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Thanks for you.
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あれから、季節が巡り。
あっという間に世間はカウントダウンの季節へ突入したようだ。
俺は今、自宅で一人。
去年からまた見始めるようになったバンド集結のカウントダウン中継をパソコンで観ている。
あれから、特に変わらずに、まだ印刷会社の計算を続け、現在も変わらずに過ごしている。
27歳遅めの会社員3年目を迎えようとする日常とは、そんなもんである。
最近の休日の趣味はパソコンでバンドのライブを見ること。
これを会社の後輩に話したら「相変わらず灰のようっすね」とよくわからない形容を相変わらずされた。
そろそろ家賃更新が差し迫り、三年目だし、いい加減夢でも、少しだけ観ようかなとか、この歳にして少しだけ思ったり、思わなかったりしながら、夢を追いかけるようにパソコンを開いて垂れ流しては、あぁやっぱ現実だと思いカウントダウンを迎えようとする今日この頃。
まさしくカウントダウン3日目の大晦日、あぁ、やっぱ天井のシミ数えるのって確かに片足棺桶だわとか頭を掠めたときだった。
がしゃがしゃっと、玄関から音がして。
なんだなんだ、強盗か何かですかと、少し身構えて一人食っていた鴨そばに箸を起き、玄関を覗く。
しばらく開かないドアに不信感。どうする昴。死んだフリか?いや、ここは投げるものを用意すべきかと考えたときだった。
再び驚愕した。
それは、突然開け放たれた自宅の玄関の驚愕だった。
皆様ご存じないかもしれません。しかし俺は少しご存じなヤツが。
1年近く前、俺は突撃的ライブ飛び入りをした。そこで出会った、マッシュボブな黒髪の、二重でちょっと可愛いらしい顔した黒スーツの兄ちゃん、とはまた変わり、髪色が明るく。
近頃もお日柄はよく、四季折々、まぁ、言うなればお花とか咲かない所謂クソ寒い時期でございます。
こう、27歳にして遅めの社会人3年目に差し掛かろうとしていますと、休日なんて果たして何をして時間を潰しましょうかと…
ずっと、あれから追いかけて。
「真樹…?」
「へへっ…来ちゃった」
ギターを背負ってアンプをぶら下げたそいつは、相変わらず舌足らずだが少し、あれから痩せたように感じる笑顔で気まずそうに言った。
そりゃ、驚愕ですよね。
ずっと画面越しに、この舌足らず野郎の安否とか、色々…、
あぁもう。
「生きて、た…」
眼鏡がぼやけて視界が悪いかもしれないしけれども、THE感動の再会みたいな感じで、俺は最早正直、涙とか感情しか垂れ流せないでいたのでございます。
「そりゃぁねぇ」
えぇ?どうしたの度肝抜かれるでしょと食いつくように抱きつきましたわ。
「はい、よしよし」と、最初はクソつまんねぇほど優しく静かに舌足らずなショタ声で宥めてきたが。
「つか寒ぃ、入れてマジ」
しかしまぁトリッキーなわがまま野郎。忘れていた。こいつどうした。むしろ何を間違えたのか?いや、しかし記憶はリンクはしている。
仕方なく解放して入れてやれば。
ちょっと怒りも沸いてきた。
「お前、なんで、」
俺はあの文面をメディアでライブ後、すぐに見た。
少しニュースになった。
どうやらそこで、あの一之江という男は本当に精神科医のボンボンで医院長職、真樹の元主治医だと、サイトウ氏に聞いた。
それからは全く、何も情報なんてなかった。これが現実だと思い知ったのだ。
それを、お前。
けど、だからどうして。
「いま、どうしたの」
少し怒り気味に聞いてやる。
背負ってきたギターは壁に立て掛け、勝手にソファに座りやがったので、仕方なくコーヒーを入れてやる。
「思い出してさぁ。昴くん。
悪いんだけど1ヶ月泊めてくんない?お金あげるから」
「はぁ?」
「いやほら
今日大晦日、今年最後記念じゃん?病院でカウントダウンするのやだし、来月31日で俺、入院半年記念退院なんだよね」
「はぁ?」
「だから逃げてきた」
「何言ってんのお前」
何言ってるか全然わかんねぇ。しかし真樹は、「なにこれ」だの「あ、そろそろ!」だの画面を観ながら言っている。
「いや、あまちゃん、」
真樹は笑顔ともつかぬ、なんだか切ない…
いや、悪どい表情を一瞬見せ、しかし顔を背けたかと思えば、またパソコンをぼんやり見て、「全員死ね!」と言ったかと思えば笑い出す。
すげぇ、なにこれハンパねぇ。
「ひゃっひゃっ、」と、規制掛けちまえよレベルのラリった笑いはそこまで、次には笑顔で振り返り、俺を見つめてにやりふにゃり。
あれ、てか今更ながら、デジャブ?
俺がコーヒーを持ってけば、「ぃ1、0ぉ!」突然のカウントダウンとそれをテーブルに置くのがマッチ。
正直ビビってぶっかけそうになった。
「やめろバカ!」
「はっはー!」
「で、何、君今どしているの!?でもまぁそんなことより、」
そして突然の電子音。思わず「うぉぅち!」ソファに座れば、首を傾げる真樹。
え、俺のケータイ?
ポケットから漁れば画面に『国木田』
何故?何故このタイミングなの?
取り敢えず出た。久しぶりのヤツすぎてケータイを落としそうになった。
「…もしもし」
『あ、あけましておめでとう。今年もよろしく』
「え、あ、はい」
『ごめんね久しぶり。元気?今大丈夫?』
「あぁ、うん、はい」
『あのさぁ、本当に久しぶりで突然で申し訳ないんだけど…』
「お宅のボーカルかい?」
『ありがとう。いる?』
視界の端で真樹が手と首を振っている。
お前バカだなマジで。
「いないらしいけどどうする?」
『マジかあのクソ野郎、ちょっと変わっ、』
がしゃがしゃ。
『もしもしお久しぶり昴くん』
低い、腹に響く声がした。
「ふ、」
『あ、しー、よしみで黙ったまま。
ちょっとさぁ、居るなら言っといてぇ?てめー明日マジスタジオ来なかったらキャンセル代だせよバカってぇ、』
「…酔ってる?」
『当たり前じゃんもーね、こっちワールドオブクソ社長に怒られぇ、そいつの主治医の気性荒子に叱咤されぇ、なんなのファック。挙げ句いなくなんなしクソリーダー殺』
『昴くんごめん、狂犬病み中。狂犬病の予防接種だよなぁこれ』
「君もキテるなおい」
『まぁね。
あ、そのうちまたライブやるんだー。まぁ気が向いたら来てねー』
がしゃっ。
えっ。
しかしまた一瞬ぴろ。
見ればげんちゃん、ショートメール。
明けましておめでとうございます。
すみません、よろしければ住所を然り気無くナトリさんに送ってください。明日迎えに行かせます。
Happy Newyear.
はぁ。
了解。
良いお年を。
良いヤツだなげんちゃん。
「…怒ってた?」
「…明日来なけりゃ全額出せってさ」
「マジか」
「まぁ、まぁ…」
笑っちまった。
言いそびれたな。
「よかったよ真樹」
「え?」
「…ちゃんと」
愛されてるようで。
思案顔で俺を見つめて言う真樹の「なぁに、気持ち悪いよ昴くん」も。
「はいはい。
さ、蕎麦食った?」
「いや、」
「あまりあるけど、今更だが食う?」
「卵入れるらしいね、地域により」
「いいよ」
「やったね」
太一から何故か送られてきた大量の蕎麦。
茹でるか。
キッチンに立つ。
真樹は案の定、「やることないから弾いていい?」と聞いてくる。
「夜遅いけどまぁいいよ。うるさくしたら放り出すから」
「鬼畜眼鏡だ」
よっこいしょとギターを取り、また座り。
どうやら、俺の来月末までの予定が埋まった。
そうだもう一つ。
「あまちゃん」
「ん?」
振り返る彼は、
茶色いビー玉のような綺麗な、純粋な瞳。
「遅くなったけど、おかえり、真樹」
あっという間に世間はカウントダウンの季節へ突入したようだ。
俺は今、自宅で一人。
去年からまた見始めるようになったバンド集結のカウントダウン中継をパソコンで観ている。
あれから、特に変わらずに、まだ印刷会社の計算を続け、現在も変わらずに過ごしている。
27歳遅めの会社員3年目を迎えようとする日常とは、そんなもんである。
最近の休日の趣味はパソコンでバンドのライブを見ること。
これを会社の後輩に話したら「相変わらず灰のようっすね」とよくわからない形容を相変わらずされた。
そろそろ家賃更新が差し迫り、三年目だし、いい加減夢でも、少しだけ観ようかなとか、この歳にして少しだけ思ったり、思わなかったりしながら、夢を追いかけるようにパソコンを開いて垂れ流しては、あぁやっぱ現実だと思いカウントダウンを迎えようとする今日この頃。
まさしくカウントダウン3日目の大晦日、あぁ、やっぱ天井のシミ数えるのって確かに片足棺桶だわとか頭を掠めたときだった。
がしゃがしゃっと、玄関から音がして。
なんだなんだ、強盗か何かですかと、少し身構えて一人食っていた鴨そばに箸を起き、玄関を覗く。
しばらく開かないドアに不信感。どうする昴。死んだフリか?いや、ここは投げるものを用意すべきかと考えたときだった。
再び驚愕した。
それは、突然開け放たれた自宅の玄関の驚愕だった。
皆様ご存じないかもしれません。しかし俺は少しご存じなヤツが。
1年近く前、俺は突撃的ライブ飛び入りをした。そこで出会った、マッシュボブな黒髪の、二重でちょっと可愛いらしい顔した黒スーツの兄ちゃん、とはまた変わり、髪色が明るく。
近頃もお日柄はよく、四季折々、まぁ、言うなればお花とか咲かない所謂クソ寒い時期でございます。
こう、27歳にして遅めの社会人3年目に差し掛かろうとしていますと、休日なんて果たして何をして時間を潰しましょうかと…
ずっと、あれから追いかけて。
「真樹…?」
「へへっ…来ちゃった」
ギターを背負ってアンプをぶら下げたそいつは、相変わらず舌足らずだが少し、あれから痩せたように感じる笑顔で気まずそうに言った。
そりゃ、驚愕ですよね。
ずっと画面越しに、この舌足らず野郎の安否とか、色々…、
あぁもう。
「生きて、た…」
眼鏡がぼやけて視界が悪いかもしれないしけれども、THE感動の再会みたいな感じで、俺は最早正直、涙とか感情しか垂れ流せないでいたのでございます。
「そりゃぁねぇ」
えぇ?どうしたの度肝抜かれるでしょと食いつくように抱きつきましたわ。
「はい、よしよし」と、最初はクソつまんねぇほど優しく静かに舌足らずなショタ声で宥めてきたが。
「つか寒ぃ、入れてマジ」
しかしまぁトリッキーなわがまま野郎。忘れていた。こいつどうした。むしろ何を間違えたのか?いや、しかし記憶はリンクはしている。
仕方なく解放して入れてやれば。
ちょっと怒りも沸いてきた。
「お前、なんで、」
俺はあの文面をメディアでライブ後、すぐに見た。
少しニュースになった。
どうやらそこで、あの一之江という男は本当に精神科医のボンボンで医院長職、真樹の元主治医だと、サイトウ氏に聞いた。
それからは全く、何も情報なんてなかった。これが現実だと思い知ったのだ。
それを、お前。
けど、だからどうして。
「いま、どうしたの」
少し怒り気味に聞いてやる。
背負ってきたギターは壁に立て掛け、勝手にソファに座りやがったので、仕方なくコーヒーを入れてやる。
「思い出してさぁ。昴くん。
悪いんだけど1ヶ月泊めてくんない?お金あげるから」
「はぁ?」
「いやほら
今日大晦日、今年最後記念じゃん?病院でカウントダウンするのやだし、来月31日で俺、入院半年記念退院なんだよね」
「はぁ?」
「だから逃げてきた」
「何言ってんのお前」
何言ってるか全然わかんねぇ。しかし真樹は、「なにこれ」だの「あ、そろそろ!」だの画面を観ながら言っている。
「いや、あまちゃん、」
真樹は笑顔ともつかぬ、なんだか切ない…
いや、悪どい表情を一瞬見せ、しかし顔を背けたかと思えば、またパソコンをぼんやり見て、「全員死ね!」と言ったかと思えば笑い出す。
すげぇ、なにこれハンパねぇ。
「ひゃっひゃっ、」と、規制掛けちまえよレベルのラリった笑いはそこまで、次には笑顔で振り返り、俺を見つめてにやりふにゃり。
あれ、てか今更ながら、デジャブ?
俺がコーヒーを持ってけば、「ぃ1、0ぉ!」突然のカウントダウンとそれをテーブルに置くのがマッチ。
正直ビビってぶっかけそうになった。
「やめろバカ!」
「はっはー!」
「で、何、君今どしているの!?でもまぁそんなことより、」
そして突然の電子音。思わず「うぉぅち!」ソファに座れば、首を傾げる真樹。
え、俺のケータイ?
ポケットから漁れば画面に『国木田』
何故?何故このタイミングなの?
取り敢えず出た。久しぶりのヤツすぎてケータイを落としそうになった。
「…もしもし」
『あ、あけましておめでとう。今年もよろしく』
「え、あ、はい」
『ごめんね久しぶり。元気?今大丈夫?』
「あぁ、うん、はい」
『あのさぁ、本当に久しぶりで突然で申し訳ないんだけど…』
「お宅のボーカルかい?」
『ありがとう。いる?』
視界の端で真樹が手と首を振っている。
お前バカだなマジで。
「いないらしいけどどうする?」
『マジかあのクソ野郎、ちょっと変わっ、』
がしゃがしゃ。
『もしもしお久しぶり昴くん』
低い、腹に響く声がした。
「ふ、」
『あ、しー、よしみで黙ったまま。
ちょっとさぁ、居るなら言っといてぇ?てめー明日マジスタジオ来なかったらキャンセル代だせよバカってぇ、』
「…酔ってる?」
『当たり前じゃんもーね、こっちワールドオブクソ社長に怒られぇ、そいつの主治医の気性荒子に叱咤されぇ、なんなのファック。挙げ句いなくなんなしクソリーダー殺』
『昴くんごめん、狂犬病み中。狂犬病の予防接種だよなぁこれ』
「君もキテるなおい」
『まぁね。
あ、そのうちまたライブやるんだー。まぁ気が向いたら来てねー』
がしゃっ。
えっ。
しかしまた一瞬ぴろ。
見ればげんちゃん、ショートメール。
明けましておめでとうございます。
すみません、よろしければ住所を然り気無くナトリさんに送ってください。明日迎えに行かせます。
Happy Newyear.
はぁ。
了解。
良いお年を。
良いヤツだなげんちゃん。
「…怒ってた?」
「…明日来なけりゃ全額出せってさ」
「マジか」
「まぁ、まぁ…」
笑っちまった。
言いそびれたな。
「よかったよ真樹」
「え?」
「…ちゃんと」
愛されてるようで。
思案顔で俺を見つめて言う真樹の「なぁに、気持ち悪いよ昴くん」も。
「はいはい。
さ、蕎麦食った?」
「いや、」
「あまりあるけど、今更だが食う?」
「卵入れるらしいね、地域により」
「いいよ」
「やったね」
太一から何故か送られてきた大量の蕎麦。
茹でるか。
キッチンに立つ。
真樹は案の定、「やることないから弾いていい?」と聞いてくる。
「夜遅いけどまぁいいよ。うるさくしたら放り出すから」
「鬼畜眼鏡だ」
よっこいしょとギターを取り、また座り。
どうやら、俺の来月末までの予定が埋まった。
そうだもう一つ。
「あまちゃん」
「ん?」
振り返る彼は、
茶色いビー玉のような綺麗な、純粋な瞳。
「遅くなったけど、おかえり、真樹」
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