ノスタルジック・エゴイスト

The 16th episode

5

「つかその副部長美人？」
「あぁまぁ、そうですね」
「へえ。うちのゴリラと違うのね。俺そっちがよかった流星」
「バカ野郎尚更ダメだわ」
「なんでだよいーじゃんちょっとくらい」
「腹の傷開いて死んだらいいよお前」

　何口か吸って漸く浸透。ヤニクラなのか潤は眉間に皺を寄せながら横に浅くタバコをくわえて忙しなく何口も吸ってる。
　それってホントに摂取出来てんのか？しかし何口目かわからないところで漸く穏やかに、深呼吸するかのように摂取していた。

「あ、つかこれ…」

　吸い口が茶色だ。どうやら洋モクらしい。
普通もっと早くに気付くだろ。

「これあんま美味しくない…」

　そう言うわりにはなんだか嬉しそうだが、やはり顔をしかめている。

「けどたまにはいいねロシアン」
「それ、なに？」
「なんだっけ次元じげんのやつ」
「あぁ、あれかあの…赤いやつ」

あれ、誰か吸ってた気がするんだが誰だったっけな。

「あーなんかたまに違うタバコ吸うとこうキメた感が」
「不謹慎過ぎるよ流石にぶちょー権限でキレる」
「てかあんたはなんかなにそれ。如何にもなんかヤバそうだなそれは銘柄はなんだい虹色ですけど」
「マルボロ・ダブル・バースト・アンバー・5です」

　思わず潤とハモって「は？」と言ってしまった。

「マルボロですよマルボロ」
「どう考えてもそのあと長かったよ」
「あれです。かちってやつが2つあるタイプ」
「待って俺がついていけない逮捕していい？」
「いやキメてない、むしろ5ミリ。壽美田さんのがだいぶキメてるから」
「じゃ逮捕しよう。お宅の案件でいーよ」
「待ったそれで流すなよくわかんねぇっつってんだよJTどうなってんだよ」
「…めんどくさいっすね。一本どうぞ。俺あんま吸わないんで」

　ついでに吸い方まで教えてくれた。
　なんでもフィルターを二回噛めばいいらしい。あとは正直よくわからなかった。

「俺も俺も」とか言って潤がそれを吸おうとしたので流石に「バカ行くぞいい加減」と制した。

今からぶっ殺す系だというのに大丈夫だろうかこんな緊張感なくて。先行きが不安で仕方ない。

　取り敢えずはnew特本部部署に戻ると、諒斗があろうことかデスクに座って瞬と楽しそうに話している。
　瞬も慣れたように、愛想笑いともつかないような相槌を打っていて。ユミルも話に参加しているように見えた。マトリの吉川くんも相槌係になっていた。

なんだかこの感じ。
特テロ部の俺と潤、多分あんなんだったなとふと思った。

　愛蘭がふと俺を見て、「早坂くん」と制するように言った。

「あ、部長、」

　愛蘭に言われて諒斗が慌てたようにデスクから降りる。あぁ、潤があんなんだった。

「ふっ、」

　笑ってしまった。

「嬉しそうだねリュウ」
「確かに気持ち悪いくらいに鉄面皮決壊やん」
「いや、お前あんなんだったよなと思ってな。
　他の連中はもう政宗が連れてったのか」
「あぁ、はい…」
「なんだよ、唖然としやがって。
　愛蘭は医療大の情報係みたいなもんか？」
「はい」
「じゃぁ、瞬。君が伝達も兼ねて愛蘭ちゃんと連絡取り合ってね」
「…え、あ、はい」

　潤がなんだかにやにやしている。
なんだ気持ち悪いな。

「…潤ちゃんこんなときだけ優しいね」
「まぁね」
「…よくわかんないからまあいいや。
　医療大の資料はいま、吉川くん？愛蘭？」
「私が吉川さんから預かりました。お二人もどうぞ」

　手渡され、潤と共に資料をざっと見ていく。

「この大学は外科寄りだな」
「なにそれ」
「ほら、帝都は新薬開発寄りだっただろ？学科もなんていうか科学系だったしなんかがっつりネズミに薬打って研究みたいな。
でもこっちは医療大っていうわりになんだろ、解剖だの人体科学だの。
　あぁ、こっちの資料見ると手術とか請け負ってんのね。なるほど。帝都病院ってそーゆー分け方なのか」
「…俺わりと今回ビンゴってる？」
「かもな。
　マトリさんが多分外したなこれ。マトリさんと合同捜査した方が早くね？てかこれは愛蘭ちゃん。君の出番だね早速。
　流星のハンコあるからあとで…そうだなぁ、こっちが潜入した中盤に間に合うくらいで帝都に逮捕礼状下ろしといて」
「え？」
「タイミングをミスればこれは副部長死ぬな。あくまで俺の読みだが流星、これは」
「…なるほどね。急ぐか。
　マトリはあくまで俺たちには、副部長捜索を依頼したという体でいこうか。副部長救出の時点でマトリが副部長の件を押し出して捜査礼状を取る。この手順でいこう。これで必然的にまぁなんと言うか合同捜査だな。
　監禁場所が恐らく医療大。そして帝都と医療大にはなにかしら繋がりがあると…。」
「つまり？」

　辻井が訪ね、吉川も疑問符だ。まぁ、そりゃぁそうだろう。