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おじいちゃんは目を丸くして「こうで痛いんか、痛くないんか!?」と聞いてくる。
うーん…。
「誰かぁ、呼ばねば」
「い、痛くないです大丈夫!」
「ほうかぁ…」
おじいちゃんは安心したように肩を下げ「まぁずおやげねぇなぁ、ごしてーな、寝てろな」と頭を撫でてくれた。
「そっからのことは、治してからだんに」
「あ、はい…あの」
「なんだぁ?」
「…長野から車で来たって…」
「おぉ、ほうだで。いんや遠かったなぁ…」
「すみません、ありがとうございます…あの…」
「あーあーえーんよ、気にしねで。今は寝ときなさいな」
「…ハイ」
「家においで。まつめるから心配しなさんな」
「…ハイ」
よくわからないけど取り敢えず寝よ…とは言っても多分、結構寝たんだけども…。
と思い目を閉じてもすぐに「慧はいくつになったんだ?」とおじいちゃんが聞いてくるのでまた目を開けると「あぁすまねぇ」と、にこにこしている。
「じゅ…15デス」と言えば「ほーかそら大きいわけだ」と嬉しそうなので、まぁいっか、と思えてきたりして。
ガタガタとしたままどうやらおばあちゃんが帰って来て、「まぁずしょうしぃ!連れてかれただ!」と怒っている。
「そんだなぁ」
「慧ちゃんは、ほんであんべぇなっちょだい?こんな…おやげねぇなぁ、」
めちゃくちゃ泣いている。取り敢えず覚えたので「…元気デス」と答えられた。
「ほうかほうかぁ、あんな娘ぶちゃる!安心せぇ、寝とき、ばあちゃんとじいちゃんおるだ、こっからずっとおるでぇ、」
「…ハイ」
「あれはな、捕まっただ。慧ちゃんにこんな…」
「捕まった!?」
えっ。
おじいちゃんはおばあちゃんを「まぁまぁ、待て待て」とおっとり宥める。
なんだか二人で色々「あれは親でね、」とか「そんねにいぼつんなぁ」とかやっているが本当に何を言ってるかわからない。どうしよう。
とにかく流さねばと「だ、大丈夫です、ハイ」と言ってもおばあちゃんは「だいじょぶでねっ!」と、どうやら鎮まらないようだ。
「ほれほれ慧はごしてーな、ばあさん」出た、ごしてーな。しかしどうやらそれで「うむぅ…」と小さくなったらしい。
「慧、ときに寝ときなさい、ばあさんはおらがまつめるだ、」
うふぅ…と泣き始めるおばあちゃんに、いや申し訳ないし気が散るわ…と思うけれども、きっととても心配してくれたんだと「ハイ…」と言うことしか出来なかった。
凄く悲しそうだ。そして母は捕まってしまったらしい。
これからどうするんだろう…これは多分、なんとなく、おじいちゃんとおばあちゃんの家に住むことになるのではないか…と、わかるからこそ不安があった。
「あんなん嘘っぱちだ…!」と言うのに、あ、そこは変わらないのねと…だからこそなんとなく、状況はわかった。
母が嘘っぱち宗教にハマった挙げ句、俺は多分死にかけ、母は…殺人未遂か何かで捕まってしまった…んだろうか…。
一日目は、そんなカオスな状態で終わってしまった。
これは、高校決まってなくて…決まっちゃてたようなもんだけど…よかったんじゃないか…。
反抗をしてみたがここ数ヵ月、確かに体力はなかった。
頭も回らず空虚になってしまっていただけで、暇な時間などいままでなかったのだと思い知るくらいには、どうやら軽い症状だったようだ。
病院にこんな元気な中学生?高校生がいてもいいのだろうか、だとか、そんなところから朝は始まっていた。
左手は気付けば大体、震えている。意図もしてないのにそうなるのだから不気味で仕方ない。
医者に言えば、「気になるうちは」と震えを取る薬を貰い、大きくて煩い機械に入ったりなんだりと、二日目は色々な検査で終わってしまった。
結局、検査結果が出るまでと、やはり一週間の入院、結果によってはもう少し長いと言われてしまった。
こうなってみて、初めて思い返す機会が出来た。
今頃学校のみんなは何をしているのだろうとか、そもそも高校が……あとは、医者に「フラッシュバック」だと言われた症状。
神父の息遣いが聞こえ、訳がわからないまま「泉」で清めの儀式をされ、そして台にうつ伏せにされたままアレを突っ込まれた。
あの時、口から内臓やらなんやらが出るかと思ったし息も止まった。だけど、教会のステンドグラスは皮肉にも綺麗で。
暴れたはずだけど、気付いたらこうなっている。
「なんでも食べていいのよ、食べられるなら」
看護婦さんにも言われたけど、悔しかった、クセになっていた。
おじいちゃんとおばあちゃんも病院に来てくれるのだから、それに取り繕わなければ、と思っているのも辛い。
別に母のことなんて嫌いではなかった。ただ、どこかで気の毒だと思っていたのに、それすらも取り残して知らない間に捕まったらしい。
それは悪いことだったとすぐにわかった。警察が状況を聞きに来たからだ。
この時ばかりはどんな取り繕いも出来ず、警察を追い返したおじいちゃんもおばあちゃんも泣いていた。
でも、どうしてそれが悲しいことなのかはわからない、痛くて苦しかっただけ。
どこか遠くで冷めているからこそ多分、却って辛かったのだ。
薬は三日目から急に増えた。でも、元気なんだけどなと、ここまで来れば現実と自分にギャップがあると気付かされた。
うーん…。
「誰かぁ、呼ばねば」
「い、痛くないです大丈夫!」
「ほうかぁ…」
おじいちゃんは安心したように肩を下げ「まぁずおやげねぇなぁ、ごしてーな、寝てろな」と頭を撫でてくれた。
「そっからのことは、治してからだんに」
「あ、はい…あの」
「なんだぁ?」
「…長野から車で来たって…」
「おぉ、ほうだで。いんや遠かったなぁ…」
「すみません、ありがとうございます…あの…」
「あーあーえーんよ、気にしねで。今は寝ときなさいな」
「…ハイ」
「家においで。まつめるから心配しなさんな」
「…ハイ」
よくわからないけど取り敢えず寝よ…とは言っても多分、結構寝たんだけども…。
と思い目を閉じてもすぐに「慧はいくつになったんだ?」とおじいちゃんが聞いてくるのでまた目を開けると「あぁすまねぇ」と、にこにこしている。
「じゅ…15デス」と言えば「ほーかそら大きいわけだ」と嬉しそうなので、まぁいっか、と思えてきたりして。
ガタガタとしたままどうやらおばあちゃんが帰って来て、「まぁずしょうしぃ!連れてかれただ!」と怒っている。
「そんだなぁ」
「慧ちゃんは、ほんであんべぇなっちょだい?こんな…おやげねぇなぁ、」
めちゃくちゃ泣いている。取り敢えず覚えたので「…元気デス」と答えられた。
「ほうかほうかぁ、あんな娘ぶちゃる!安心せぇ、寝とき、ばあちゃんとじいちゃんおるだ、こっからずっとおるでぇ、」
「…ハイ」
「あれはな、捕まっただ。慧ちゃんにこんな…」
「捕まった!?」
えっ。
おじいちゃんはおばあちゃんを「まぁまぁ、待て待て」とおっとり宥める。
なんだか二人で色々「あれは親でね、」とか「そんねにいぼつんなぁ」とかやっているが本当に何を言ってるかわからない。どうしよう。
とにかく流さねばと「だ、大丈夫です、ハイ」と言ってもおばあちゃんは「だいじょぶでねっ!」と、どうやら鎮まらないようだ。
「ほれほれ慧はごしてーな、ばあさん」出た、ごしてーな。しかしどうやらそれで「うむぅ…」と小さくなったらしい。
「慧、ときに寝ときなさい、ばあさんはおらがまつめるだ、」
うふぅ…と泣き始めるおばあちゃんに、いや申し訳ないし気が散るわ…と思うけれども、きっととても心配してくれたんだと「ハイ…」と言うことしか出来なかった。
凄く悲しそうだ。そして母は捕まってしまったらしい。
これからどうするんだろう…これは多分、なんとなく、おじいちゃんとおばあちゃんの家に住むことになるのではないか…と、わかるからこそ不安があった。
「あんなん嘘っぱちだ…!」と言うのに、あ、そこは変わらないのねと…だからこそなんとなく、状況はわかった。
母が嘘っぱち宗教にハマった挙げ句、俺は多分死にかけ、母は…殺人未遂か何かで捕まってしまった…んだろうか…。
一日目は、そんなカオスな状態で終わってしまった。
これは、高校決まってなくて…決まっちゃてたようなもんだけど…よかったんじゃないか…。
反抗をしてみたがここ数ヵ月、確かに体力はなかった。
頭も回らず空虚になってしまっていただけで、暇な時間などいままでなかったのだと思い知るくらいには、どうやら軽い症状だったようだ。
病院にこんな元気な中学生?高校生がいてもいいのだろうか、だとか、そんなところから朝は始まっていた。
左手は気付けば大体、震えている。意図もしてないのにそうなるのだから不気味で仕方ない。
医者に言えば、「気になるうちは」と震えを取る薬を貰い、大きくて煩い機械に入ったりなんだりと、二日目は色々な検査で終わってしまった。
結局、検査結果が出るまでと、やはり一週間の入院、結果によってはもう少し長いと言われてしまった。
こうなってみて、初めて思い返す機会が出来た。
今頃学校のみんなは何をしているのだろうとか、そもそも高校が……あとは、医者に「フラッシュバック」だと言われた症状。
神父の息遣いが聞こえ、訳がわからないまま「泉」で清めの儀式をされ、そして台にうつ伏せにされたままアレを突っ込まれた。
あの時、口から内臓やらなんやらが出るかと思ったし息も止まった。だけど、教会のステンドグラスは皮肉にも綺麗で。
暴れたはずだけど、気付いたらこうなっている。
「なんでも食べていいのよ、食べられるなら」
看護婦さんにも言われたけど、悔しかった、クセになっていた。
おじいちゃんとおばあちゃんも病院に来てくれるのだから、それに取り繕わなければ、と思っているのも辛い。
別に母のことなんて嫌いではなかった。ただ、どこかで気の毒だと思っていたのに、それすらも取り残して知らない間に捕まったらしい。
それは悪いことだったとすぐにわかった。警察が状況を聞きに来たからだ。
この時ばかりはどんな取り繕いも出来ず、警察を追い返したおじいちゃんもおばあちゃんも泣いていた。
でも、どうしてそれが悲しいことなのかはわからない、痛くて苦しかっただけ。
どこか遠くで冷めているからこそ多分、却って辛かったのだ。
薬は三日目から急に増えた。でも、元気なんだけどなと、ここまで来れば現実と自分にギャップがあると気付かされた。
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