ひいろのおと

二色燕𠀋

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Hot Pink Fade

2

「すぐにお父さんがいらっしゃるからね」

 この先生、知らない…。
 救急車の人は「狭いところは大丈夫かな?」と優しく聞いてくる。

「はい…」
「じゃあ、お名前と生年月日わかるかな?」
「……あの、学くんと佐藤くんは…」
「あ、あぁ、平良たいら学くんと佐藤望夢のぞむくんかな?」
「……そうです、あの、学くん、血が出てて、弦で手を切ったので指がなくなったり」
「…記憶はありそうかな。大丈夫だと思いますよ。頭を打ってるからみんな検査するよ。そのために今は、君のことを教えてくれるかな?」
「……父はミュージシャンで母は専業」
「まずは聞いたこと、わかるかな?」

 何を答えようかと「2014年8月8日、曽根崎幸村です、父はグラスアライブソニックってバンドのギターボーカル、曽根原そねはら朔夫のりお、と名乗っていてのんちゃんが愛称です、調べればわかると思います…妹は一花いちか、オレの11ヶ月年下でえっと…」と言っている途中で救急車の人は「あ、意識レベルも記憶も大丈夫ですね」と先生とも話している。

「えっと…そのお父さんと連絡が先に取れました」

 「血圧測りますね~」や「頭は痛くないですか?」や「どこが痛いですか?」と聞かれる。

 …確かに、どこが痛いんだろう…と、血圧を測られながら右腕にすり傷があるのが見えたので「…右腕のこれと…」考えてみれば頭の右側、多分打ったのだろうなと「上…この辺」と、手に巻いたやつを取られたので右の頭の上を押さえる。
 「右側頭部上部…」と書き込み、「はい」と、指先に何かを挟まれた。

 …学くん、こんなもんじゃないんだけど…大丈夫じゃなかったらどうしよう…と不安になれば「…心拍数は高いかな…息は苦しくないですか」だなんて、もうどうでもいいよとそれからほぼ「はい」としか答えなかった。

 病院に着けば「お父さん、いらっしゃってますよ」と言われたが、なるほど狭い場所…丸いつつみたいな機械に寝かされ、それがうるさくて…不安になる音程…と、神経がすり減る。

 終わって保健室のような場所に連れられる最中、父さんがふっと、大丈夫だと言うように無言でうなずく…それだけで安心し泣きそうになった。
 一緒に入ろうとすると、学の…お母さん?変わり?の髪が長い、少しロックな感じの“アカネさん”が見え、父さんに少しうなずいたのが見えた。

 父さんはオレを見て「大丈夫かユキ、」と心配してくれて…医者を見、「よろしくお願いします…それで、どうなんですか」と…曲を作る時とはまた違う真剣な表情で聞く。

「頭は打ったそうなんですが、今のところなんの問題もありませんでした。精神的なダメージが結構あったんだと思います。
 すり傷も少し広範囲ですが…レントゲンでも異常はなく」

 ふう、と父さんが肩の力を抜いたのがわかった。

「しかし…何かあったら緊急外来でもいいのですぐ来てくださいね。頭部に関しては、今は異常はないですが急変することも…おそらく大丈夫かとは思いますが、念の為3~7日くらい。今日は必ず安静にしてください。子供なので、特に…」
「わかりました。
 ユキ、気持ち悪いだとか、あとなんでもいい、何かあれば、例えば…急に喋りにくいとか。すぐになんでも」
「父さん」
「ん?どうした」
「…学くんがギターで殴られたから、その…」
「…少し顔を出して行こうか。
 先生、ありがとうございました」

 そう言って外に出た父さんは、なんとなく隣の保健室を見る…学くんもきっといま、オレと同じような説明をされているのだろう。

 イスに座りふと横から抱きしめるように「ほら」とお茶をくれた父さんは「…何があった?」と優しい声色。

「…多分…佐藤くんがオレのギターを」

 話し始めた中、コツコツと足音がして「すみませんが」と…金髪で…若くて怖そうな女の人が「ウチの子がお宅の、この子に!殴られたって聞いたんだけど!?」と声が響いた。

 …多分、佐藤の母親だろうその人を座ったまま見上げた父さんは「どうも、曽根崎です」と落ち着いている。

「少し待ってください」
「待ってじゃなくて!ねぇウチの子に障害とか残ったら、」
「俺も来たばかりでして。お恥ずかしながらまだ息子と話せていないので判断しかねます。
 幸村、何があったの?」
「だからその子が」
「静かにしてください。一応言いますが3年生の鯉ぐ……平良くんが一番重症らしいですよ」
「……学くん、」
「うん。だから聞きたい」
「………オレが行った時にはもう、学くんは怯えながら…オレのギターを抱き抱えてて…多分、守ってくれてたんだと思う。佐藤くんが「貸せ」って」
「…はぁ!?ウソを」
「…病院なんで、ここ。子供に言語抑圧もよくない。
 それで?」
「……学くんのこと、その……佐藤くんが学くんの吃音をからかっているのは……わかって……。
 学くんがパニックになりかけてたから、嫌だった、嫌だったけど父さんのギター、貸すって言ったら、気に入らないって蹴飛ばされて…」

 父さんがチラッと佐藤母を見ると「なっ、」と黙った。

「その後は?
 無理がない範囲でいいよ。ゆっくり話せる?」

 そのタイミングで、学くんの保健室からアカネさんが出てきた。
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