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The 10th episode
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タバコを吸い終え、なんとなく重い空気のまま二人で部署に戻ろうと、喫煙所を出たときだった。
「あっ」
と、潤が言ったかと思えば、
「やべえ、」
そう言って、何故か潤は俺の後ろに隠れるような動作をしたので、
「は?な」
何?と言い終わる前に、何処かからともなく「てめぇぇぇ潤んん!」と、恨みが盛大に籠った雄叫びのような声が聞こえてきて。
茶色い短髪のボーイッシュな女が前方から猛ダッシュで走ってきて俺の前でピタッと止まった。
「はっ…」
あまりの女の勢いに言葉を探し、出てきた言葉は情けなくも、「ハジメマシテ」だった。
「初めまして。そいつちょっと貸してくれません?てかあんた誰」
いやいやお前が誰なんだよ、けど怖い。なんだか目がヤバい凄く鋭いけど…なんだろ、日本人離れした美人だな。
「や、やぁ、アキコ…久しぶりぃ…」
「ははー、久しぶり」
あれ、意外とちゃんと話せてるじゃないかと思ったのも束の間、女(アキコ)は突然目の前に右手を出してきて。
なんだろ、シェイクユアハンズ的なあれではない、明らかに手の平を見せてきている。いわゆる“お手!”的なあっちだ。
これはなんだ、あれか。
「3万返せジゴロ野郎」
やっぱそうきたか。
「え、えぇ…」
そして女は俺越しに潤へ手を伸ばしに掛かったので即座に退いた。
もう、女、アキコさんは潤のネクタイを引っ張って殴る勢い。
「痛い痛い痛い!」
「てめぇいままでどこほっつき歩いてたんだよ、あぁ!?」
「ちょ、ガチで、た、助けて…助けてぇ!」
潤もこんなんなるのかぁ。
なんてぼんやり思っている場合じゃない。
「ま、まぁ、ちょっとタバコでも。ね、」
取り敢えず無理矢理引き剥がして無理矢理笑顔。
アキコさんが少しばかりよろけてしまったので、「あぁ、ごめんなさい大丈夫?」と手を貸そうとすれば、「…案外良い男だねぇあんた」と、マジマジと見られてしまい、呆ける。
え、何これどんな顔すればいいの、俺。
苦しいと言いながら潤はネクタイを外したところらしい、苦しそうながらも吹き出していた。それを見たアキコは、「てめぇは笑ってんじゃねぇよ」と一喝。
「まぁまぁ、タバコ吸おう。はい、ね?」
お前が言うかよ!
アキコとハモった。二人して顔を見合わせ、無言になる。
潤が言うとおり再び喫煙所へ戻る。
アキコは、イライラしたようにポケットからタバコを取り出し、噛むように咥えてライターを擦る。3回くらい擦ってつかない。
最早擦るタイプじゃないのにすりゃぁいいのにとか思っていたら、潤が横からスッと火を出してつけてやる。
これは傍観していよう。面白そうだし面倒臭そうだし。
「おぉ、サンキュ」
「最早さ、擦るタイプ止めなよぶっ壊すんだから」
「うんそうする。でさ、3万」
「あー、返したらいいの?」
「あ?」
「はい、すんません」
この女絶対元レディースとかだと思うんだが、なんでそんなヤツがこんな、ガチガチな公安、警視庁にいらっしゃるんだ。
「返したらいいかじゃねぇよゲス野郎」
「いや、はい、まぁそうなんすけど」
「なんで出てったよ」
「いやー、それはですねアキコさん」
うわぁ、これクソ面倒なヤツだ。なんか俺これ、潤のこーゆー話昔付き合わされたことあるぞ。あの時確か…。
「あ、この人!この人と今暮らしていま」
「せん。付き合ってもいません」
「はぁ!?」
先手を打とう。
昔そのパターンでメチャクチャになったことがあった。なんなら当時の彼女と大喧嘩に発展した。
「え、ちょっ、な、流星、勘弁してよ」
「こっちが勘弁してよ。嫌だよ前回の二の舞は!」
「は?前回?」
「何ちゃんだっけ、お前がサイバーテロ課の子と別れたときだよ昔!」
「え、お前そんなサイコパスな女いたの?」
「あー、ユリちゃんかぁ。あ、あんときゴメンね。お前、彼女と破局寸前までいったもんな。どうしたよ?」
「うるせぇな今付き合ってねぇだろわかるか!?」
「あ、はーい」
ちょいちょい人の過去を漁りやがってこのクソ野郎が。
「でもそれがあって今の俺たちがあるんだなぁ、流星」
「ん?あぁまぁ…は?」
あれ、乗せられてねぇか俺。
潤は急にアキコの隣から俺の隣に移動。
逃げるように俺が、空いたアキコの隣に行ってやろうかと思ったが、腕をガッチリ捕まれてしまった。
「って訳で。ごめんなアキコ」
「は?え、は?」
「潤…」
だがアキコは予想に反し、タバコを一口吹き出すレベルでウケていた。なにそれ、どこがおもろいの。
「あーもう3万はいいわ、うん。じゃ、なんで出てったかだけ聞こうか」
「はぁ!?まだ3万の方がマシだって!返す!こいつが!だってほら、アキコから俺を奪った相手だよ!?慰謝料だよね!?」
「は?いやまず俺知らねぇんだよ。つか、つかぬことを聞きますがお宅ら元恋人でOK?」
「いや違ぇよ勘弁してよそんなジゴロクソ野郎」
「は?いや、うん、わかるよその気持ち。すっげぇわかる。じゃぁ何?」
「クソ野郎は認めるけどジゴロじゃねぇよ」
「うるさい潤黙ってマジ」
「あ?そこのアバズレはなぁ、セフレだよセフレ!」
「ジゴロじゃねぇかよ!」
「相棒な。セフレじゃねぇよ潤」
「はぁ!?」
未知との遭遇。なにこの二人。
「あっ」
と、潤が言ったかと思えば、
「やべえ、」
そう言って、何故か潤は俺の後ろに隠れるような動作をしたので、
「は?な」
何?と言い終わる前に、何処かからともなく「てめぇぇぇ潤んん!」と、恨みが盛大に籠った雄叫びのような声が聞こえてきて。
茶色い短髪のボーイッシュな女が前方から猛ダッシュで走ってきて俺の前でピタッと止まった。
「はっ…」
あまりの女の勢いに言葉を探し、出てきた言葉は情けなくも、「ハジメマシテ」だった。
「初めまして。そいつちょっと貸してくれません?てかあんた誰」
いやいやお前が誰なんだよ、けど怖い。なんだか目がヤバい凄く鋭いけど…なんだろ、日本人離れした美人だな。
「や、やぁ、アキコ…久しぶりぃ…」
「ははー、久しぶり」
あれ、意外とちゃんと話せてるじゃないかと思ったのも束の間、女(アキコ)は突然目の前に右手を出してきて。
なんだろ、シェイクユアハンズ的なあれではない、明らかに手の平を見せてきている。いわゆる“お手!”的なあっちだ。
これはなんだ、あれか。
「3万返せジゴロ野郎」
やっぱそうきたか。
「え、えぇ…」
そして女は俺越しに潤へ手を伸ばしに掛かったので即座に退いた。
もう、女、アキコさんは潤のネクタイを引っ張って殴る勢い。
「痛い痛い痛い!」
「てめぇいままでどこほっつき歩いてたんだよ、あぁ!?」
「ちょ、ガチで、た、助けて…助けてぇ!」
潤もこんなんなるのかぁ。
なんてぼんやり思っている場合じゃない。
「ま、まぁ、ちょっとタバコでも。ね、」
取り敢えず無理矢理引き剥がして無理矢理笑顔。
アキコさんが少しばかりよろけてしまったので、「あぁ、ごめんなさい大丈夫?」と手を貸そうとすれば、「…案外良い男だねぇあんた」と、マジマジと見られてしまい、呆ける。
え、何これどんな顔すればいいの、俺。
苦しいと言いながら潤はネクタイを外したところらしい、苦しそうながらも吹き出していた。それを見たアキコは、「てめぇは笑ってんじゃねぇよ」と一喝。
「まぁまぁ、タバコ吸おう。はい、ね?」
お前が言うかよ!
アキコとハモった。二人して顔を見合わせ、無言になる。
潤が言うとおり再び喫煙所へ戻る。
アキコは、イライラしたようにポケットからタバコを取り出し、噛むように咥えてライターを擦る。3回くらい擦ってつかない。
最早擦るタイプじゃないのにすりゃぁいいのにとか思っていたら、潤が横からスッと火を出してつけてやる。
これは傍観していよう。面白そうだし面倒臭そうだし。
「おぉ、サンキュ」
「最早さ、擦るタイプ止めなよぶっ壊すんだから」
「うんそうする。でさ、3万」
「あー、返したらいいの?」
「あ?」
「はい、すんません」
この女絶対元レディースとかだと思うんだが、なんでそんなヤツがこんな、ガチガチな公安、警視庁にいらっしゃるんだ。
「返したらいいかじゃねぇよゲス野郎」
「いや、はい、まぁそうなんすけど」
「なんで出てったよ」
「いやー、それはですねアキコさん」
うわぁ、これクソ面倒なヤツだ。なんか俺これ、潤のこーゆー話昔付き合わされたことあるぞ。あの時確か…。
「あ、この人!この人と今暮らしていま」
「せん。付き合ってもいません」
「はぁ!?」
先手を打とう。
昔そのパターンでメチャクチャになったことがあった。なんなら当時の彼女と大喧嘩に発展した。
「え、ちょっ、な、流星、勘弁してよ」
「こっちが勘弁してよ。嫌だよ前回の二の舞は!」
「は?前回?」
「何ちゃんだっけ、お前がサイバーテロ課の子と別れたときだよ昔!」
「え、お前そんなサイコパスな女いたの?」
「あー、ユリちゃんかぁ。あ、あんときゴメンね。お前、彼女と破局寸前までいったもんな。どうしたよ?」
「うるせぇな今付き合ってねぇだろわかるか!?」
「あ、はーい」
ちょいちょい人の過去を漁りやがってこのクソ野郎が。
「でもそれがあって今の俺たちがあるんだなぁ、流星」
「ん?あぁまぁ…は?」
あれ、乗せられてねぇか俺。
潤は急にアキコの隣から俺の隣に移動。
逃げるように俺が、空いたアキコの隣に行ってやろうかと思ったが、腕をガッチリ捕まれてしまった。
「って訳で。ごめんなアキコ」
「は?え、は?」
「潤…」
だがアキコは予想に反し、タバコを一口吹き出すレベルでウケていた。なにそれ、どこがおもろいの。
「あーもう3万はいいわ、うん。じゃ、なんで出てったかだけ聞こうか」
「はぁ!?まだ3万の方がマシだって!返す!こいつが!だってほら、アキコから俺を奪った相手だよ!?慰謝料だよね!?」
「は?いやまず俺知らねぇんだよ。つか、つかぬことを聞きますがお宅ら元恋人でOK?」
「いや違ぇよ勘弁してよそんなジゴロクソ野郎」
「は?いや、うん、わかるよその気持ち。すっげぇわかる。じゃぁ何?」
「クソ野郎は認めるけどジゴロじゃねぇよ」
「うるさい潤黙ってマジ」
「あ?そこのアバズレはなぁ、セフレだよセフレ!」
「ジゴロじゃねぇかよ!」
「相棒な。セフレじゃねぇよ潤」
「はぁ!?」
未知との遭遇。なにこの二人。
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