Eccentric Late Show

二色燕𠀋

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Thanks for you.

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 新柴、食って掛かろうとするが、

「多分やめた方が身のためだよ。
 あいつ、頭おかしいからねマジで」

 と文杜が新柴に冷静に告げる。
 それには真樹も頷いて「うん…ガチであの人ヤバイ」と言う。

「え、なにその仕打ち」
「いやオカモトせんせー、多分昔からの積年のやつだよ」
「…国木田、地味に日本語間違っとるぞそれ」
「陽介ってなんか、ヒーローに絶対になれないキャラだね」
「さぁて、で?」

 腕組をして新柴を見つめる一之江。
 そしてそれから真樹を見て「真樹」と声を掛ける。

「てめえの投資はレベル4から300だ。意味わかるかチビ。あとはてめえ次第だクソガキ」
「レベル4って」
「あぁそうだよ。だから来たんだ」
「…つか寝てなくて大丈夫かよあんた」
「お?珍しいな栗村くりむら
 まぁわりと嘘っぱちだよ。だって歩けてんじゃん。退院してるしな。そんなもんなんだよ、意外とね。
 今ならまぁ、よっちゃん、昔のお前の気持ちが漸くわかるかな。
 色んな病名が付いてくの。でも多分違うんだよなぁ、これ。そんな感覚」
「…あんたってさぁ。
 やっぱ俺、あんたみたいな大人になんなくて正解だわ」
「よく言うよ。わりといい線行ってると思うぜ。
 ま、昔話はいいよ。あらしまくん、さぁ早くしろよ。お前それでもこの可愛くねえクソガキ欲しいか?それってすげえよな、生命の神秘レベルだ少しその人類愛、俺に分けて欲しいもんだが?」 

 しゃがみこんで新柴の目を見て言う。

「あの兄ちゃんが言う通りかもな、金じゃなんも買えねぇよ。真樹はこれで例えばあんたんとこに行ったって、多分3日で自殺するだろうな、あんた、そーゆーことだよ」
「ちっ、」 

 痛そうに新柴は立ち上がった。

「その淫乱はやるよ、別に惜しくもない。
 楽しかったよ真樹。精々苦悶に歪んで喘いでな、この男の元でな」
「あらやだねぇ」

 一之江、新柴の腹に一発決め込んだ。

「お前のような愛し方、俺わかんねぇんだわ。
 いるか?300」
「…いらねぇよクソ野郎」
「あっそ。
 チビ、てめえにやるよ。元々そのための金だ。受けとれ設立記念」

 一之江は真樹に現金が入った封筒を投げて寄越した。

「なっ、」

 と文杜は言うが、真樹と二人で中身を見て、それから二人揃って一之江を見つめる。

 新柴は立ち上がり、よろよろと廊下を歩き始めた。

 曲がり角で新柴が見えなくなったあたりで「はぁぁぁ、」と、一之江は座り込み、ポケットから自分も薬を取り出して水を飲んでから、文杜に「ん、」と薬を渡し、その薬は真樹の元へ行く。

「弱めのやつ。酒飲んでても大丈夫じゃないがまぁ、効くんじゃね?はい、水」

 これもまた文杜から真樹に渡され、真樹は素直に水だけ飲んだ。

「あんた、アホだろ…」

 文杜が呆れて封筒の中身を一之江に見せた。

 300万。

 札束の一番上と下以外、白紙だった。

「マジバレたらどうしようかと思ったわあー胃が痛」
「…なんで、」
「バカかお前。
 日本の銀行は大体土日やってねぇんだよ。それをさっき急によっちゃんに言われて用意出来るかっつーの。大体レベ4だよ?300あったらとうに治して海外生活だわ」
「確かに…」
「ほんっといまので5年は縮まったな」

 サイトウがふいに後ろに倒れた。「うおっ、」とナトリがそれを押さえる。

「よっちゃん酒飲んでたからな。
 ヤバめの薬飲ましたら即利いたな。多分明日まで起きねぇな。ま仕方ねぇ」

 なにこの人。
 眺めていた昴の感想はそれだった。

「よーちゃん、」

 泣きそうに真樹が呼ぶこいつ。レベル4の300野郎は「あ?」と少し苦しそうに言ったが、すぐに笑った。

「てめぇ調子こいてんじゃねぇよクソチビ。誰がてめぇみてぇなガキに夢なんて観るかよ。少なくても俺はんなオナニーじみたことすんならまず抱いてるねぇ。んなんでぶっ壊してんじゃねぇよ甘ぇな。それとも俺に抱かれてみる?そんくらいの体力あんだろ、つか、そんくらい大安売りしたんだろバカ、いっぺん死んでこいよ調子込みやがって」
「いや、あんたそれどうかと思う。
 あんた全部聞いてたんなら、尚更」
「だからなんだようるせえな狂犬。てめえもポリシーが昔からねぇなぁ、だが俺もだ、俺もなぁ、よっちゃんの気持ちとかてめえらの気持ちなんざわかった試しがねぇよ。だから言ってんじゃねぇか」
「オカモト先生、だからあんたさ、」
「うるさい台湾。俺にももう捨てるものはない。てめえにはある。その違いだ。
 決別かな。まぁ、俺はよっちゃんにもお前らにも今までなんもしてこれなかったよ。最期の300だ。月曜振り込みでどうだ、しゃちょー」
「いらねぇ、んな、」

 ふと真樹は、文杜を制して首を振り、その束から1束出して文杜に渡した。

「ナトリ、げんちゃん。100づつ」

 そういう真樹の目が鋭く。
 一之江は黙って事を見ていた。

「真樹、どーゆーことだよ」
「あまちゃん、正気?」
「本気で何してんの真樹、」
「よーちゃん、悪いけどもう100くらい文杜に振り込んで。4人だから足りない。
 文杜、悪いけど今晩泊めて。
 ほら、しばらくは、会社立ち上げで忙しいから、曲俺つくれないから…げんちゃん、頼んだよ曲作り。ちょっと進めててよ」

 笑って言う真樹の顔に。

「なに、
 だから俺、それ、やだって言ったやつじゃない?あまちゃん、」

 哀愁のような脱力が見えた。

「なぁにそれ。俺よくわかんないけど」
「…真樹、どした、」

 文杜が思わず頭を抱えるように抱き締めるが、耳元で何かを真樹が囁く。
 それに文杜の動揺が見え、状況は、なんとなく。

「…月曜、よっちゃんに」
「いらない。
 俺は、いい、Vテン。マジで。
 …帰ろう。もう、いいや」
「文杜?」

 ナトリも心配そうで。

「…とにかく、オカモト先生。色々ありがとう。助かったのは事実だ。
 後は俺らでなんとかする。結果報告聞きに生きて後日来て」
「…お前、優しすぎないか国木田」
「ホントはだいぶ昔から嫌いだよあんたら。けど、好きでもあるからさ。
 真樹、文杜、げんちゃん。
 昴くんもありがとう。取り敢えず、帰ろう、今は」

 一之江は仕方なく、しかし少し体を庇うように立ち上がり、ナトリからサイトウを受けとる。

 しかし体格差がある。困っている様子が仕方なく、邪魔者かと察した昴は「手伝います」と提案した。
 「多分救護あっち」と、弦次が指した方とは逆へでんにじは行く。

 多分、一之江が言うとおり、決別だったと後に昴は思うのだった。
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