白い鴉の啼く夜に

二色燕𠀋

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陽炎

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「隆平ごめん」

  急に一喜がドアを見つめながら謝る。なんのことだかさっぱりわからない。

「何が?」
「俺ちょっと嘘吐いた」
「え?」
笹木ささきの件じゃないかって歩に言われたって言ったやつ。あれ、本当は言われてないんだ。
 ちょっとカマ掛けたって言うか…ああでも言わないと俺は何も知れないし隆平も動かないかもしれないと思ったからさ」
「…そう」
「歩にあの後、なんて言ったの?」
「告白した」
「え?」

 漸く一喜は扉から視線を移し、俺を見た。多分ビックリしてるだろう。

「俺多分バイなんだ。
 女でも好きでたまらない人がいる。だけど歩のことも好きでたまらないんだ」
「…マジか。てか…しれっと言いやがって」
「うんごめん」
「いや、なんか納得した。お前わりと辛い思いしてんだな」

 一喜を見ると緩く笑った。まさかわかってくれるとは思ってなかった。

「隆平はいつも上手いことこうさ…なんでもやっちゃうイメージが勝手に俺の中であったんだ。だからなんかさ。当たり前なんだけど…隆平にもこんなに上手く行かないこと、あるんだな」
「俺、そんな凄いやつでもないよ。
 今回もさ、告白したから来なくなったのかなとも考えたよ」
「多分違うだろうけど…どうだったの?」
「気持ちだけは受け取っとくって」
「そっか…」
「まぁそれはまたの機会にゆっくり聞かせてよ」

 多分一喜が聞きたいのはそっちではないのだ、今は。

「うん」

 恐らく。

「ズバリ、小日向さんの話なんだけどさ、どう思った?」

 やはりそうだ。

「干されてる話?」
「うん」
「どうって言うと?」
「だからさ、やり口似てない?俺と。俺実は昨日聞いてさ」
「…うん。似てる」
「俺さ、なんでカマ掛けたと思う?」
「…敵わないな。
 お前の謹慎もあの子の事件も笹木が関わっている」
「そう。だけど俺は笹木を知らない」
「あぁ、歩と俺の現クラスメートだ。だがそれ以外何も」
「…うーん」

 笹木ささき孝雄たかお。やっぱり記憶を探しても知らない。

「ただの三下ヤンキーにしてはしつこい気がするんだよなー」
「質も悪いしな」
「まあ同じクラスなら丁度いいや。お前聞いといてよ」
「まぁそれとなく接触はしておくよ」

 なんであの男はそんなに嫌がらせばかりするんだろうか。

 まずは…。

「あ、一喜」
「ん?」
「今回の謹慎のさ、被害者?名前なんだっけ」
鈴木すずき慶悟けいご
「わかった」

 まずはこちらから洗ってみようか。

「わかってると思うけどさ。
 歩に言うなよ。あいつ何するかマジでわかんないから」
「うん」
「てかさ、歩のことマジでわかんないの?」
「家には居るときといないときがある。なんで学校に来ないかは…本当にわからん。なんとなく行きたくないとしか言わないんだ」

 決別したとはいえ、一喜は一喜で歩を心配しているらしい。

「隆平、言っとくよ?
 あいつを動かせるのは最早お前しかいないんだからな。あいつは、俺や深景なんかよりやっぱりお前の方が…」
「それは買い被りすぎだ」
「隆平、」
「俺だって必死に今模索してるんだ。一喜、俺は、」
「…わかった。ごめん。お前にいつも頼りすぎだな、俺たちは。
 自分達で出来ることはちゃんとやっていく」

 そう言って一喜は階段で立ち止まる。俺は教室に戻るので、ここで、話しは終了だ。

「移動教室なんだ。じゃぁまた明日な、隆平」

 一喜は手をひらひら振って階段を降りていった。確かによく見れば教科書を脇に抱えていた。場所的に理科室かな。

「…また、明日」

 一喜や歩には申し訳ないが、俺は謎の究明など、今更どうでもいい。

 そりゃぁ知りたい。
 だけど何より、今はそれより。
 昔のように、みんなで仲良くやりたい。

 だがそれは謎を究明し、これからまた何かが起こってしまうのを未然に防がなければならないのだ。

 同じ悲劇は繰り返してはならない。

 教室に一度戻り、放課後俺は生徒会室に向かった。
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