白い鴉の啼く夜に

二色燕𠀋

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小鳥網

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 図書室に行くと、小夜は本を読んでいた。どうやら最近、散々みんなで話題にあがったヘッセの『車輪の下』を読み始めたらしい。

「お待たせ」
「あ、一喜先輩」

 にっこりと笑い、小夜は本を閉じた。

「一喜先輩」
「ん?」
「今更なんですけど、3年なのに授業サボって大丈夫なんですか?」
「お前こそ。2年なのに大丈夫かよ」
「まぁ、たまには?」
「知らねぇぞ。3年になって困るからな」
「そんときはそんときです。私、成績はいいらしいので。てか、みっちゃ…一番上のお兄さんが、大学なんて行っても意味ないけど行かなきゃ職業幅が…みたいな話してましたし。あんまり勉強関係ないかなって」
「流石兄さん、言うこと違うね。
 てか小夜さ、じゃぁ…いまから暇?」

 本当になんとなく、そう口から漏れた一言。

「ええ、まぁ」
「じゃ、どっか行こっか」
「えぇ!?」
「人生初サボりに付き合ってよ。そうだなぁ…公園にでも」
「はぁ…いいですよ」
「あ、マジ?」

 まさかオッケーされるとは思わず、誘った俺が逆に食い下がり気味になってしまった。ちょっと情けないけど。

「え?冗談?」
「いや、ガチなんだけどさ。まさかオッケーされるとは思わなかった。
じゃぁ、荷物取ってくるわ」
「私もそうします。じゃぁ、下駄箱でいいですかね?」
「うん。そっち迎え行くわ。じゃ」

 そうして各自解散。

 さっさと荷物を取りに行って、小夜のクラスの方の下駄箱に向かう。

 授業中に教室に入った瞬間、先生からは、「椎名、どうした?」とか声を掛けられたが、

「腹痛いんで帰りまーす」

 とだけ言って教室から出て行く。いつも真面目に授業に出ていただけあって、唖然としたのか、なんなのか、あんまり何も言われなかった。

 下駄箱でしばらく待っていると、小夜がやって来た。

「お待たせしました」
「抜けられたみたいだな」
「はい。いま選択授業の時間で、うちの教室英語の特待生が10人くらいしか使ってないんですよ。なんで、荷物取りに行っても、忘れ物かな?くらいにしか思われないんです」
「なるほどな。
 よし。じゃぁ近くの公園行こうか」
「はい」

 なんだかすげぇ嬉しそうに小夜は笑ってる。特に大した場所に行くわけでもないのに。
 でもなんでだろう。俺も、なんだか凄く嬉しいかも。

「なんか嬉しそうだな」
「一喜先輩も結構嬉しそうですよ?」
「…よくさ、みんなで、公園に集まってたから」
「みんなって…」
「うん、歩と隆平と…弟、妹、あともう一人別の学校にいるんだけどさ。
 そもそもさ。俺ら、みんな近所に住んでてさ。もう最初の出会いなんて覚えてないけど…」

 気付いたら歩と深景と澄がいて。そのうち隆平が加わって。

「俺小さい頃さ、隆平のこと、中国人だと思ってたんだ」
「そうなんですか?確かに、ちょっと日本人離れしているような気もしなくはないですけど…」
「うん。初めて会ったときにさ、神奈川から来たって言ってさ。でも幼稚園生だったから全然わかんねぇの。
 妹もさ、わかんない、どこって俺に聞いてくるんだけど、わかんねぇわけ。たださ、横浜の中華街に行ったことがあって、俺は妹に、中華街行ったことあるだろ?って言ったんだ。
 そっからなんか妹と色々二人で誤解しまくって、しばらくの間、あいつ、中国人ってことになってたんだ」
「なにそれ…!でも可愛いエピソード!」

 そう、昔から…。

「昔から、なんか俺さ、あんまりなんかこう…説明が下手なんだよなぁ」
「あぁ、確かに。先輩下手くそかも」

 こうきっぱり言われると、少しグサッと来るなぁ。

「でも…なんか…。
 だからこそ、はっきり言ってくれるから、いいんじゃないですかね」
「え?」
「多分…ですけどね、一喜先輩が思っているよりは、伝えたいことが伝わっているんじゃないかなぁって気がします」
「そう…かなあ」
「あとは、受け取り方って伝え方と一緒で様々ですよね」
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