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The 22nd episode
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胃が痛いな…。
脈拍も漸く戻った気はするが正直そのせいか火照っている。鼻血レベルだ。
トイレについて鏡見た瞬間吐き気がした。ひでぇ、顔面真っ白。てか真っ青。個室で吐こうにも胃液しかでなくて断念。非常にムカムカ。落ち着いてから立ち上がれば軽く立ち眩み。
俺潔癖だわ。それに気付いたらやっぱり洗面台すら吐き気の原因。あぁやだわと最早自販機で茶を買い給湯室に行って落ち着く。
あぁ具合悪いなと思えば「ダイジョブっすか」と、軽い口調で聞かれた。
マトリの前髪野郎だった。
「…あぁ、別に」
「血相変えてトイレから出てきたの見えたんでつけてきたんですけど」
なにそれキモい。
「キモいなお前」
「はぁ、いや心配したんですが」
「あっそ、暇かよ」
「暇じゃないですよお宅よりは」
うるさいなぁ。
イラッとしたので取り敢えず持参している歯磨きで歯を磨く(確かラブホのアメニティ)。
前髪がそれに2度見したので「なんだよ」とモゴモゴ返す。
「女子力高っいのか…それ」
「ゲロ吐いてましたけど」
「あそっか、え、なによくあんたわかんないわ」
自分でも思うわ。
歯磨きを続けていれば「変な人」と言いつつ、なんか純粋に前髪は笑った。
口を茶で濯いでそのペットボトルは捨てる。前髪がにやにやしてんのがうざったいので、
「潔癖なんだようるせぇな。便所の手洗い場とか見ると気持ち悪いんだよ」
「へぇ、部署から気分悪そうでしたけど」
「なっ、」
部署からついてきたのかこいつ。
気持ち悪い、なに、なんのつもり?
「え、お前さ、気持ち悪いって言われない?」
「言われませんよ、あんまやりませんから」
「あ、そうか。
いや、じゃあ何故?」
俺にしつこいわけ?お前多分ゲイだから?
「興味があるからですね」
「うわぁ、しれっと言ったなマトリゲイ寄り」
「そのあだ名どうかと思いますよ。別に違いますから」
あそうかい。
「ま、具合悪いんじゃあれか。タバコ行きません?って誘おうかと思ったんですが」
「別に良いけどお前友達いないのか」
「いませんねぇ。仕事一筋なんで」
嘘吐いてんじゃねぇよ気持ち悪ぃな。
「あーもうネクタイだらしないなあんた」
そう言うと前髪はふいに俺のネクタイに手をかけようと伸ばしてきたので。
反射的に「勘弁して」と後ずさり、目をきつく閉じた自分に気付いた。
あぁあ、癖だなこりゃ。
前髪は唖然としていた。
そりゃそうだ。てか、状況を考えたら捉えようによっては俺、自意識過剰じゃんか。
「…参ったな、別にだから違うっつーの」
「いやごめんわかる。ちょっと癖。だから悪いけど俺にその…二度と手をやらないで」
「はぁ?」
殴られそうでビビるんだよ、顔付近が特に。これは昔の親父のせいで、いま情緒不安定だからよりクるんだよ。
「ふっ、なんか、」
しかし、前髪は何故か爆笑した。
なんだよクソめ。
ネクタイは最早自分で外した。
「あんた可愛いなおい。小動物かよ。現場と大違いだな」
「は?」
わかんね。マトリゲイ寄りわかんね。
色々お前ズレてないかマジで。なんか最早、すげえ新種の蛾とか見つけた時のあの心境なんすけど、今の俺。
しかし前髪、「じゃタバコ行きましょ」とか言って先に給湯室を出てくもんだから。
「いや待っ…」
普通さ。
先輩より先になんか出てこうとか、お前やっぱ常識ねぇなマジ。20代でも男社会にいたらわかれよ。
追いかける形になって給湯室を出れば、前髪は廊下の自販機で茶と紅茶を買っていた。
茶はくれた。
特に礼は言わない。しかし気にせずに前髪はやっぱり前を歩くのでそのままポケットから薬を出して茶で流し込んだ。
小分け、2錠目がなくなりPTPシートがゴミとなった。ポケットに戻す。
それをちらっと振り返って見られれば、なんだかバツが悪い。
「なに」
無愛想に返すしか俺には出来ないが、視線をズラしたら掌が視界に飛び込んだ。
前髪の顔を見れば「ゴミ、」と言われたので「は?」と一瞬殺伐とした。
いやなに突然の悪口。
しかし前髪は「ふっ、」と笑い、
「いや飲み終わったんでしょ。ポケットになんでも入れるのよくないっすよ」
あぁ。
え?
「ほら丁度そこにゴミ箱あるし」
「はぁ、」
いや、
「そんくらい捨てられるわっ!」
ポケットに確かに手を突っ込んでちょっと握って手わすらしてたから、その指摘は妙に嫌。確かによくポケットに薬の残骸溜めるし。
俺がゴミを自分で目の前のゴミ箱に捨てに行けば、また前髪は笑い、「あんた、猫みたいなやつだね」と言った。
「は?」
「気紛れ、でも潔癖症、なかなかなつかない」
「はぁ、」
言われたことあるわ、誰かにそう言えば。
「こってり絞られた系っすか、今回」
しかし話題変換。
読めない、こいつ絶対Aの血液型の相性合わないやつだ。
脈拍も漸く戻った気はするが正直そのせいか火照っている。鼻血レベルだ。
トイレについて鏡見た瞬間吐き気がした。ひでぇ、顔面真っ白。てか真っ青。個室で吐こうにも胃液しかでなくて断念。非常にムカムカ。落ち着いてから立ち上がれば軽く立ち眩み。
俺潔癖だわ。それに気付いたらやっぱり洗面台すら吐き気の原因。あぁやだわと最早自販機で茶を買い給湯室に行って落ち着く。
あぁ具合悪いなと思えば「ダイジョブっすか」と、軽い口調で聞かれた。
マトリの前髪野郎だった。
「…あぁ、別に」
「血相変えてトイレから出てきたの見えたんでつけてきたんですけど」
なにそれキモい。
「キモいなお前」
「はぁ、いや心配したんですが」
「あっそ、暇かよ」
「暇じゃないですよお宅よりは」
うるさいなぁ。
イラッとしたので取り敢えず持参している歯磨きで歯を磨く(確かラブホのアメニティ)。
前髪がそれに2度見したので「なんだよ」とモゴモゴ返す。
「女子力高っいのか…それ」
「ゲロ吐いてましたけど」
「あそっか、え、なによくあんたわかんないわ」
自分でも思うわ。
歯磨きを続けていれば「変な人」と言いつつ、なんか純粋に前髪は笑った。
口を茶で濯いでそのペットボトルは捨てる。前髪がにやにやしてんのがうざったいので、
「潔癖なんだようるせぇな。便所の手洗い場とか見ると気持ち悪いんだよ」
「へぇ、部署から気分悪そうでしたけど」
「なっ、」
部署からついてきたのかこいつ。
気持ち悪い、なに、なんのつもり?
「え、お前さ、気持ち悪いって言われない?」
「言われませんよ、あんまやりませんから」
「あ、そうか。
いや、じゃあ何故?」
俺にしつこいわけ?お前多分ゲイだから?
「興味があるからですね」
「うわぁ、しれっと言ったなマトリゲイ寄り」
「そのあだ名どうかと思いますよ。別に違いますから」
あそうかい。
「ま、具合悪いんじゃあれか。タバコ行きません?って誘おうかと思ったんですが」
「別に良いけどお前友達いないのか」
「いませんねぇ。仕事一筋なんで」
嘘吐いてんじゃねぇよ気持ち悪ぃな。
「あーもうネクタイだらしないなあんた」
そう言うと前髪はふいに俺のネクタイに手をかけようと伸ばしてきたので。
反射的に「勘弁して」と後ずさり、目をきつく閉じた自分に気付いた。
あぁあ、癖だなこりゃ。
前髪は唖然としていた。
そりゃそうだ。てか、状況を考えたら捉えようによっては俺、自意識過剰じゃんか。
「…参ったな、別にだから違うっつーの」
「いやごめんわかる。ちょっと癖。だから悪いけど俺にその…二度と手をやらないで」
「はぁ?」
殴られそうでビビるんだよ、顔付近が特に。これは昔の親父のせいで、いま情緒不安定だからよりクるんだよ。
「ふっ、なんか、」
しかし、前髪は何故か爆笑した。
なんだよクソめ。
ネクタイは最早自分で外した。
「あんた可愛いなおい。小動物かよ。現場と大違いだな」
「は?」
わかんね。マトリゲイ寄りわかんね。
色々お前ズレてないかマジで。なんか最早、すげえ新種の蛾とか見つけた時のあの心境なんすけど、今の俺。
しかし前髪、「じゃタバコ行きましょ」とか言って先に給湯室を出てくもんだから。
「いや待っ…」
普通さ。
先輩より先になんか出てこうとか、お前やっぱ常識ねぇなマジ。20代でも男社会にいたらわかれよ。
追いかける形になって給湯室を出れば、前髪は廊下の自販機で茶と紅茶を買っていた。
茶はくれた。
特に礼は言わない。しかし気にせずに前髪はやっぱり前を歩くのでそのままポケットから薬を出して茶で流し込んだ。
小分け、2錠目がなくなりPTPシートがゴミとなった。ポケットに戻す。
それをちらっと振り返って見られれば、なんだかバツが悪い。
「なに」
無愛想に返すしか俺には出来ないが、視線をズラしたら掌が視界に飛び込んだ。
前髪の顔を見れば「ゴミ、」と言われたので「は?」と一瞬殺伐とした。
いやなに突然の悪口。
しかし前髪は「ふっ、」と笑い、
「いや飲み終わったんでしょ。ポケットになんでも入れるのよくないっすよ」
あぁ。
え?
「ほら丁度そこにゴミ箱あるし」
「はぁ、」
いや、
「そんくらい捨てられるわっ!」
ポケットに確かに手を突っ込んでちょっと握って手わすらしてたから、その指摘は妙に嫌。確かによくポケットに薬の残骸溜めるし。
俺がゴミを自分で目の前のゴミ箱に捨てに行けば、また前髪は笑い、「あんた、猫みたいなやつだね」と言った。
「は?」
「気紛れ、でも潔癖症、なかなかなつかない」
「はぁ、」
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