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Stratocaster EC
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ママの背中が見える。
「ダメ、絶対にどかない。出て行って、一回外に出てよ!」
大きな声がする。ママとパパが怒りあっている。
「ママ、ママぁ!」
「学は出ちゃダメ、ここにいなさい!ママが、ママが」
伸びてきた大きい手、ママのカミの毛が掴まれて…。
「ママぁ!」
どっか行っちゃう。
……あれ?
「学っ、」
手があたたかい。
こいちゃんが困った顔をして手をにぎってくれていた。
「………学、汗…寒いだろ」
少しサビしそうな顔でボクのおでこをなでてくれて、タオルでふきながら「だいじょぶ?」と言ってくれた。
ボクは今、病院にいる。
ボク、学校でケガしたんだった。
「……こ、いちゃん」
「ん。起きたね。
センセー、起きました」
こいちゃんが奥に声をかけると「はぁい」と、カンゴフさんが出てきた。
こいちゃんはまたボクの顔をふいてくれて「泣いてる」と言った。
「……痛いとこ…ある?首とか、頭とか」
「………んんう、この、涙はっ、違う」
「…そっか。
イヤな夢を見たんだろうね」
こいちゃんがボクのランドセルから「はい」と、キンチャクを出して手に置いてくれた。
その手に口を当て「ママはここにいる」と言ってグッと今度はそのボクの手を両手でにぎり「……よかった、」と顔を下に向けてしまった。
「泣、かないで、こ、いちゃん」
上手に言葉が出ない。
練習してもずっとずっと、上手くいかない。
「……泣くよそりゃあ…」
カンゴフさんがこいちゃんの肩をぽんぽんし、「よかったですね、お母さん…」と言うけれど。こいちゃんは「…ジツボじゃなくて…」と言っていた。
「父親も血のつながりがないんで…そっちに関しては血液型も違うもんでして…この子のケツエンは今、ソボしかいないんです…」
「はい、お聞きしましたよ。
おばあ様にも連絡をいたしまして、ねんのため来ていただけるということでした。そちらのショルイもお渡しますね」
「はい、わかりました」
「本日はとりあえず、取り急ぎでダンナ様が向かわれているとのことでしたがその…」
「……はい?」
おばあちゃんとメガネくん、来るの!?
あ、声が出ない。
「今日はダンナ様に記入していただくランがあったのでご本人様が来ていただけるらしいのですが…えっと、事情は来てからと言われたのですがなんか……ダンナ様のイニンジョウを持った方もご一緒にくる、と…」
「…あ、なるほどです…。
えっと多分それ…ダンナの職業がちょっと…顔バレとかしちゃならんもんで…」
「…顔バレ?」
「はいまぁ……公務員なんですよ。なので入れかわり立かわり“ダンナ”と名乗る人物が見舞いやらなんやら面倒を見てくれるのではないかと思います。多分、本人が来るならそれでわかるかと…」
「…わかりました。
さて、学くん、起きたね?少しだけまたちょっとセマイ部屋の検査しても大丈夫かな?」
「………セマイ部屋?」
「来た時のこと、覚えてないかなー……あの耳せんした」
「……ぜ、絶対し、しない、と、だダメ?」
「無理そうなら明日起きたらでもいいよー?」
……イヤだな…。
「え、えむ、あーる?」
「そう」
「………」
キライなんだけど……。
「……あたしも付きそうから。
じゃあ、なんの音楽聴こうかね?」
「あまちゃん」
「……と、言うことなんですよねー…さっきは薬を…」
「そうですね、わかりました。大丈夫ですよ」
「だってさ」
「ああ、あまちゃんのね、あの、ガッコーの歌とさサトイくんのあの……ぇA♭M7で、はじ、始まる、やつ」
「え~~、わりとあるし~!なんだろ進行が丸の内サディスティックに似たやつかな」
「ぴ、ピアノはDからの」
「無数にある…丸の内じゃない?レミーミ、ミドドって」
「それは、さ、サトイくんの、やつじゃ、ない」
「まぁそう…ちと今サトイくんに聞いてみるよ」
ケータイをポチポチ始めたこいちゃんに「あ、いや、本当に今じゃなくても…」とカンゴフさんは言っている。
「いやーいずれにしても?」
「少し…。
学くん、絶対音感あったりするんですか?」
「楽器やってるってのもあるとは思いますが」
「えむ、あーるの、音、まマイナーすスケールC♯とD♯とかを、1秒ひゃ、100回以上を流してる、ドとか、レ、とかも入ってるから気持ち悪い音する、」
「…あってます?」
カンゴフさんは「いやわかりませんん、」と慌てた。
「そういうガイネンないっすよねー…。
昔事故った後遺症で吃音になったのと引きかえにこういうなんか、スゴいスキルが付いてきたんですよ。記憶力とかハリネズミ並みです」
「はり、ハリネズミは、忘れ、ないんだって!」
「へ、へぇ…。
あ、では脳波検査に変えてみましょうか?」
「いや、今…うーん…。
学、MRIってつまりギターみたいなもん?」
「ぎたぁ、なら…ああんな、早く、ピッキング、無理」
「ははははっ!かのアベさんでも負けちゃうか!あたしにはあれ、一音にしか聞こえないもん!」
やっと笑ってくれたこいちゃんに「はは、」と笑ったら、少し頭がピキっとして「うっ、」となってしまった。
「あー!ごめんごめんえっと……あ、カンゴシさんここのやつブルートゥースいけますか?来ました音楽」
「え、えっと…USBとか…」
「マジかギガファイル便たのも…えっとぉ…」
「ダメ、絶対にどかない。出て行って、一回外に出てよ!」
大きな声がする。ママとパパが怒りあっている。
「ママ、ママぁ!」
「学は出ちゃダメ、ここにいなさい!ママが、ママが」
伸びてきた大きい手、ママのカミの毛が掴まれて…。
「ママぁ!」
どっか行っちゃう。
……あれ?
「学っ、」
手があたたかい。
こいちゃんが困った顔をして手をにぎってくれていた。
「………学、汗…寒いだろ」
少しサビしそうな顔でボクのおでこをなでてくれて、タオルでふきながら「だいじょぶ?」と言ってくれた。
ボクは今、病院にいる。
ボク、学校でケガしたんだった。
「……こ、いちゃん」
「ん。起きたね。
センセー、起きました」
こいちゃんが奥に声をかけると「はぁい」と、カンゴフさんが出てきた。
こいちゃんはまたボクの顔をふいてくれて「泣いてる」と言った。
「……痛いとこ…ある?首とか、頭とか」
「………んんう、この、涙はっ、違う」
「…そっか。
イヤな夢を見たんだろうね」
こいちゃんがボクのランドセルから「はい」と、キンチャクを出して手に置いてくれた。
その手に口を当て「ママはここにいる」と言ってグッと今度はそのボクの手を両手でにぎり「……よかった、」と顔を下に向けてしまった。
「泣、かないで、こ、いちゃん」
上手に言葉が出ない。
練習してもずっとずっと、上手くいかない。
「……泣くよそりゃあ…」
カンゴフさんがこいちゃんの肩をぽんぽんし、「よかったですね、お母さん…」と言うけれど。こいちゃんは「…ジツボじゃなくて…」と言っていた。
「父親も血のつながりがないんで…そっちに関しては血液型も違うもんでして…この子のケツエンは今、ソボしかいないんです…」
「はい、お聞きしましたよ。
おばあ様にも連絡をいたしまして、ねんのため来ていただけるということでした。そちらのショルイもお渡しますね」
「はい、わかりました」
「本日はとりあえず、取り急ぎでダンナ様が向かわれているとのことでしたがその…」
「……はい?」
おばあちゃんとメガネくん、来るの!?
あ、声が出ない。
「今日はダンナ様に記入していただくランがあったのでご本人様が来ていただけるらしいのですが…えっと、事情は来てからと言われたのですがなんか……ダンナ様のイニンジョウを持った方もご一緒にくる、と…」
「…あ、なるほどです…。
えっと多分それ…ダンナの職業がちょっと…顔バレとかしちゃならんもんで…」
「…顔バレ?」
「はいまぁ……公務員なんですよ。なので入れかわり立かわり“ダンナ”と名乗る人物が見舞いやらなんやら面倒を見てくれるのではないかと思います。多分、本人が来るならそれでわかるかと…」
「…わかりました。
さて、学くん、起きたね?少しだけまたちょっとセマイ部屋の検査しても大丈夫かな?」
「………セマイ部屋?」
「来た時のこと、覚えてないかなー……あの耳せんした」
「……ぜ、絶対し、しない、と、だダメ?」
「無理そうなら明日起きたらでもいいよー?」
……イヤだな…。
「え、えむ、あーる?」
「そう」
「………」
キライなんだけど……。
「……あたしも付きそうから。
じゃあ、なんの音楽聴こうかね?」
「あまちゃん」
「……と、言うことなんですよねー…さっきは薬を…」
「そうですね、わかりました。大丈夫ですよ」
「だってさ」
「ああ、あまちゃんのね、あの、ガッコーの歌とさサトイくんのあの……ぇA♭M7で、はじ、始まる、やつ」
「え~~、わりとあるし~!なんだろ進行が丸の内サディスティックに似たやつかな」
「ぴ、ピアノはDからの」
「無数にある…丸の内じゃない?レミーミ、ミドドって」
「それは、さ、サトイくんの、やつじゃ、ない」
「まぁそう…ちと今サトイくんに聞いてみるよ」
ケータイをポチポチ始めたこいちゃんに「あ、いや、本当に今じゃなくても…」とカンゴフさんは言っている。
「いやーいずれにしても?」
「少し…。
学くん、絶対音感あったりするんですか?」
「楽器やってるってのもあるとは思いますが」
「えむ、あーるの、音、まマイナーすスケールC♯とD♯とかを、1秒ひゃ、100回以上を流してる、ドとか、レ、とかも入ってるから気持ち悪い音する、」
「…あってます?」
カンゴフさんは「いやわかりませんん、」と慌てた。
「そういうガイネンないっすよねー…。
昔事故った後遺症で吃音になったのと引きかえにこういうなんか、スゴいスキルが付いてきたんですよ。記憶力とかハリネズミ並みです」
「はり、ハリネズミは、忘れ、ないんだって!」
「へ、へぇ…。
あ、では脳波検査に変えてみましょうか?」
「いや、今…うーん…。
学、MRIってつまりギターみたいなもん?」
「ぎたぁ、なら…ああんな、早く、ピッキング、無理」
「ははははっ!かのアベさんでも負けちゃうか!あたしにはあれ、一音にしか聞こえないもん!」
やっと笑ってくれたこいちゃんに「はは、」と笑ったら、少し頭がピキっとして「うっ、」となってしまった。
「あー!ごめんごめんえっと……あ、カンゴシさんここのやつブルートゥースいけますか?来ました音楽」
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