348 / 376
The 33rd episode
6
しおりを挟む
「ごめんなさいホントにごめんなさい、」
「…は?」
政宗の力は抜けたようで、だけどもうこの恐怖は政宗のものではないとわかっているけど、腕で身を守るように顔を隠す自分が忌々しい。
てか息吸えねぇし
涙腺どうしたんよ、俺。
急に軽くなり「おい潤、」と、次は流星の声が近いし腹に優しめに手を当てられたのもわかり、腕を退ければ落ち着いているが焦りは見える表情の流星が、肩を掴んで「大丈夫か、」と言った。
途端に本当に息苦しいもんだとより過呼吸になる。これは戻れなければ痙攣する。
どうやら、政宗は尻餅ついてる。流星が引き離したようだった。
「副部長、やりすぎですって」と、向こうは向こうで声がしていた、多分年長者の慧さんだ。流星は流星で「こんな状況で悪いけど皆休憩!」と言い放つ。
「いや、部長、」
「と、取り敢えずお水なんですかこれっ!」
「包帯?」
「ありがたいけど今声かけないでくれるか、」
後輩たちを制するそれも申し訳なくて起き上がろうとするが「起きんなクズ、」と言われた。
「いっ、」
「舌噛むぞ、今は無理に呼吸しろバカ、」
「はっ、」
なんだ。
急激に安心するのがわかった。呼吸をするのを思い出す。
すぐになんとか思い出した。何より安心材料だったのが、あの流星が、寂しそうな、けど意思は見える目で見てくれたからかもしれない。
流星だって過去も、祥ちゃんも、そして皆を知っている。だから誰よりも多分、不安で怒っているくせに、そんな表情が見れてよかったなんて、虫がよすぎるけど。
「…ごめっ、」
咳き込んだ。
振り向いて政宗を見る前に「うるさい死ね」と言われた。腕に抱かれたままだったがそのままいきなり手を離しやがるので見事に頭を打った。
「痛ぇ」
「言わせておけば腹立つな先輩、」
あっ。
「…りゅ、」
「悪かったなポンコツ営業クソ経理部長で。調子に乗んなよ、俺がどんな気持ちであのクソ野郎からずっと背負ってやってきたと思ってんだよ、大体俺たちの教育係じゃねぇかよおい、いま俺が止めに入らなかったらこの腑抜け温室クソ淫乱野郎は一生不能になったぞおい、」
「…腹立つけど確かにそうだなこのクソガキ」
「どうでもいいけど。どうせ皆死なねぇから。過去に拘ってんのは皆一緒だから歩むしかないんじゃないんですかぁ?センパイ。あんたが…歩いてきちまったように俺もこいつも祥真も皆歩いてきちまってんだから潤、てめえ祥真はどこ行ったんだよ」
「…ごめんっ、」
「はぁ、呆れる。けど俺にも呆れてる。頭冷やしに警視庁行って来るマジで。
慧さんすみませんありがとうございます。その先輩もこのバカ野郎もほっといても勝手に仕事するんで、慧さんもすみませんが休憩してください」
なっ、
「まぁ…そうすることにします。皆にはきっと二人がなんとか言ってくれますよね?」
えっ。
「…すみませんでした」
マジか。
政宗すら謝罪したわ。わかるわ、俺も謝っとこ。
「慧さん…、すんませんでした…」
「いや、まぁいいです。大丈夫ですか監督官」
監督官…。
「はい、その…」
「まぁ持病お持ちでしたよね。無理はしない方がいいですよ、若いんだから。サボらしてはくれないらしいですけど」
「…はい、まぁ…」
「で、部長。警視庁のどちらへ?」
「…まぁ一課と五課あたりですかね…武宮さんも五十嵐さんもキレそうですけど」
「本当にそれだけですね?」
「…まずは、です。あとは帰って来て部下の仕事具合で。
…部長が失踪するパターンは洒落にならないので」
あぁ…。
「潤、」
「あ、はい」
「…祥真に関しては今は後だ。お前の書類の進み具合に任せる。無駄だろうが俺からも連絡は取る、これでいいか?」
あぁ、確かに流星なら…。
「あぁ…」
うんと言えなかったが振り向いた流星に俺は笑えたかもしれない。
「悪いな、ありがと」
照れ臭そうに「ん、はい」と言い残して去って行く流星と、見守るような柔らかい表情の慧さんも去る。
政宗と目が合ったから、手の甲で拭って舐めて見せてやった。「しょっぱいな」と言えば漸く政宗は笑い、「淫乱」と悪口を言う。
こんな環境を祥ちゃんも知っていたら、よかったのになぁ。
「…は?」
政宗の力は抜けたようで、だけどもうこの恐怖は政宗のものではないとわかっているけど、腕で身を守るように顔を隠す自分が忌々しい。
てか息吸えねぇし
涙腺どうしたんよ、俺。
急に軽くなり「おい潤、」と、次は流星の声が近いし腹に優しめに手を当てられたのもわかり、腕を退ければ落ち着いているが焦りは見える表情の流星が、肩を掴んで「大丈夫か、」と言った。
途端に本当に息苦しいもんだとより過呼吸になる。これは戻れなければ痙攣する。
どうやら、政宗は尻餅ついてる。流星が引き離したようだった。
「副部長、やりすぎですって」と、向こうは向こうで声がしていた、多分年長者の慧さんだ。流星は流星で「こんな状況で悪いけど皆休憩!」と言い放つ。
「いや、部長、」
「と、取り敢えずお水なんですかこれっ!」
「包帯?」
「ありがたいけど今声かけないでくれるか、」
後輩たちを制するそれも申し訳なくて起き上がろうとするが「起きんなクズ、」と言われた。
「いっ、」
「舌噛むぞ、今は無理に呼吸しろバカ、」
「はっ、」
なんだ。
急激に安心するのがわかった。呼吸をするのを思い出す。
すぐになんとか思い出した。何より安心材料だったのが、あの流星が、寂しそうな、けど意思は見える目で見てくれたからかもしれない。
流星だって過去も、祥ちゃんも、そして皆を知っている。だから誰よりも多分、不安で怒っているくせに、そんな表情が見れてよかったなんて、虫がよすぎるけど。
「…ごめっ、」
咳き込んだ。
振り向いて政宗を見る前に「うるさい死ね」と言われた。腕に抱かれたままだったがそのままいきなり手を離しやがるので見事に頭を打った。
「痛ぇ」
「言わせておけば腹立つな先輩、」
あっ。
「…りゅ、」
「悪かったなポンコツ営業クソ経理部長で。調子に乗んなよ、俺がどんな気持ちであのクソ野郎からずっと背負ってやってきたと思ってんだよ、大体俺たちの教育係じゃねぇかよおい、いま俺が止めに入らなかったらこの腑抜け温室クソ淫乱野郎は一生不能になったぞおい、」
「…腹立つけど確かにそうだなこのクソガキ」
「どうでもいいけど。どうせ皆死なねぇから。過去に拘ってんのは皆一緒だから歩むしかないんじゃないんですかぁ?センパイ。あんたが…歩いてきちまったように俺もこいつも祥真も皆歩いてきちまってんだから潤、てめえ祥真はどこ行ったんだよ」
「…ごめんっ、」
「はぁ、呆れる。けど俺にも呆れてる。頭冷やしに警視庁行って来るマジで。
慧さんすみませんありがとうございます。その先輩もこのバカ野郎もほっといても勝手に仕事するんで、慧さんもすみませんが休憩してください」
なっ、
「まぁ…そうすることにします。皆にはきっと二人がなんとか言ってくれますよね?」
えっ。
「…すみませんでした」
マジか。
政宗すら謝罪したわ。わかるわ、俺も謝っとこ。
「慧さん…、すんませんでした…」
「いや、まぁいいです。大丈夫ですか監督官」
監督官…。
「はい、その…」
「まぁ持病お持ちでしたよね。無理はしない方がいいですよ、若いんだから。サボらしてはくれないらしいですけど」
「…はい、まぁ…」
「で、部長。警視庁のどちらへ?」
「…まぁ一課と五課あたりですかね…武宮さんも五十嵐さんもキレそうですけど」
「本当にそれだけですね?」
「…まずは、です。あとは帰って来て部下の仕事具合で。
…部長が失踪するパターンは洒落にならないので」
あぁ…。
「潤、」
「あ、はい」
「…祥真に関しては今は後だ。お前の書類の進み具合に任せる。無駄だろうが俺からも連絡は取る、これでいいか?」
あぁ、確かに流星なら…。
「あぁ…」
うんと言えなかったが振り向いた流星に俺は笑えたかもしれない。
「悪いな、ありがと」
照れ臭そうに「ん、はい」と言い残して去って行く流星と、見守るような柔らかい表情の慧さんも去る。
政宗と目が合ったから、手の甲で拭って舐めて見せてやった。「しょっぱいな」と言えば漸く政宗は笑い、「淫乱」と悪口を言う。
こんな環境を祥ちゃんも知っていたら、よかったのになぁ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
愛のかたち
凛子
恋愛
プライドが邪魔をして素直になれない夫(白藤翔)。しかし夫の気持ちはちゃんと妻(彩華)に伝わっていた。そんな夫婦に訪れた突然の別れ。
ある人物の粋な計らいによって再会を果たした二人は……
情けない男の不器用な愛。
月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜
白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳
yayoi
×
月城尊 29歳
takeru
母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司
彼は、母が持っていた指輪を探しているという。
指輪を巡る秘密を探し、
私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。
27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?
藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。
結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの?
もう、みんな、うるさい!
私は私。好きに生きさせてよね。
この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。
彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。
私の人生に彩りをくれる、その人。
その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。
⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。
⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。
黄金の魔族姫
風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」
「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」
とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!
──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?
これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。
──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!
※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。
※表紙は自作ではありません。
初恋
藍沢咲良
青春
高校3年生。
制服が着られる最後の年に、私達は出会った。
思った通りにはなかなかできない。
もどかしいことばかり。
それでも、愛おしい日々。
※素敵な表紙をポリン先生に描いて頂きました。ポリン先生の作品↓
https://www.comico.jp/articleList.nhn?titleNo=31039&f=a
※この作品は「小説家になろう」「エブリスタ」でも連載しています。
8/28公開分で完結となります。
最後まで御愛読頂けると嬉しいです。
※エブリスタにてスター特典「初恋〜それから〜」「同窓会」を公開しております。「初恋」の続編です。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる