Eccentric Late Show

二色燕𠀋

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CRAVING【短編】

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 殺伐としている。

 エフェクターにテレキャスターを繋いで、座りこんで捻ったり弦を弾いたりして隣のやつが「あぁそれ」と言うまでなんとなくそれを続けていようというのが俺の身に付いた習慣だったのだが。

弦次げんじ、よくね?今日はもう」

 最近はそれ。言うのは左側のこの人で。

 タカさん(高安たかやす雄仁ゆうじん)は、俺より多分5つは年上で、このバンドでは初期からベースを担当している。

 このバンド、売れている。

 俺が大学生時代、特に将来やらなにやらを決めずに遊び呆け、趣味のライブ巡りやバンドサークルにのめり込んでいた頃にこのバンドに出会った。

 大学に何かの拍子でこのバンドが来たことがある。サークルの部屋で一人、ギターを弾いていた時にボーカルギターの太田おおた剛士つよしは言ったのだ、「俺んとこ来れば?」と。

「お前考えたの?そのパワーコードの流れ」
「はぁ…」

 はぁ、しか出てこなかった。

 だってこんなよくわからん大学に、あの、わりとフェスとかで活躍している、しかし有名かと言われればまぁまぁ、曲は聴いたことがあって、恐らくバンド好きならちゃんと名前まで行き着くバンドの、つまりは俺や俺のサークルバンド仲間級のやつらが知っている、どちらかと言えば“コア”とか“カリスマ”分類のバンドのボーカルが、まさか大学にサークルの部室に来るなんて、思い付くだろうか、凡才大学生に。

「バンドやってる?」
「え、まぁ、はぁ」

 そして俺がやっていたその頃のバンド、実は。
 俺が今一人でギターを部室で鳴らしているだけあって、まぁ、解散の危機だったわけだ。

「全員呼び出してよ。聴いてやるよ」
「えっ」

 マジかよ。

 それしか出てこなかった、心の中で。

 それからすぐさまケータイでドラムとギターボーカルとベースを呼び出した。電話で出なければメールをすれば1分以内で返信が返ってきた。

 30分以内でサークルバンドメンバーが全員集ると太田から一言、「一番の曲」という、シンプルだが漠然とした要求をされてしまい。 

 メンバーで顔を見合わせ、話し合いをしてる時点で「はいはいごくろーさん。お前。推しの曲、なんか弾いて」

 と、手を叩いて終了宣言から、更にそんな要求をされてしまい。

 メンバーの痛い視線を感じながら頭に浮かんだ曲は、ベタすぎるがセックス・ピストルズの『God Save The Queen』の入り出しイントロしかなくて。というか入り出しイントロで他メンバーがアホ面こいてやがって。

「oh, God save the queen!」

 おぉ。
 すげぇこいつ。てか太田。
 この一回目、微妙なoh,つかohとも取れない微妙な呼吸みたいなやつ、入れてきた。流石プロは違う。この時の俺はそう思った。

 そう思ったらコードもストロークもカッティング、いやもう単語なんてどうだっていい。身に染みたままに『sexpistols』の、でも俺がいて、ただ、歌った『太田剛士』はいたか、どうか。

 ある程度気持ちよく弾いた。
 いつの間にか太田は歌い止めていたけど多分、『No,future No,future』の一回目あたりで太田がにやっと笑って左手を差し伸べてきたから。

 多分俺も、弾かせてすらもらえなかった他のメンバーと同じアホ面こいて弾き止めてしまったわけで。

「excellent。君、名前は?」
「は、はぁ?」
「あ、俺知ってるかな?ele groundの太田剛士」
「あぁ、はい、そりゃぁ」
「ははっ、そう!」

 楽しそうに太田がそう言って。

「…奥田おくだ弦次げんじです」
「ふぅん。君、ギターで来ない?ウチ今出来るヤツ欲しいんだけど」

 マジか。
 メンバーはひたすらにアホ面こいていた。もちろん、俺も。

「お…、俺?」
「君。俺のEnglishに最適。君のGod Saveを俺にくれない?」
「え、マジっすか」

 メンバーを見てみれば。

「だって、」

 太田はそれに、バカにしたような笑い浴びせる。 

「君たち、今の曲を知っているか?世代じゃないとかセンスない、洋楽わかんないとかほざかないよねぇ、まさか、ギター持ってんなら」

 メンバー総じて俯いた。
 待った。俺の基準はそれなのか。
 確かにこいつらは、J-popのバカバンドってかバンドですらないが。

「いやすんません太田さん。
 俺他に違うバンドやってるんで」

 嘘を吐いてしまった。

 それを聞いたメンバーはアホ面を通り越して怒りで間を置いて「はぁ!?」と、なじるように俺に言ってきたが、俺は至極冷静に、「だってお前ら」と告げる。

「俺が何をしたいかなんて知らねぇじゃねぇか。お前らピストルズもニルヴァーナもボン・ジョビだって、
日本人ならキャロルも、清志郎きよしろうすら知らねぇようなクソバンド、てかバンドじゃねぇんだよ!J-popぅ?んなもんタワレコ行きゃあいくらだって売ってんだよ!」
「なんだとてめえ!」
「俺はてめえらと違って別にモテたくてシャカシャカやってるわけじゃねぇわアホ。んなんマラカスでも振ってキャバクラ行ってろ!」

 食いついてきたリーダーに言い放つ。しかし他メンバー、「いやよくわかんねぇ」だの「よくね?」だのほざいてやがる。

 あぁそうさ。俺だって偏屈過ぎて、と言うか偏屈かもよくわかってなくて何言ってかわかんねぇよ、このアホ面ギタボにアホ面ベースにアホ面ドラム!

「話済んだ?行こ」
「はぁ?」

 だが太田。
 俺の予想以上に恐ろしくマイペース、外国人並みの神経だった。 
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