ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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The 15th episode

2

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「えぇぇぇ」

 久しぶりに会った戦友、化け物スナイパーユミルは、部署に来るなり絶句した。

無理もない。

「何でェ!?久しぶりに来てそれかよ!」
「悪いな」

 部署は大忙し。
 何故なら本日から部署移動、有楽町にあった警視庁から、同じ有楽町ではあるが、厚労省に場所移動になってしまったからだ。

というのも。

“国勢調査結果報告にて
本件(捜査員の自殺行為について)見聞した結果、その他捜査員の責任については、捜査部長壽美田流星の以下の処罰を下すものとする。
以下略。
在籍人数は警視庁勤務が多いという理由で警視庁の空き部屋を使用していた現状として、しかし本件に関しては警視庁の管轄捜査員の死亡、更に部長、副部長、そして捜査権は厚労省麻薬取締部まやくとりしまりぶにあったものとして、しかるべき部署への移動を命じる”

 とのこと。ちなみに俺の処分とは「警視庁への当分の捜査立ち退き」だそうだ。

 この程度で済んだならまだいい。しかしながら何故この程度なのか、はたまた警視庁への捜査とは一体なんだというんだか。

あれかな、5課と一瞬繋がって會澤組を潰したやつだろうか。はたまた警視庁官暗殺だろうか。それくらいしか覚えがない。
 いずれにせよ俺は警視庁に大変嫌われたご様子だ。これでは下手すりゃ“ぶちょー権限”で捜査資料を俺がかっぱらってくるのが難しくなった。

だがしかし。

 これは恐らく、祥真が作成した調査結果の元下された判断なのだろうが、どうも、あいつにしては甘すぎる。
 まず政宗が厚労省在籍設定であること。
 何より潤が警視庁官暗殺に関わっているかもしれないこと、これがスルーされている。
 本当にこれが祥真の調査結果だというなら恐らくこれには裏がある。潤に関して全く言及や接触がないのも納得がいかない。

 一体警視庁長官は何を握っていたのか。横溝暁子は何故、誰に暗殺されたのか、俺たちに、なんの関連があったのか。

「てかユミル、お前明日からガッツリ特本部配属な」
「あぁらしいね。なんか一人死んだって外の人たちが言ってた」
「外の人たち?」
「うん」

 金髪の癖のある前髪から覗く蒼眼がつまらなそうなのから一変、子供のようなにやっとした笑顔で笑った。

「リュウ、やらかしたな」
「あぁ、まぁ」

 横から政宗が段ボールを一つユミルに追加した。「ちょっと折れちゃうよマサムネ!」と抗議をするも、「大丈夫、日本の段ボールは怪物に優しいから」と返答。部署の連中が皆静かに吹き出したのが聞こえた。

「で、外の人たちって?」
「え?外だよ外。なんかマイク持った人。
 『貴方は警視庁の方デスカ?』ってなんか3人くらいに囲まれたから、『事務所通さナイとちょっとねー』って言ったら『事務所どこデスカ?』って聞かれて、ここの名前忘れちゃったから『ケリー刑務所』って言ったらみんななんか違う警官捕まえてカメラ回してたヨ。
 それに聞き耳たててたら、なんかここで自殺あったとか言っててあぁ!流星かって」
「待て待て待て待て」

色々つっこみたいところしかないがまず。

「ユミル、それはマジネタかい?」
「え?うん。見てみれバ」
「待った、みんな引き返してくださーい!いま出てったらみんな全国的に有名人でーす」

 踵を返すが、

「え、ナニソレ面白い僕行く」
「ダメだよバカ‼お前…」
「多分一度射殺されてみないとわからないかもな、ユミルは」
「だって俺こう言っちゃなんだけどカッコ良いじゃん」

 それには誰一人答えず皆一度部署へ路線変更。引っ越しは後回しとなった。
 それを見たユミルは渋々最後についてきた。

本気で厄介者が増えてしまった。

「…取り敢えず、射撃場に行きますか。ユミル、今日は許すよコルトもルガーも」
「バレットは?」
「んな特殊部隊用のスナイパーライフルよく税関通ったなてめぇ」
「いや米軍基地に」
「ダメだよ道徳!スピリチュアル!OK!?」
「ケチ!殺すヨ?」
「望むところだ。あぁそういやシベリアでのカジノ勝負まだケリついて」
「二人ともいい加減にしろ、ひねり潰すからな」

 笑顔で政宗に言われて終息。怪物も俺も、ゴリラには敵わない。

「取り敢えずどうするか」
「うーん、裏口?」
「いっそのこと本気で千種ちくささんにインタビュー、お願いしちゃうってどうです?」

 そう言ったのは慧さんだった。

「と、申しますと?」
「千種さん、まぁこれから正式メンバーになるとしても、公じゃないんですよね?
現状把握もあまりしてないしインタビューなんてあんまり答えられない、そして、公メンバーじゃないなら顔出ちゃっても暗殺とか、ありえないでしょう?」
「まぁ確かにユミルを殺そうなんて度胸があるやつ、俺と祥真くらいかもしれませんけど」
「ショウは…」
「ん?」

 意味ありげな表情でユミルは俺を真っ直ぐ見据えた。そして聞くのはひとつ。

「いまあいつはどこにいる?」

大体、毎回これだ。

「日本だよ」
「へぇ…じゃぁ遠からず、僕らはもう一戦あるネ」
「…は?」

なにそれ。

「リュウ、答えたってことは会ったんだよネ」
「会ったよ、てか多分この激甘な国勢調査表の送り主は祥真だろうな」
「ふぅん。
パスポートある?流星」
「は?」

 こいつはさっきから何を言ってるんだ。

「いつか、タカダさんが言ったこと覚えてる?俺ら、そう。墓場は一緒だって」
「…まぁ」
「まぁいまはいいよ。ここで話すことでもない。
 僕はまぁ確かにテレビに出てもいーヨ。死んだらリュウ、君の責任だ」
「それってどういうことだよ」
「俺は特定のパートナーを作らない。君はそれをわかってるね。だから俺を、全国のその組織のやつで知らないやつはいない。
 だから断言すると君は戦闘能力、政宗は観察能力、潤ちゃんはスパイ能力とサポート能力、祥真は暗殺能力に長けている。言いたいことわかる?」

それってつまり。

「お前はお前でネタを掴んだのか」
「さぁ何がどう繋がるかは皆目見当がつかない。ただ流星、君は人を信用しすぎじゃないか?」

 あぁこれ。
 たまに見せるユミルの真剣なときの、困ったような表情、首を少し傾げるオーバーリアクション。これのときの、無意識に癖をやるときのユミルはわりとガチだ。
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