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The 10th episode
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「なるほどなぁ」
あの女。
嘘こきやがって。
機捜隊の名簿を然り気無く(パソコンをジャックするという違法手段)調べるのは、潤が帰ってくるまでに出来た。
横山暁子なんてやつは存在しなかった。しかしあの女そうすると、どこの誰だ。目的はなんだ。
「部長、」
「うぉぅい!」
後ろから気配なく声を掛けられ、慌ててノートパソコンを閉じた。
見れば、先程タバコを吸っている間に出勤していた恭太が後ろに立っていた。
「どうしたんですか?悪いことしてる人みたいですね」
「いや…あまりに気配ないから」
「あ、よく言われます。部長、今月の経費、ヤバいんです」
「はぁ、どれ」
恭太が持ってきた書類を見てみた。
「げっ」
10万オーバーとか真面目に何に使ったんだよと思って見てみれば。
「ぶふぁっ、」
思わずコーヒーを吐きそうになった。大体が弾代と難航しているヤク解明の何かの薬品だ。
え?てかマジか。
「副部長がいないので部長、どうにかしてください」
「あぁ、そうですねってかあのゴリラマジでこんな高い薬品使ってんのか」
嘘吐けよ。なんだよニトログリセリンって。
ん?ニトログリセリン?
「は?なんでこんなもん使ってんだよ」
「どしたのぶちょー」
帰ってきてしまった。面倒なヤツが。
「あっ」
と言う間に背後から書類をパクられた。そして潤はマジマジと眺め、「あぁ、ニトログリセリンね」と涼しい顔をして言い出した。
「爆薬でも作ってんじゃん?」
「は?」
「てのは冗談だけどさ。
これ、狭心症の薬にも使われてんだよ、お前知らねぇのヤク中なのに」
「語弊がある言い方すんなよ。お前も大差ないよね」
「誰か狭心症でもいるんじゃねぇの。てかこれ購入日いつ?
あぁ、お前そういえば経理やったことねぇよな。
あっ、バルビツール酸とか…てかこれもしかして押収したヤツ?」
「は?」
「あー、だから死にかけたのかー、俺」
「え?」
「うわ、でも量が多いな」
「おい姫話を聞けいくらなんでもそんな無視しなくても」
「うるさい」
「はい」
なんだ、なんで俺こんな扱い受けてんだ。
「あの、監督官?」
「ん?あぁ、これあんたが持ってきたの?」
「はい。あの…」
「経費が多いって?大丈夫だよ、んなのこいつの保護者に言えば。問題は中身だな。
ちょっと確認してきていい?」
「全然ダメ。お前さ」
「なんで?お前経理出来ねぇじゃん」
「頭の中どうなってんだお前!待って説明して!」
「お前バカじゃん」
「え?お前なんなの?カオス過ぎる」
「爆薬系はわかんだろ?
それ以外はまぁ俺の方がわかるわな。バルビツール酸は睡眠薬とか…今は使われてねぇけどある国で死刑執行の時に使われたヤツだよ」
「うぇ、マジか」
「それらが経費で落とされてんだよ。でさ、薬品俺らで扱ってんのは鑑識か政宗だよな?」
「あぁ…」
どゆこと?
潤はちらっと恭太を見た。
「これさ、いつから?」
「はい、え?」
「君ずっと経理やってたよね。
どっちも仮には医薬品。しかもこの額。こんなの一気に買うなんて裏ルートくらいしかありえないよね。あとは悪い医療関係者から買い取る。まぁこれも裏ルートか。
地道に買ってったんじゃねぇかと思うんだけど、クリーンだったらな。まぁそもそもクリーンだったらなんでこんな関係ない怪しいもん買ってんだよってのは置いといてな。
購入日とかの詳細持ってきて。あと愛蘭ちゃんと慧さん呼んで」
す、すげぇ。
「早く」
「は、はい」
恭太は潤に言われ、取り敢えず急いで電話を始めた。
すると潤は耳元で、「ちなみに俺も鑑識は手伝ってるからなぁ」と、軽い調子で言い出した。
なんとなく、ぞくっとした。なんなのそのなんか吐息のかけ方。だからタラシなんだよお前。
「ちなみに二人とも見てる範囲じゃ使ってねぇよ?どっちの薬品もな」
「つまり見たところ今、疑いは一本だが…」
「あぁ。まぁ…わかるよな」
あのガキ、なに考えてやがる?
「記入ミスであって欲しいがね」
「んな馬鹿げた話」
「ねぇよな。ただナメられたもんだな」
そして然り気無く先程閉じておいたパソコンを、潤に開かれてしまった。
「お前も用心深いヤツだな」
やべぇ、気まずい。
「そうそう、俺さ、」
漸く潤は俺の隣のデスクに座り、機嫌が悪そうに両足を組んでデスクに乗せた。
あぁ、パソコン壊れたらどうしてくれるよ。経費が…。
「お前といない間の俺の経歴知らねぇだろ?まぁ野暮なことは聞かないのが一番いいけど。俺もお前の経歴なんてあの嘘臭ぇ履歴書しか知らねぇし」
「何が言いたいよ」
「まぁ答えてやろうじゃないかって。俺はお前ほど殺されるような生き方してねぇから。
スパイだよ。流星」
なんだと。
「つまり?」
「自分で考えろ。アキコはその頃の知り合いだ」
「…ふっ、なるほどな」
「だからこんなのは得意なんだよ流星。お前なんかよりはるかにな」
「…あぁそう。それを何故今話した」
「下手な同情はムカつくんだよ」
「あっそう…」
そのまま裏拳をかましてやろうとするが、当たり前ながら取られた。
あの女。
嘘こきやがって。
機捜隊の名簿を然り気無く(パソコンをジャックするという違法手段)調べるのは、潤が帰ってくるまでに出来た。
横山暁子なんてやつは存在しなかった。しかしあの女そうすると、どこの誰だ。目的はなんだ。
「部長、」
「うぉぅい!」
後ろから気配なく声を掛けられ、慌ててノートパソコンを閉じた。
見れば、先程タバコを吸っている間に出勤していた恭太が後ろに立っていた。
「どうしたんですか?悪いことしてる人みたいですね」
「いや…あまりに気配ないから」
「あ、よく言われます。部長、今月の経費、ヤバいんです」
「はぁ、どれ」
恭太が持ってきた書類を見てみた。
「げっ」
10万オーバーとか真面目に何に使ったんだよと思って見てみれば。
「ぶふぁっ、」
思わずコーヒーを吐きそうになった。大体が弾代と難航しているヤク解明の何かの薬品だ。
え?てかマジか。
「副部長がいないので部長、どうにかしてください」
「あぁ、そうですねってかあのゴリラマジでこんな高い薬品使ってんのか」
嘘吐けよ。なんだよニトログリセリンって。
ん?ニトログリセリン?
「は?なんでこんなもん使ってんだよ」
「どしたのぶちょー」
帰ってきてしまった。面倒なヤツが。
「あっ」
と言う間に背後から書類をパクられた。そして潤はマジマジと眺め、「あぁ、ニトログリセリンね」と涼しい顔をして言い出した。
「爆薬でも作ってんじゃん?」
「は?」
「てのは冗談だけどさ。
これ、狭心症の薬にも使われてんだよ、お前知らねぇのヤク中なのに」
「語弊がある言い方すんなよ。お前も大差ないよね」
「誰か狭心症でもいるんじゃねぇの。てかこれ購入日いつ?
あぁ、お前そういえば経理やったことねぇよな。
あっ、バルビツール酸とか…てかこれもしかして押収したヤツ?」
「は?」
「あー、だから死にかけたのかー、俺」
「え?」
「うわ、でも量が多いな」
「おい姫話を聞けいくらなんでもそんな無視しなくても」
「うるさい」
「はい」
なんだ、なんで俺こんな扱い受けてんだ。
「あの、監督官?」
「ん?あぁ、これあんたが持ってきたの?」
「はい。あの…」
「経費が多いって?大丈夫だよ、んなのこいつの保護者に言えば。問題は中身だな。
ちょっと確認してきていい?」
「全然ダメ。お前さ」
「なんで?お前経理出来ねぇじゃん」
「頭の中どうなってんだお前!待って説明して!」
「お前バカじゃん」
「え?お前なんなの?カオス過ぎる」
「爆薬系はわかんだろ?
それ以外はまぁ俺の方がわかるわな。バルビツール酸は睡眠薬とか…今は使われてねぇけどある国で死刑執行の時に使われたヤツだよ」
「うぇ、マジか」
「それらが経費で落とされてんだよ。でさ、薬品俺らで扱ってんのは鑑識か政宗だよな?」
「あぁ…」
どゆこと?
潤はちらっと恭太を見た。
「これさ、いつから?」
「はい、え?」
「君ずっと経理やってたよね。
どっちも仮には医薬品。しかもこの額。こんなの一気に買うなんて裏ルートくらいしかありえないよね。あとは悪い医療関係者から買い取る。まぁこれも裏ルートか。
地道に買ってったんじゃねぇかと思うんだけど、クリーンだったらな。まぁそもそもクリーンだったらなんでこんな関係ない怪しいもん買ってんだよってのは置いといてな。
購入日とかの詳細持ってきて。あと愛蘭ちゃんと慧さん呼んで」
す、すげぇ。
「早く」
「は、はい」
恭太は潤に言われ、取り敢えず急いで電話を始めた。
すると潤は耳元で、「ちなみに俺も鑑識は手伝ってるからなぁ」と、軽い調子で言い出した。
なんとなく、ぞくっとした。なんなのそのなんか吐息のかけ方。だからタラシなんだよお前。
「ちなみに二人とも見てる範囲じゃ使ってねぇよ?どっちの薬品もな」
「つまり見たところ今、疑いは一本だが…」
「あぁ。まぁ…わかるよな」
あのガキ、なに考えてやがる?
「記入ミスであって欲しいがね」
「んな馬鹿げた話」
「ねぇよな。ただナメられたもんだな」
そして然り気無く先程閉じておいたパソコンを、潤に開かれてしまった。
「お前も用心深いヤツだな」
やべぇ、気まずい。
「そうそう、俺さ、」
漸く潤は俺の隣のデスクに座り、機嫌が悪そうに両足を組んでデスクに乗せた。
あぁ、パソコン壊れたらどうしてくれるよ。経費が…。
「お前といない間の俺の経歴知らねぇだろ?まぁ野暮なことは聞かないのが一番いいけど。俺もお前の経歴なんてあの嘘臭ぇ履歴書しか知らねぇし」
「何が言いたいよ」
「まぁ答えてやろうじゃないかって。俺はお前ほど殺されるような生き方してねぇから。
スパイだよ。流星」
なんだと。
「つまり?」
「自分で考えろ。アキコはその頃の知り合いだ」
「…ふっ、なるほどな」
「だからこんなのは得意なんだよ流星。お前なんかよりはるかにな」
「…あぁそう。それを何故今話した」
「下手な同情はムカつくんだよ」
「あっそう…」
そのまま裏拳をかましてやろうとするが、当たり前ながら取られた。
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