ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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The 20th episode

7

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 それから自然と髪を撫でられるのが少し、悲しい。なんとなく。

「一人部下が死ぬのは、やっぱ悲しいもんだよ。君の上司だって、あそこで君が死んだら、多分悲しいんだよ」
「どうかな…」

まぁガチギレするだろうな。なんならあの世までぶん殴りに来そうだ。

「俺だって最高の友人は亡くしたくないしね」
「うん…やっぱ、」

なんなんだろう。

「生きているうちしか結局人はこうしていることが出来ないんだよ。後に残すことですら、いつか薄れちゃうしね」
「うん」
「まぁ言うて俺も」
「うん、ホントそれ」
「じゃ、痛み分けにしとこうか」

なるほどね。

 そのまま手は離れ、俺の目の前にあった利き手を甲から握られる。穏やかに祥ちゃんは「さて、寝ようか」と言った。

『手の掛かる子ですね、潤は』

 何故か嬉しそうに言った雨さんを思い出す。あれは雨さんに引き取られてすぐだった。俺が、色々なフラッシュバックやらで不眠気味だったころ、こうして手を握って一緒に寝てくれた。
 人と手ひとつ触れ合うだけでこんなにも生きた心地がするんだと知ったんだ。ただ彼の過保護さのせいで、今や人肌がなければ眠れない。

いや、前からか。幼い頃は嫌悪しかなかったのに。両親の鼓動やら生々しさに何度吐いたことか。

いまだってまぁ、潔癖だと言われるけど。俺って案外めんどくさいよなぁ、自分でそう思う。他者を受け入れるようで、どこか受け入れられない。多分、自分のこともそうだからだろう。

 それから『手の掛かる子』これは正直初めてのワードで、新鮮だった。
まぁ、嬉しかった。

「…手の掛かる奴かな、俺」
「え、今更?」

まぁ確かに。

「いや、なんでもないや」
「手の掛かる子ほど可愛いって言うよね、日本じゃ」
「ん?」

あぁ。
それもなるほど。

「あ、そうねぇ」
「生きた心地がするんだろうね。他者の面倒を掛けるのは」
「そうかもね」
「自分で言っちゃって全く潤ったら」
「半分は祥ちゃんが言ったんだよ」
「あぁ、そうでした」

 目を閉じてみる。
 祥ちゃんが笑ってるのが空気でわかる。

「おやすみ、良い夢を」

 聞き慣れた子守り文句に、頷いて返答。電気が消える音がする。

生命の渇望、確かに利害が一致している。あの人とも、祥ちゃんとも。

人は何故、そんなことに執着をするのか、多分簡単なんだが、難しい。

 良い夢見れそう、今日は。
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