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寒鴉
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「深景…」
終わってもまだなお抱きついてくる孝雄を振り払い、その辺に放り投げられた制服を集めようとしたが、身体がだるくて諦めた。
この猿は3回もゴムなしでヤりやがった。
不機嫌な私を見て孝雄は、余裕な表情で起き上がり、タバコに火をつけ、髪を撫でてきた。
「やめてくれる?タバコ嫌いなんだけど」
「お嬢はご機嫌斜めだなぁ」
「当たり前でしょ。なんなの」
「言っとくけどこれ、浦賀と同じタバコだよ」
どうしてこう、人が不機嫌になるようなことばかり言うかな。
「うっさいな」
「はいはい」
そう言って胸を優しく揉まれると、また少し熱が復活してしまう。
「なんだよ足りてねぇのか?」
「気持ち悪ぃんだよカス」
「相変わらず口が悪ぃな。こんな姿もあいつらは知らねぇんだな」
当たり前だ。
すべて隠してきたんだから。
私はお人形さんとしてやってきたんだから。
「あー、わかったよそんなに見んな」
そう言うと肩に手を回され、無理矢理起こされ、口付けされた。口付けとともにまた触れられ、指がすんなりと入っていって。
孝雄は愛液を私のいたるところに擦り付けるのが好きだ。そして言うのだ。
「素直に感じてんのな、お人形さん」
私も、この滑りで、確かに人だと感じることができるのだ。
気持ち悪いけど。
「うるさいなこの猿」
「腕まで肩に回しちゃってよく言うよ。ほら、」
今度は自分から腰を落とす。
「こんな女、俺しか愛さねぇだろうな」
激しく動く腰。なのに優しく私を見るその目。
バカみたい。
「気持ち悪い」
ホント、あんたなんてクソ野郎、いっぺん死んだ方がいい。
「あぁそう」
「あぁっ、」
「生意気なアバズレ女には容赦しねぇよ。
なぁ?こんなに気持ちよくても、抱かれてんのは、犯されてんのは浦賀じゃねぇんだなクソが」
「や、あっ」
「な?てめぇが言う歩くんはどんな女抱くんだろうな?少なくてもてめぇじゃねぇよな。てめぇみてぇな殺人犯なんて、こんなクソみてぇな女、なんとも思っちゃいねぇんだよこのクソ娼婦」
うるさいうるさいうるさい。
「あっ、いや…」
「こんなんで感じてんじゃねぇよ…!笑えるな!」
最低だ。
「やめ…て、」
「あぁ?」
「助けて…!」
「なんでなんだよ!」
急に孝雄は動きを止め、私を突き飛ばす。
狂っている。
「あっ…ごめん」
「…最低」
そのくせ、すぐに抱き締めてきて涙を拭ってくれて。
「それでも俺は、お前が好きだよ」
なんて言ってくる。
ふざけんな。
「ふざけんなよぅ…!」
「ごめんって、深景」
それから、その日は孝雄と口を利かなかった。
テキトーに離の押し入れから布団を引っ張り出してきて二人で朝を過ごした。
いつからだろう。
彼とこんな関係になったのは。
最近では、ない。
多分、かなり前からだったと思う。
何がきっかけだったか。
きっかけからして最悪な男だった。
そして私も最悪な女だった。
私はずっと、人知れずみんなを裏切り続けている。
そしてすべてを利用した。
すべてをぶち壊した。
『お人形さんみたいだね』
お人形さんだったらどんなによかっただろう。
ダッチワイフだったらどんなによかっただろう。
澄くんの一言が今更ながらに憎い。
あの無邪気な笑顔が懐かしい。
私が澄くんを殺した。
正確には、私ではない。
どうして私は人間なんだろう。
終わってもまだなお抱きついてくる孝雄を振り払い、その辺に放り投げられた制服を集めようとしたが、身体がだるくて諦めた。
この猿は3回もゴムなしでヤりやがった。
不機嫌な私を見て孝雄は、余裕な表情で起き上がり、タバコに火をつけ、髪を撫でてきた。
「やめてくれる?タバコ嫌いなんだけど」
「お嬢はご機嫌斜めだなぁ」
「当たり前でしょ。なんなの」
「言っとくけどこれ、浦賀と同じタバコだよ」
どうしてこう、人が不機嫌になるようなことばかり言うかな。
「うっさいな」
「はいはい」
そう言って胸を優しく揉まれると、また少し熱が復活してしまう。
「なんだよ足りてねぇのか?」
「気持ち悪ぃんだよカス」
「相変わらず口が悪ぃな。こんな姿もあいつらは知らねぇんだな」
当たり前だ。
すべて隠してきたんだから。
私はお人形さんとしてやってきたんだから。
「あー、わかったよそんなに見んな」
そう言うと肩に手を回され、無理矢理起こされ、口付けされた。口付けとともにまた触れられ、指がすんなりと入っていって。
孝雄は愛液を私のいたるところに擦り付けるのが好きだ。そして言うのだ。
「素直に感じてんのな、お人形さん」
私も、この滑りで、確かに人だと感じることができるのだ。
気持ち悪いけど。
「うるさいなこの猿」
「腕まで肩に回しちゃってよく言うよ。ほら、」
今度は自分から腰を落とす。
「こんな女、俺しか愛さねぇだろうな」
激しく動く腰。なのに優しく私を見るその目。
バカみたい。
「気持ち悪い」
ホント、あんたなんてクソ野郎、いっぺん死んだ方がいい。
「あぁそう」
「あぁっ、」
「生意気なアバズレ女には容赦しねぇよ。
なぁ?こんなに気持ちよくても、抱かれてんのは、犯されてんのは浦賀じゃねぇんだなクソが」
「や、あっ」
「な?てめぇが言う歩くんはどんな女抱くんだろうな?少なくてもてめぇじゃねぇよな。てめぇみてぇな殺人犯なんて、こんなクソみてぇな女、なんとも思っちゃいねぇんだよこのクソ娼婦」
うるさいうるさいうるさい。
「あっ、いや…」
「こんなんで感じてんじゃねぇよ…!笑えるな!」
最低だ。
「やめ…て、」
「あぁ?」
「助けて…!」
「なんでなんだよ!」
急に孝雄は動きを止め、私を突き飛ばす。
狂っている。
「あっ…ごめん」
「…最低」
そのくせ、すぐに抱き締めてきて涙を拭ってくれて。
「それでも俺は、お前が好きだよ」
なんて言ってくる。
ふざけんな。
「ふざけんなよぅ…!」
「ごめんって、深景」
それから、その日は孝雄と口を利かなかった。
テキトーに離の押し入れから布団を引っ張り出してきて二人で朝を過ごした。
いつからだろう。
彼とこんな関係になったのは。
最近では、ない。
多分、かなり前からだったと思う。
何がきっかけだったか。
きっかけからして最悪な男だった。
そして私も最悪な女だった。
私はずっと、人知れずみんなを裏切り続けている。
そしてすべてを利用した。
すべてをぶち壊した。
『お人形さんみたいだね』
お人形さんだったらどんなによかっただろう。
ダッチワイフだったらどんなによかっただろう。
澄くんの一言が今更ながらに憎い。
あの無邪気な笑顔が懐かしい。
私が澄くんを殺した。
正確には、私ではない。
どうして私は人間なんだろう。
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