ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

文字の大きさ
349 / 376
The 33rd episode

6

しおりを挟む
「で、」

 夜。歌舞伎町のホテルにて。

「ん?っ…なぁに…っ?」

 辻井と戯れて上乗ってる俺はなぜか。

「…あんた頭おかしくねぇかマジで」

 顔は驚愕のクセにわりと興奮状態の辻井が間抜けすぎてもう耳元で「こゆの好きだろお前」と吐いてやる。

 汗が耳に流れるようだ、髪をかけて辻井を見つめる。多分いま俺色っぽいよ、多分。

 我ながら思うわ、俺って最低だなぁ。でも「確かにむちゃくちゃ良いけどさ」と四の五の言って動きもしないマグロ辻井に(この場合絶対俺が使われるべき単語だろうけど)

「あーもう飽きた寝る」

あっさり萎えてしまった俺は勝手に上から退いて一人隣に寝転んだ。

 間があってから「いやちょっ、はぁ?」と言われてしまう。なんなら壁際向いて寝てるのに「ねぇちょっ…、どーしてくれんのよ」と股間をあてがわれたが「やめろ変態!」と叩いてしまい「痛゛っ」と丸まってしまっていた。

「ちょっ、あんたからさ、せっ…きょくてきに」
「割り勘でいーよ」
「何っ、」
「うるせぇな帰る家ないんだよ処世術だよ調子乗るな」
「はぁ?旦那は?」

 ついに起き上がってタバコを吸い始めた辻井に振り返ってやればかなり不機嫌そうだった。

「旦那旦那ってお前らマトリは霊長類しかいねーな。違ぇっつーの」
「あり得ないだろあんたドエロだもん」
「否定しねーけど違ぇんだよ」
「あっそ」
「てかお前が妬くのおかしいからね」

 もうパンツ穿く。姫やる気ない。
 より不機嫌そうになった辻井は「じゃ帰れよ」と冷たい。当たり前だけど。俺だってよくわかんねえけど。

「だってあんな俺見てお前興奮してただろ、俺可哀想だっただろ!」
「興奮も一瞬だよマジで驚愕だったからね。俺「今夜どう?」って言われた瞬間正直勃つか不安だったからねっ」
「でも来てんじゃん」
「当たり前じゃんあんためっちゃほっとけないくらい切な気なんだもん、酷いわ~。流石に俺も今日キレて良いよね」
「いいよ?殴れよまったく」
「はぁ…」

 溜め息吐かれた。

「だって…。ホントに山下さんはどうなったの?」
「…わかんない」

 あれからやっぱり連絡は着かず。
 書類にも月夜里祥真についてはまとめた。だからこそ、どこにいるか、生きているか、今は気が気じゃないのかも知れないが、犬死には許さないと俺は言った。

 恐らく次は、戦場だろう。

「…どうして俺のとこにいるんだよあんた」
「…別に」

 お前が一番今は平和だからだよ、多分。

「多分嫌いだからだよ」
「は?」
「どれくらい最低なことを言えば人を殺せるかな、なんてね」

 全ての動きを止めて意外そうに見る辻井は、何を考えてるかはわからない。

「でも、言葉なんていらないでしょ、そーゆーの」
「…あんたさ、」
「俺死ぬまで生きていたいわけ、わかる?」
「…いや、わかんないけど」

 タバコをもみ消して乗ってきと思えば、ギンギンなクセに抱擁してくる、だけ。

「…やっぱ、帰るべきじゃない?」
「…のわりにこれはどう説明するのお前」

 ギンギンなそれをがっちり握ってやれば「痛いってば!」と言いながら辻井はちょっと笑った。

「じゃ一回かな」
「はぁ?」
「何回でもいいよって言いたいけどね。今日はダメだね」
「違ぇよバカなの?」

 って言いながらちゃんと肩に手を回してやる。ファンサファンサ。もうどうにでもなれ。

 体温高ぇな、笑えるなぁ。辻井も嬉しそうだからファンサついでに吐いとこうか、萎えそうなやつ。「巻き込んで悪かったね」と。

 なにも言わずにただ辻井は笑った。やっぱりなぁ。感情ってなかなか読み取れないよ。

 祥ちゃんから最後の着信があったのはそれから2時間後、寝そうになっていたときで。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?

藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。 結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの? もう、みんな、うるさい! 私は私。好きに生きさせてよね。 この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。 彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。 私の人生に彩りをくれる、その人。 その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。 ⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。 ⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。

【本編完結】婚約者を守ろうとしたら寧ろ盾にされました。腹が立ったので記憶を失ったふりをして婚約解消を目指します。

しろねこ。
恋愛
「君との婚約を解消したい」 その言葉を聞いてエカテリーナはニコリと微笑む。 「了承しました」 ようやくこの日が来たと内心で神に感謝をする。 (わたくしを盾にし、更に記憶喪失となったのに手助けもせず、他の女性に擦り寄った婚約者なんていらないもの) そんな者との婚約が破談となって本当に良かった。 (それに欲しいものは手に入れたわ) 壁際で沈痛な面持ちでこちらを見る人物を見て、頬が赤くなる。 (愛してくれない者よりも、自分を愛してくれる人の方がいいじゃない?) エカテリーナはあっさりと自分を捨てた男に向けて頭を下げる。 「今までありがとうございました。殿下もお幸せに」 類まれなる美貌と十分な地位、そして魔法の珍しいこの世界で魔法を使えるエカテリーナ。 だからこそ、ここバークレイ国で第二王子の婚約者に選ばれたのだが……それも今日で終わりだ。 今後は自分の力で頑張ってもらおう。 ハピエン、自己満足、ご都合主義なお話です。 ちゃっかりとシリーズ化というか、他作品と繋がっています。 カクヨムさん、小説家になろうさん、ノベルアッププラスさんでも連載中(*´ω`*) 表紙絵は猫絵師さんより(⁠。⁠・⁠ω⁠・⁠。⁠)⁠ノ⁠♡

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

芙蓉は後宮で花開く

速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。 借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー カクヨムでも連載しております。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

〜仕事も恋愛もハードモード!?〜 ON/OFF♡オフィスワーカー

i.q
恋愛
切り替えギャップ鬼上司に翻弄されちゃうオフィスラブ☆ 最悪な失恋をした主人公とONとOFFの切り替えが激しい鬼上司のオフィスラブストーリー♡ バリバリのキャリアウーマン街道一直線の爽やか属性女子【川瀬 陸】。そんな陸は突然彼氏から呼び出される。出向いた先には……彼氏と見知らぬ女が!? 酷い失恋をした陸。しかし、同じ職場の鬼課長の【榊】は失恋なんてお構いなし。傷が乾かぬうちに仕事はスーパーハードモード。その上、この鬼課長は————。 数年前に執筆して他サイトに投稿してあったお話(別タイトル。本文軽い修正あり)

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

処理中です...