたかな。安息が欲しい。せめて、宗教施設を薬付けにしてダメなら討伐、成功したら軍隊にして国の物なり海外に売り飛ばして金にするってのはわりと安息じゃないな。あんたらもう充分稼いだし技術も手に入れただろ?俺から卒業してくれ」
「樹実さん、それ、どーゆーことですか」
声をあげたのは美玲だった。
彼女は表情も手元の銃口も変えぬまま機械のように、樹実に尋ねた。
「どうもこうもそーゆーことだ。君、分かっててついてきたんじゃないのか?」
「私は…ただ…」
「職務を全うしたいだけなら引き返して就職を探した方がいい。俺は最早こうなるとテロリストだ。そして俺たちが追っていたエレボスのボスということになる」
「…は?」
「つまりエレボスってのは、俺が作った軍隊なんだよ、お嬢さん」
「あんた、今まで…!」
「仕方がない。国がそれを求めた。薬や軍隊や兵器をな。美玲、俺は軍人だよ?国に飼われた殺し屋だ。
俺たちがしてきたのは、ダメになったヤツらを排除することなんだよ。始めからそーゆーことだったんだ。な、長官」
「お嬢さん、ダメだ。この男を信用するな」
わからない。
美玲は俯いた。その瞬間に曽田は他の護衛二人に合図をした。護衛二人は隙をついて美玲に向け再び銃を構える。
「長官」
「なんだい、お嬢さん」
「私がついてきたのは紛れもなくその人です。私は、その人について行きたい」
そう言って美玲は樹実に銃口を変えた。だが、樹実は怯まない。
「あなたが言うことは胡散臭いですがその人が言うことは信用ができます。なんせ上司ですから」
「…良い女だね、美玲」
樹実は美玲に銃を向けた。
「お前が部下でよかったよ。部下じゃなかったら嫁にしていたな。
だが悪いな、俺を殺すのは、お前じゃないんだ」
美玲と、その他護衛に対して樹実は銃を正確に撃ち込んだ。3人が倒れたのはほぼ同時だった。
樹実はまず、何食わぬ顔をして理事官室に入り、そこにいたやつらを拘束した。
そのままパソコンにログインし、脅しながらパスワードを聞き出す。自分に必要なデータを引き抜き、最後にそのデータをデリート。デリート時にウイルスがサーバーを犯す。
その作業の間、特テロ部の名狙撃手だった吉田美玲が理事官を連れ、とある捜査資料を持ち出す。
持ち出しが成功した時点で理事官を射殺。
美玲は女のわりに、男勝りなやつだった。見た目も、金の短髪で迷彩服。実は元自衛隊の、完璧なる軍人だった。
その頃には異変に気が付いた者たちが騒ぎ始める。あとは、向かってくる者を威嚇したり殺したりしながら長官の部屋へ乗り込む。
拳銃片手に長官室のドアを蹴破った。
護衛の3人の銃口と、警察庁、曽田長官の挑発的な視線が一斉放射。すぐさま美玲がサブマシンガンを向ける。
「来たな」
「ちわっす。何でも屋の茅沼っす。長官にお届け物でーす」
そう言って樹実は、護衛に目もくれず真っ直ぐに曽田の前まで歩み、あの頃の捜査資料をテーブルに叩きつけた。
この間に一人の護衛が、美玲の射撃によって死亡した。その時点で曽田は、「やめろ」と命じ、他二人の護衛は動けない状態に陥った。
「君は、何がしたい」
何がしたい。
他でもない、自分がやって来たことへの腹いせと、何より…。
「なんだろな」
これはなんなのか。
「…今更これをほじくり返して何になる」
「何になる?覚えがあんのか」
「覚えとは?
君は何か勘違いをしている。我々がこの戦いで何をしたというのか」
「話の出来ないやつは嫌いだな。何をした?そうだな、何もしてねぇな。なーんも。
俺たちは全てこれらの、政府を、警察組織をクリーンにするための仕事をしてきたはずだった。だが実際は…なんだかな。
だがその影の組織が俺じゃダメだったんだよ、長官。
俺じゃ若すぎたんだ。あんたよりか血気盛んだ。だからこうして寝首かいてクーデターってやつを起こしに来たのさ」
「ほぅ、自分も荷担していたくせにか」
「…そうだな、まったくだ」
樹実は長官の机に座り、足を組んで長官の目の前でゆったりとタバコに火をつけた。
「だがな長官。あんただってバカじゃないだろ。つまりは、俺にとっちゃそんなことはどうでもいいのさ」
「じゃぁなんだって言うんだ」
「そうだなぁ、何だろうな。書類に目を通すのがあんたの仕事だろう」
何をしているか。
そんなのこっちが聞いてやりたいものだ。
「まあ気付いたよ。
どの組織に入っても結局のところ正義は、悪の上で成り立つってな。だが別にこれは正義感なんかじゃない。そんなもんはとっくに捨てている。
そうだなぁ…疲れたかな。安息が欲しい。せめて、宗教施設を薬付けにしてダメなら討伐、成功したら軍隊にして国の物なり海外に売り飛ばして金にするってのはわりと安息じゃないな。あんたらもう充分稼いだし技術も手に入れただろ?俺から卒業してくれ」
「樹実さん、それ、どーゆーことですか」
声をあげたのは美玲だった。
彼女は表情も手元の銃口も変えぬまま機械のように、樹実に尋ねた。
「どうもこうもそーゆーことだ。君、分かっててついてきたんじゃないのか?」
「私は…ただ…」
「職務を全うしたいだけなら引き返して就職を探した方がいい。俺は最早こうなるとテロリストだ。そして俺たちが追っていたエレボスのボスということになる」
「…は?」
「つまりエレボスってのは、俺が作った軍隊なんだよ、お嬢さん」
「あんた、今まで…!」
「仕方がない。国がそれを求めた。薬や軍隊や兵器をな。美玲、俺は軍人だよ?国に飼われた殺し屋だ。
俺たちがしてきたのは、ダメになったヤツらを排除することなんだよ。始めからそーゆーことだったんだ。な、長官」
「お嬢さん、ダメだ。この男を信用するな」
わからない。
美玲は俯いた。その瞬間に曽田は他の護衛二人に合図をした。護衛二人は隙をついて美玲に向け再び銃を構える。
「長官」
「なんだい、お嬢さん」
「私がついてきたのは紛れもなくその人です。私は、その人について行きたい」
そう言って美玲は樹実に銃口を変えた。だが、樹実は怯まない。
「あなたが言うことは胡散臭いですがその人が言うことは信用ができます。なんせ上司ですから」
「…良い女だね、美玲」
樹実は美玲に銃を向けた。
「お前が部下でよかったよ。部下じゃなかったら嫁にしていたな。
だが悪いな、俺を殺すのは、お前じゃないんだ」
美玲と、その他護衛に対して樹実は銃を正確に撃ち込んだ。3人が倒れたのはほぼ同時だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
黄金の魔族姫
風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」
「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」
とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!
──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?
これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。
──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!
※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。
※表紙は自作ではありません。
愛のかたち
凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。
ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は……
情けない男の不器用な愛。
27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?
藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。
結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの?
もう、みんな、うるさい!
私は私。好きに生きさせてよね。
この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。
彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。
私の人生に彩りをくれる、その人。
その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。
⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。
⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。
初恋
藍沢咲良
青春
高校3年生。
制服が着られる最後の年に、私達は出会った。
思った通りにはなかなかできない。
もどかしいことばかり。
それでも、愛おしい日々。
※素敵な表紙をポリン先生に描いて頂きました。ポリン先生の作品↓
https://www.comico.jp/articleList.nhn?titleNo=31039&f=a
※この作品は「小説家になろう」「エブリスタ」でも連載しています。
8/28公開分で完結となります。
最後まで御愛読頂けると嬉しいです。
※エブリスタにてスター特典「初恋〜それから〜」「同窓会」を公開しております。「初恋」の続編です。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる