白い鴉の啼く夜に

二色燕𠀋

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寒鴉

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 そもそも崩壊の始まりは、多分私の歩くんへの想いがこの男にバレた事だ。

 小学校のときにこいつは突然私の前に現れた。なんでも、親戚だと言う。
 しかし私の中の親戚は、パパとママしかいなくて。

 最初はテキトーにあしらっていたのだが、ある日、私は誘拐されたのだ。誘拐され、強姦された。そして告げられる。

「お前の父親はヤクザなんだよ」
 と。
「黙ってて欲しけりゃ俺と一緒にいろ」
 と。

 幼心に真に受け、それからずっとこいつと一緒に過ごしてきた。
 実際、かなり遠い親戚であることが後にわかった。

 この男はたちが悪いことに、金をせびる訳じゃなく。最初は本当にお友達。思春期の、中学校頃からこんな関係になってしまったのだ。

 初めて孝雄とセックスした日は忘れもしない。
 毎回のことながら、孝雄の家に行った。そこで突然組み敷かれ、襲われた。
 もはや凌辱の一言以外の何物でもなかった。

 前々から孝雄は私のことが好きだったそうだ。あまりにも私が振り向かないから強行突破したと、後に笑いながら語っていた。

 いつか殺してやる。
 そんな思いすら、最近では起きなくなった。

 矛先が途中で違う方向に向いたから、というのもあるかもしれない。どうにもならない現実に、ただただ逃げ道として一番弱い者にいったのかもしれない。

 澄くんから、理穂が好きなんだと相談されたとき、これは転機が来たと思った。ここで二人がうまくいけば、障害物が消えてくれると。

 だが、そう上手くはいかなかった。

 澄は理穂に告白をしたらしい。しかし、理穂はそれを断固拒否した。理由は、

「歩くんがよかった。澄くんはどんくさいんだもん」

 だった。

 確かに澄くんは、少しドジっぽいところがあったが、そこが愛嬌だった。
 それに私は後半…。実は本当に澄くんを応援していた。なんせ、彼は本当に一途で、素直だったから。

「どうしたら理穂ちゃんに好かれるのかな」
「理穂ちゃんは何が好きなんだろう」
「この前お兄ちゃんと観た映画、理穂ちゃんにも観せてあげたかったなぁ」

 理穂のことばっかり嬉しそうに話していて。

「理穂は男気がある人が好きかもよ?りゅうちゃんとか歩くんとか」
「理穂はピンクが好きだよ。あとケーキが大好き」
「理穂は映画観るかなぁ…寝ちゃいそうだよね」

 なんて、本気で話していて。
 ただただ真っ直ぐに、澄くんには理穂しか見えていなくて。いつも私に、

「深景ちゃんに聞いてよかったよ、ありがとう!」

 なんて言ってくれていたんだ。

 そしてついに、

「深景ちゃんには最初に言おうと思ってさ。まだ兄さんにも言ってないんだけど…」
「何?」
「理穂ちゃんにね、想いを…伝えようかなぁ、なんて、思うんだ」

 とか、照れ臭そうにはにかんで言ってて。上手くいかないかもしれない。けど、もしかすると。
 私まで、なんだかワクワクしちゃって。

「頑張ってよ!」
「ありがとう!深景ちゃんなら、そう言ってくれると思って。
よかった、ありがとう」

 そう言ったのに。

「なんなのあいつ」

 次の日に聞いた理穂の一言がこれだった。

「マジキモい。今まで私をさ、そんな目で見てたのよ、あいつ」
「…え?」
「言ってやったよ。気持ち悪いから近付かないでって」
「なにそれ」
「だってそうでしょ?ずっと優しくしてくれたのって何?それ目的?いやらしいよね」

 あんただってそんなの、

「それって、本当にそうなの?」
「え?」
「…いや、いいよ」
「深景、なんか変なの」

 あんただって大して変わらないじゃない。

 それから…。

「あいつ最近クラスでハブってやってるよ」

 とか、

「マジさー、集団心理って怖いね。鶴の一声。てか、誰かが始めたらみんな一気に一人を攻撃すんのね」
「なにそれ」
「でも…ちょっと怖い。
 もうさ、私だけじゃないの。多分、今私が澄のとこに駆け寄ったら今度は私の番だよ」

 どうやら、理穂の大袈裟な性格が災いしてしまったらしい。
 しかし理穂も理穂で、後悔出来ないところに追いやられているのはわかった。
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