Eccentric Late Show

二色燕𠀋

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ドリームランド

3

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 それから忙しなくあれやこれやと30件、昼飯を挟まず夢中になって13時には30部のパンプレットがはけた。

 後半わりと適当に、「まあもし何かありましたら」とパンフレットを渡すだけだった。案外楽勝だった。

「すっげぇな端末」

 終わってみて遅めの昼食をと、適当な銀座ぎんざ辺りの喫茶店に入ると開口一番、北谷はそう言った。

「え?」
「やっぱ先輩すげぇわこんなとき。失神しといてよかったんじゃね?」
「よくねぇよ何がだよ」
「いやさぁ、あんた自分が思ってるより評価高いよマジで」

 そう素直に褒められると悪い気がしないが。なんだかこいつの褒め方素直に喜べないなぁ。

 アイスティを啜る後輩を見て、それでもこいつは確かに女子だなぁとふと思った。然り気無く、「先輩何食います?」とか「腹の空き具合は?」とか、はたまたタバコの吸い殻までまめに見てるし人が灰を落とすタイミングまで、然り気無くずらしている。

 俺が先輩だから、というのだけではない。多分こいつが野郎ならこの然り気無さは出ない。生まれ持って出たもんなんだろう、これって。意識しなくても出る身から出た錆的なやつ。

 なんてぼんやり考えてると、「なんすかなんか、気持ち悪ぃこと考えてません?」ご名答。やっぱこいつ可愛くない。

「お前ってさ」
「はい?」
「読心術的なのあるよね」
「なにその発想と日本語。頭悪そう」

 失礼な。

「てか、古里さんって物凄くわかりやすい。なんだろ、隠し事無いってか嘘下手ってかオープンってかなんも考えてないようで考えてるってか変」

 これまた失礼なやつだな。

「いや、お前が言うのそれ」
「あたしが言いますよ。それってヤバイっすよ。なんか騙しやすそう、言われません?」

 なんかつい最近言われた気がするなぁそれ。

「なんでよ」
「いや良い意味でね?裏表無い。
 けどさぁ、なぁんか、間違ってキャバクラとか行ったら大変そう。多分すげぇ貢ぐタイプ。で、女が、『あたしぃ、お金がなくてぇ』とか言い出したら最終的に家とかまで与えちゃいそう」

 えっ。

「なななにそれ」
「え、なにその覚えあります的な。
つか先輩彼女どうしたんすか結局」

 うわぁぁぁ。

「…逃げられましたよ」
「あぁやっぱり」

 それはそれはつい半年前に。
 俺は危うく結婚詐欺に引っ掛かるところでしたよ。

「やっぱり詐欺だったっしょ」
「…はい」
「ほら素質あるって」

 すげえ。
 褒められた気がしないよ。

「まぁ次いきましょうよ、ね?」
「…そーゆーお前はどうなんだし」
「は?あたし?
 あたしはしばらくこのまんまだい。もーうんざりよ、しばらくは」

 まぁねぇ。
 わかるけれども。まだ若いのに。

「婚期逃しちゃうよ」
「婚期はするときが婚期なの」
「ははぁ…」

 ひれ伏したくなる恋愛論。なるほどっすね。
 しかしそれは若さゆえの論だな。まぁ自由でいいけどね。こいつなら性格以外特に困んなそうだし。

 そんな話をしていたら、なんちゃらサラダカレーライスとヒレカツサンドが運ばれてきた。ちなみにヒレカツサンドは俺。

 男気ある女後輩北谷、ちょっとかっこいいぜ。ヒレカツサンド見て、「ボリュームあるけど昼飯そんなんで足りんの?」とか言ってくるし。

「古里さん、そんで土曜日さ」
「ん?」
「行くんでしょでんにじ」
「あぁふん」
「あたしも取れた。行くわ」
「あほう」
「CDはネットかなぁ。予習はYouTubeかな、間に合わなそうだし」

 さっき二人で眼鏡待ちのときにCD屋に寄ったら、ものの見事になかった。エレクトリック・レインボーの札の真横にエッレグラウンドの札、というCD屋あるある。というか、札ががあっただけでもすげぇ。

 エッレすら、活動休止してほぼ解散状態で10年くらいだ。こっちも札があったのも奇跡。確かに当時売れたしロキノン全盛期、俺もその頃はファックなんて言わなかった時代のロキノンのやつらだが。

 でんにじのギター、げんちゃんこと奥田おくだ弦次げんじがそこのギターだったと言っていた。確かに、げんちゃんの技術ならそうかも。しかし、バンドの方向性がでんにじとだいぶ違う。あーゆー神バンドのギタリストって大抵プライド高そうだから、なんていうか、もっと売れないバンドになんて行かなそうだけど。

 ただげんちゃんの人柄を、あのライブ一本見ただけでもなんとなく、あぁ、多分良いヤツ系なんだろうなって思えた。どれだけでんにじとは一緒にやってんだろ。

「何気にあたしエッレ聴いてたからちょっと楽しみだったり」
「へぇ」
「でも確かあの人…エッレも後続だったんだよなぁ」
「え、そうなの?」
「エッレはほら、大学サークルからみたいなバンドで、なんか最初の方でギター抜けたんだよね」
「あー、バンドあるあるだね」
「エッレ自体、そっから5年くらいしか活動してないし。ボーカルの太田おおた剛士つよしも今はなんかバンドやっては潰しやっては潰しみたいよ」
「え、それで解散してないの」
「だからあのギター、サポート扱いなんじゃないの?」

 あぁ、なるほど。
 じゃぁそれって昨日のあれは。

「嵐だな」
「何が?」
「いや…」

 げんちゃん、まだサポートなんだろうか。

 てか、あいつそんな状態でグリーンハイツに行くとか言ってたのか。

 なんかそれって。

「でも、エッレでは。
まぁ絶対的な上手さってあるけどあのバンドさぁ。それだけだよね」
「つまり?」
「すげー!で終わっちゃう。ある意味冴えない。いや凄いけど。だからボーカルの他のバンドとか、別に聴かないしね。だってすげぇの知ってるし何より後半なんとなく、ボーカルの主張の強さだけでやって来たんだろうなってファンもわかってるよね、多分。
 だからギターとかベースとかドラムがこう、他で活躍するのって、見てみたいよね。だって技術はあった、後は音楽性が“太田”じゃないやつって」
「それ要するにさ、最早バンド名を“太田剛士”にしたらよかったんじゃね?って話?」
「そゆこと。ワンマンすぎたよねって話」

 なるほどなぁ。
 げんちゃん、俺の中でより株が上がった。

 しかしそうすると気の毒だなぁ。

 そんな奴のとこから来たげんちゃん、下手すりゃ一生サポートじゃねぇか。
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