ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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The 30th episode

7

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「ねー潤ちゃん」
「あんた何を言っちゃってるの」
「そーんなボスになんて「無様だな死んでこいよ使えねぇ」なんて言わせるわけないだろ。俺のマウント取っちゃう潤ちゃんならわかってくれる?」
「うわっ」 

えげつねぇ。

「はっ!?
ちょっと待てよどんだけ根に持って」
「大丈夫だよ義父に気に入られりゃぁ一生安泰だよ潤ちゃん」
「ん?」

 明らかについていけてないな潤。祥真、その隠語モードは俺とかユミルとか、死に際最前線にしかわからないと思うけど。

「だからー、もう温室なんだから君ったら。
 君の今のフリーダム感は死に際最前線って言ってんだけど。それにはボスが必要でしょ?ラットなんかよりキャットの方が強いんだよ?」
「なにそれ」
「あー、高田とケリーの隠語悪口だよ」

 最早通訳必要だよおい。

「そうそう。俺たちのボス、ホントにアホみたいに仲悪いんだよー」
「マジかっ」

だよな。

「えちょっと待って俺日本で威張り腐ってた官僚の息子だから、いや言うて防衛省だけどホントに英語わかんねぇけど」
「ポロっと身分出したね潤」
「いやそれはいいんだよこいつら多分知ってっから。え?なにそれ俺反社会的じゃね?」
「日本は平和だからね~」

 今度は政宗が「俺も大分だいぶ着いていけてねぇよ」とぼやく。
 なるほど潤、防衛大臣の倅だったのか。星川なんて名前のやつ、いたのか。

「…お前らいつもこんな感じなの?」
「わりとそうだよ」

 当たり前だけどこんな祥真と潤、初めて見たわ。意外と似てないのな。ちょっとお前らは同類だと思ってたんだけど、俺。

「うっわー、なんか俺的に前流星が言ってた「隠語的な会話」が今すげぇ浸透したわ。お前らマジで性格悪いな」

 意外にも政宗の方がわかったらしい。
そういやそんな話したな。

「はいはいはーい。わかったところで一回黙ってねー。潤、ケータイ取ってくれる?」

 唖然とした潤からケータイを受け取った祥真は、左手でケータイを弄りながら「やりにくいなぁ」とぼやく。

「俺電波で殺される覚悟、
ふう、」

 一息吐いてから祥真はケータイを耳に当てた。再び戦闘モードの視線。

「Fuck Kelly, What's up?(どうもケリー、元気?)」

 そこでさらっとheyとかhelloじゃないあたりお前らマジで仲悪っ。

「Suddenly,
I will return with my bride.It seems to be my arm. 
(突然なんだけどー、嫁さんと帰るわー、俺の片腕になってくれるってよ)
Silly brother say, 「Seems to be narrow and die in Japan」,I will come back with you.
(バカ兄貴も「日本寒くて死ぬ~」とか言ってるから連れてくわ)
How about souvenirs at the neck of a mad dog?(お土産に狂犬の雁首も添えてね♪)
Huh?(はぁん?)
Just please,Prepare a congratulation.
I’m fuckin’ outta here,You pervert!
(いいから祝言の準備しとけよ。
じゃあな、エロジジイ!)」

 切った。
 祥真は始終にこやかな好青年のように滑らかに言ったせいか、「わかんねぇけど案外怖くなさそうだね」とほっとしたように潤は言った。

こちらとしては本気でこの親子と対面したくねえよという感じなんですけど。

 「Seems to be narrow and die in Japan(日本は狭くて死んでんなぁ)」に凄く祥真を感じたがきっとこの場では俺と祥真しかわかってないだろう、ヤダヤダ。なんだかんだ仲良いなお宅ら。

「ふぅ~、
てめぇ何言ってんだ帰って来たらぶっ殺すぞとか言われたわ。ケリーにアサルト向けたら止めてよね流星」
「話振んなよマジ勘弁して」
「ん?」
「え、そんな感じだったのか今」

そうだよ~。この男は相当キテるよ~。お陰で俺がキレたのホントにどっか行ったよ~。

「まぁ高田と流星ほどじゃないよねぇ?
 ガチギレだね流星。でも高田なんて捨てるとか前代未聞だね。
 枕営業でケリーに囲われるくらいの覚悟しろよな」
「うわぁ…マジでありそう…。
 取り敢えずまぁ潤。可哀想だけどお前指一本亡くす気でな」
「なにそれ言葉わかんないだけにマジでありそうじゃん、え?ホントにそんなヤクザみたいな」
「スナイパーだよマジな!俺すら鳥肌だよ!」
「うっそヤダなんの話か全然わかりたくねぇけど」
「あー、そこは手土産のユミルとハイパーたらしの潤ちゃんに掛けるしかないね。 
 潤、マジでニコニコだけしててね。軽く俺の腕マジもんでなくなるから」
「それ聞いて先輩、俺、どうしたら」 
「取り敢えずみんな謹慎という名の休暇を与えますので自由にヤバ気身辺を漁っといてください」

 「休暇じゃねぇ」と言う政宗と「休暇いらねえっ!」と騒ぐ潤と。俺は「おい祥真」と、然り気無く二人に背を向けるように祥真の肩を掴む。

「お前マジで大丈夫か」
「…さぁ。まぁなんだかんだ大丈夫でしょ。端から腕一本てめえらにやってんだから」

うわあ。
紳士スマイル。
予想以上にダメージだった、そして根に持ってるらしいな。

「…責任取って生きて日本に返してよねリーダー。
 最悪隠蔽ってことで君の彼女の墓くらい、建ててくれるよ、ケリーは。君と違って」

まぁ…。
そっか。

「…わかったよ」

仕方ねえな。

 それから俺は病室を一人出て、ユミルと祥真の退院手続きと環の帰還手続きを済ませることにした。
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