34 / 52
小鳥網
8
しおりを挟む
図書室に行くと、小夜は本を読んでいた。どうやら最近、散々みんなで話題にあがったヘッセの『車輪の下』を読み始めたらしい。
「お待たせ」
「あ、一喜先輩」
にっこりと笑い、小夜は本を閉じた。
「一喜先輩」
「ん?」
「今更なんですけど、3年なのに授業サボって大丈夫なんですか?」
「お前こそ。2年なのに大丈夫かよ」
「まぁ、たまには?」
「知らねぇぞ。3年になって困るからな」
「そんときはそんときです。私、成績はいいらしいので。てか、みっちゃ…一番上のお兄さんが、大学なんて行っても意味ないけど行かなきゃ職業幅が…みたいな話してましたし。あんまり勉強関係ないかなって」
「流石兄さん、言うこと違うね。
てか小夜さ、じゃぁ…いまから暇?」
本当になんとなく、そう口から漏れた一言。
「ええ、まぁ」
「じゃ、どっか行こっか」
「えぇ!?」
「人生初サボりに付き合ってよ。そうだなぁ…公園にでも」
「はぁ…いいですよ」
「あ、マジ?」
まさかオッケーされるとは思わず、誘った俺が逆に食い下がり気味になってしまった。ちょっと情けないけど。
「え?冗談?」
「いや、ガチなんだけどさ。まさかオッケーされるとは思わなかった。
じゃぁ、荷物取ってくるわ」
「私もそうします。じゃぁ、下駄箱でいいですかね?」
「うん。そっち迎え行くわ。じゃ」
そうして各自解散。
さっさと荷物を取りに行って、小夜のクラスの方の下駄箱に向かう。
授業中に教室に入った瞬間、先生からは、「椎名、どうした?」とか声を掛けられたが、
「腹痛いんで帰りまーす」
とだけ言って教室から出て行く。いつも真面目に授業に出ていただけあって、唖然としたのか、なんなのか、あんまり何も言われなかった。
下駄箱でしばらく待っていると、小夜がやって来た。
「お待たせしました」
「抜けられたみたいだな」
「はい。いま選択授業の時間で、うちの教室英語の特待生が10人くらいしか使ってないんですよ。なんで、荷物取りに行っても、忘れ物かな?くらいにしか思われないんです」
「なるほどな。
よし。じゃぁ近くの公園行こうか」
「はい」
なんだかすげぇ嬉しそうに小夜は笑ってる。特に大した場所に行くわけでもないのに。
でもなんでだろう。俺も、なんだか凄く嬉しいかも。
「なんか嬉しそうだな」
「一喜先輩も結構嬉しそうですよ?」
「…よくさ、みんなで、公園に集まってたから」
「みんなって…」
「うん、歩と隆平と…弟、妹、あともう一人別の学校にいるんだけどさ。
そもそもさ。俺ら、みんな近所に住んでてさ。もう最初の出会いなんて覚えてないけど…」
気付いたら歩と深景と澄がいて。そのうち隆平が加わって。
「俺小さい頃さ、隆平のこと、中国人だと思ってたんだ」
「そうなんですか?確かに、ちょっと日本人離れしているような気もしなくはないですけど…」
「うん。初めて会ったときにさ、神奈川から来たって言ってさ。でも幼稚園生だったから全然わかんねぇの。
妹もさ、わかんない、どこって俺に聞いてくるんだけど、わかんねぇわけ。たださ、横浜の中華街に行ったことがあって、俺は妹に、中華街行ったことあるだろ?って言ったんだ。
そっからなんか妹と色々二人で誤解しまくって、しばらくの間、あいつ、中国人ってことになってたんだ」
「なにそれ…!でも可愛いエピソード!」
そう、昔から…。
「昔から、なんか俺さ、あんまりなんかこう…説明が下手なんだよなぁ」
「あぁ、確かに。先輩下手くそかも」
こうきっぱり言われると、少しグサッと来るなぁ。
「でも…なんか…。
だからこそ、はっきり言ってくれるから、いいんじゃないですかね」
「え?」
「多分…ですけどね、一喜先輩が思っているよりは、伝えたいことが伝わっているんじゃないかなぁって気がします」
「そう…かなあ」
「あとは、受け取り方って伝え方と一緒で様々ですよね」
「お待たせ」
「あ、一喜先輩」
にっこりと笑い、小夜は本を閉じた。
「一喜先輩」
「ん?」
「今更なんですけど、3年なのに授業サボって大丈夫なんですか?」
「お前こそ。2年なのに大丈夫かよ」
「まぁ、たまには?」
「知らねぇぞ。3年になって困るからな」
「そんときはそんときです。私、成績はいいらしいので。てか、みっちゃ…一番上のお兄さんが、大学なんて行っても意味ないけど行かなきゃ職業幅が…みたいな話してましたし。あんまり勉強関係ないかなって」
「流石兄さん、言うこと違うね。
てか小夜さ、じゃぁ…いまから暇?」
本当になんとなく、そう口から漏れた一言。
「ええ、まぁ」
「じゃ、どっか行こっか」
「えぇ!?」
「人生初サボりに付き合ってよ。そうだなぁ…公園にでも」
「はぁ…いいですよ」
「あ、マジ?」
まさかオッケーされるとは思わず、誘った俺が逆に食い下がり気味になってしまった。ちょっと情けないけど。
「え?冗談?」
「いや、ガチなんだけどさ。まさかオッケーされるとは思わなかった。
じゃぁ、荷物取ってくるわ」
「私もそうします。じゃぁ、下駄箱でいいですかね?」
「うん。そっち迎え行くわ。じゃ」
そうして各自解散。
さっさと荷物を取りに行って、小夜のクラスの方の下駄箱に向かう。
授業中に教室に入った瞬間、先生からは、「椎名、どうした?」とか声を掛けられたが、
「腹痛いんで帰りまーす」
とだけ言って教室から出て行く。いつも真面目に授業に出ていただけあって、唖然としたのか、なんなのか、あんまり何も言われなかった。
下駄箱でしばらく待っていると、小夜がやって来た。
「お待たせしました」
「抜けられたみたいだな」
「はい。いま選択授業の時間で、うちの教室英語の特待生が10人くらいしか使ってないんですよ。なんで、荷物取りに行っても、忘れ物かな?くらいにしか思われないんです」
「なるほどな。
よし。じゃぁ近くの公園行こうか」
「はい」
なんだかすげぇ嬉しそうに小夜は笑ってる。特に大した場所に行くわけでもないのに。
でもなんでだろう。俺も、なんだか凄く嬉しいかも。
「なんか嬉しそうだな」
「一喜先輩も結構嬉しそうですよ?」
「…よくさ、みんなで、公園に集まってたから」
「みんなって…」
「うん、歩と隆平と…弟、妹、あともう一人別の学校にいるんだけどさ。
そもそもさ。俺ら、みんな近所に住んでてさ。もう最初の出会いなんて覚えてないけど…」
気付いたら歩と深景と澄がいて。そのうち隆平が加わって。
「俺小さい頃さ、隆平のこと、中国人だと思ってたんだ」
「そうなんですか?確かに、ちょっと日本人離れしているような気もしなくはないですけど…」
「うん。初めて会ったときにさ、神奈川から来たって言ってさ。でも幼稚園生だったから全然わかんねぇの。
妹もさ、わかんない、どこって俺に聞いてくるんだけど、わかんねぇわけ。たださ、横浜の中華街に行ったことがあって、俺は妹に、中華街行ったことあるだろ?って言ったんだ。
そっからなんか妹と色々二人で誤解しまくって、しばらくの間、あいつ、中国人ってことになってたんだ」
「なにそれ…!でも可愛いエピソード!」
そう、昔から…。
「昔から、なんか俺さ、あんまりなんかこう…説明が下手なんだよなぁ」
「あぁ、確かに。先輩下手くそかも」
こうきっぱり言われると、少しグサッと来るなぁ。
「でも…なんか…。
だからこそ、はっきり言ってくれるから、いいんじゃないですかね」
「え?」
「多分…ですけどね、一喜先輩が思っているよりは、伝えたいことが伝わっているんじゃないかなぁって気がします」
「そう…かなあ」
「あとは、受け取り方って伝え方と一緒で様々ですよね」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる