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春塵
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命日近くなってやっぱり、澄の死は頭にちらつくようになって。
あの、深景を傷付けてしまった日から、開きもしなかった交換日記。
何気なくそれを開いてぼんやりと眺めてみた。
見ていくうちに気付いたこと。
確かに澄は人のことばかり書いている。だがどうも、ある一定期間から俺たち以外の名前が出てこなくなっていることに気が付いた。どうも日付を追うと、澄が中学3年に上がった頃からだった。
そして、理穂の名前が出てくる回数が増えた。
同じクラスだったからだろうか。意味深なのがひとつあった。多分、この時期…。
俺は、ひとつ気付いてしまった。
────
年 5月2日
僕はみんながとても大好きです。
僕はみんなをとても尊敬し、応援しています。
それは、みんなが僕にはないところをたくさん持っていて、たくさん教えてくれるからです。
明日は頑張りたい。
────
これは、一体なんだろう。
それからしばらく空いて、理穂の日記になっている。
────
年 5月29日
最近、授業や日常生活に全然集中が出来ない。
何もかもが手につかない。どうしてだろう?食欲もない。
ずっとぼんやり考えてしまう。あたたかい気持ちになれる。
だけど悩みがまたひとつ増えてしまった。
愛子に話したら、「理穂はかわいいから」で終わってしまった。でも、
「だから大丈夫」とも言われた。
そんなにかわいくないけどな
────
理穂は小さい頃から恋多き女だった。すぐにクラスの、モテそうなヤツを好きになって、ちやほやされたら次に行くタイプの女だった。
でも、友達は何故か集まるタイプの子で。クラス替えをしても前のクラスの友達と一緒に遊んだりしていて顔が広い方で。言ってしまえば誰にでも好かれるタイプだった。
だからこそこんな日記はいつも通り、もう何ページ目だかわからない。だが読んでいくと、
────
年 6月14日
クラスの男子はホントにガキっぽくて嫌い
やっぱり私は歳上がいい
私の好きな人は昔から
いつだってどこか、同い年の人よりも大人っぽくて素敵な人だから。
────
ヒントを得た気がする。
この時期、確かこの時期だったと思う。なんとなく澄の雰囲気が変だったから。
ふと澄に聞いたら。
理穂のことが好きなんだと言われた。
でもそれを聞いて俺は、納得したと言うか、「やっぱり」と思った。そんなのは昔からわかっていたことだったような気がしたから。
応援はした。けど、うまくいくのかなと思っていた。
けどこれを見ると、多分うまくいかなそうな雰囲気で。
澄は果たしてアクションを起こしたのだろうか。もしかしてそれが引き金になったのだとしたら。
何かしら理穂は関わっているのではないかと思っていたが、小さなことに気付いてみれば、少し道は拓けてきている。
思った以上に今回の事件は単純なものかもしれない。
そう思ったがふと気がついた。
今更それを明かしたところでどうなるんだろう。誰がそれで救われるんだろうか。
そう考えた瞬間、やめた。ノートを閉じた。
今何をしたところで多分、誰も前は向けないんだ。だったら、せめて一番良い方法だと信じてきた方法を貫こう。あれからこれでやってきて、なんの問題もなかったんだから。
真実は霞に散ればいい。鴉は黒ければいい。
たくさんの犠牲のあとに取り返しがついたところで誰も得などしないのだから。
久しぶりに、澄の仏壇に手会わせた。
澄。
今度こそ俺はお前を守りたいんだ。
歪んでてもいい、間違っててもいい。
後悔もけして晴れないし虚しくて仕方なくて、戦ってばかりだけど。
俺はただ純粋に、兄になりたいんだ。
だから間違っていても、そこで見ていろ。そして俺は多分間違っている。それも見ていろ。俺が、お前が言うほど強くも凄くもないことを知ってくれ。
それが、兄として最期の贖罪だ。
一種の決意なんだろう。これは揺らいではいけない。全てが終わるときは俺が死ぬときだ。
そんな想いで空虚を穴埋めする以外、そのときの俺にはなかったんだ。
あの、深景を傷付けてしまった日から、開きもしなかった交換日記。
何気なくそれを開いてぼんやりと眺めてみた。
見ていくうちに気付いたこと。
確かに澄は人のことばかり書いている。だがどうも、ある一定期間から俺たち以外の名前が出てこなくなっていることに気が付いた。どうも日付を追うと、澄が中学3年に上がった頃からだった。
そして、理穂の名前が出てくる回数が増えた。
同じクラスだったからだろうか。意味深なのがひとつあった。多分、この時期…。
俺は、ひとつ気付いてしまった。
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年 5月2日
僕はみんながとても大好きです。
僕はみんなをとても尊敬し、応援しています。
それは、みんなが僕にはないところをたくさん持っていて、たくさん教えてくれるからです。
明日は頑張りたい。
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これは、一体なんだろう。
それからしばらく空いて、理穂の日記になっている。
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最近、授業や日常生活に全然集中が出来ない。
何もかもが手につかない。どうしてだろう?食欲もない。
ずっとぼんやり考えてしまう。あたたかい気持ちになれる。
だけど悩みがまたひとつ増えてしまった。
愛子に話したら、「理穂はかわいいから」で終わってしまった。でも、
「だから大丈夫」とも言われた。
そんなにかわいくないけどな
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理穂は小さい頃から恋多き女だった。すぐにクラスの、モテそうなヤツを好きになって、ちやほやされたら次に行くタイプの女だった。
でも、友達は何故か集まるタイプの子で。クラス替えをしても前のクラスの友達と一緒に遊んだりしていて顔が広い方で。言ってしまえば誰にでも好かれるタイプだった。
だからこそこんな日記はいつも通り、もう何ページ目だかわからない。だが読んでいくと、
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年 6月14日
クラスの男子はホントにガキっぽくて嫌い
やっぱり私は歳上がいい
私の好きな人は昔から
いつだってどこか、同い年の人よりも大人っぽくて素敵な人だから。
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ヒントを得た気がする。
この時期、確かこの時期だったと思う。なんとなく澄の雰囲気が変だったから。
ふと澄に聞いたら。
理穂のことが好きなんだと言われた。
でもそれを聞いて俺は、納得したと言うか、「やっぱり」と思った。そんなのは昔からわかっていたことだったような気がしたから。
応援はした。けど、うまくいくのかなと思っていた。
けどこれを見ると、多分うまくいかなそうな雰囲気で。
澄は果たしてアクションを起こしたのだろうか。もしかしてそれが引き金になったのだとしたら。
何かしら理穂は関わっているのではないかと思っていたが、小さなことに気付いてみれば、少し道は拓けてきている。
思った以上に今回の事件は単純なものかもしれない。
そう思ったがふと気がついた。
今更それを明かしたところでどうなるんだろう。誰がそれで救われるんだろうか。
そう考えた瞬間、やめた。ノートを閉じた。
今何をしたところで多分、誰も前は向けないんだ。だったら、せめて一番良い方法だと信じてきた方法を貫こう。あれからこれでやってきて、なんの問題もなかったんだから。
真実は霞に散ればいい。鴉は黒ければいい。
たくさんの犠牲のあとに取り返しがついたところで誰も得などしないのだから。
久しぶりに、澄の仏壇に手会わせた。
澄。
今度こそ俺はお前を守りたいんだ。
歪んでてもいい、間違っててもいい。
後悔もけして晴れないし虚しくて仕方なくて、戦ってばかりだけど。
俺はただ純粋に、兄になりたいんだ。
だから間違っていても、そこで見ていろ。そして俺は多分間違っている。それも見ていろ。俺が、お前が言うほど強くも凄くもないことを知ってくれ。
それが、兄として最期の贖罪だ。
一種の決意なんだろう。これは揺らいではいけない。全てが終わるときは俺が死ぬときだ。
そんな想いで空虚を穴埋めする以外、そのときの俺にはなかったんだ。
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