ひいろのおと

二色燕𠀋

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Hot Pink Fade

6

「ただいま一花。この通り大丈夫デス…」
「心配したんだよっ!パパお疲れ様おかえり!」
「はは…ただいまありがとう一花。お兄ちゃんは強かったよー」

 一花をなでると「もーーー!」と抱きついてくる。
 ほぼ1歳差でこの甘えよう…凄い。

「あ、一花。お兄ちゃん頭は打ったから刺激は与えないだげて…」
「由亜お姉ちゃんに聞いた何マジでヒドくない!?相手!しかも学くんが」
「そう、今入院しちゃって…」
「入院ん!?」

 興奮する一花に父さんが「あー、1回家に入れてー…」と促してくれた。

「きょーはおかゆにしたの!よくわかんなかったから!」
「えっ」
「いや…えっとまぁ…」
「え?間違えた?もしかして」
「あーまぁ、じゃーなんか肉焼くかー…ありがとな一花。合ってる合ってる…病院だからなぁ」

 父さんが目で「すまんユキ」と言っているのがわかる…。

 リビングに行けば、母さんがソファから起き上がり「あっ…」と、気まずそうにパッとケータイから目を離す。

「ただいま」
「あの…朔夫さん、」
「ユキ、一応今日は安静にだってさ。まぁ、多分大丈夫だろうけど、と」
「あ、そうなの、大丈夫なのね」
「概ね、ね。
 ユキも座ってテレビ…あ、ポリゴンショックとか起きそうなら消してなー」
「…えっと…」
「あ、今のテレビって大丈夫なんだっけ。
 一応な一応。昔文杜ふみとが言ってたの思い出した。思っクソ殴られたあとテレビ見たらキラキラチカチカとポリゴンショックみたいになってぶっ倒れたって」

 文杜さん…例の由亜ちゃんパパのバンド“でんにじ”のベース…ちょっと怖い顔の…たまに父さんの配信にコメントしてる人だ…。
 と思い出す中「なにそれー!?」と一花が騒ぐ。

 間の後「あ、それアニメのヤツだっけ…」と母さんが呟く。

「母さんもしかして…子供だった世代?アニメ見て色彩だかなんだかの関係で倒れてけいれん発作起こした子供が続出したやつ」
「何それお兄ちゃんそれになっちゃうの!?」
「っていうか殴られたって本当だったの!?」
「そんな笑えない嘘は吐かないよ。
 お兄ちゃん、頭は打ったけど、とりあえず今日は特に様子見て…て感じ。大体大丈夫だから帰って来れたけど…一応、てやつね。
 ケータイとかもキツかったら見るのをやめること。ユキが倒れたら俺死んじゃう」
「いや父さん…」
「当たり前だろ俺の可愛いユキがてんかんになったら俺も倒れ…てる場合じゃないな。あのクソガキぶっ飛ばしてや……大人だからな俺は。アカネちゃんの話に乗って親を訴えることにする」
「……わかった安静にしてる。何かあったらちゃんと言うよ」
「おう。
 一花、そんな訳で栄養つけよう肉肉。ちゃちゃっと焼いてやるよー」
「パパ水仕事していーの!?」
「大丈夫大丈夫、そんくらいでへにゃるほど柔な指じゃねーから。てか、いつもやってんじゃん?」
「あそっか」
「心配してくれてありがと、可愛いな一花も全く」

 デレッとしているいつもの父さんに「まぁなんかわかったわ」と、母さんはすん、とまたケータイをいじり「あんたは相手になんもしてないでしょうね?」と耳打ちしてきた。

「せ…正当防衛的な感じだったと思うけど多分何も出来てないです…」
「怪我させたのか聞いてんの」
「…一応、相手も病院に…」
麻衣まい

 母さんを名前で呼んだ父さんにピリッとしたのは、一花もオレもだった。

「そんなに言うなら病院来て欲しかったけど」

 ふぅ、と息を吐き「…ユキはただ友達を守っただけだから」と…聞いてわかる、低くなりそうな声をなんとか穏やかに保とうとしている。

「…お兄ちゃんならやりそう」 
「だろ?お兄ちゃんのは名誉の負傷ってやつだ一花。超かっこいくね?」
「うん、でも」
「だな。無茶はした。けど悪いことじゃないから父さんは怒れませーん!ウチの子最強でサイコーだもん」

 それからふんふん、と鼻歌を唄いながら一花に「肉先!に入れて!」と指示を出し仲良く料理をする二人を背にチラッと母さんのスマホが見える。
 “今日はごめんね”、“ウチの子怪我したらしいから様子見らしくて”という文字。ヨシくん。

 …なんとなく、父さんしか来なかった理由はわかっていたけど。母さんはきっと家に居なかったんだ。

 ……オレは学くんもギターも守れなくて。
 これを見逃すことが、何かを壊さないこと……。

 なんだ、全てがもどかしい。

 父さん、オレ、何が正しいのかな…とふと父さんを見れば「んーどした?ユキ」と心配してくれる。

 「あ、いや、お腹空いたのかも」とごまかす。だって、何も言えないし…。
 ニコッと笑ってくれて「すぐ行くすぐ行く」と言ってくれる優しい人…。

 自分のまわりにはたくさん良い人がいるのに。
 だから誰も傷ついて欲しくないけど、いつか傷付いてしまうのが…当たり前だなんて。

「…母さん」

 つい、耳打ちしてしまう。

「何?具合悪いの?」
「オレが怪我したの、ダメだった?」

 母さんは黙り「……何?」と不機嫌。

 ねぇ母さん、それ、わかってるよ。
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