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Act.4
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「コーヒー、頂きます」
「…どうぞ。
えっと、よくわからん」
「…僕もですよ」
五十嵐が「あぁそうか…」と言葉を探している。
コーヒーは肺に染みるように暖かい。
しかし五十嵐は、やはりイライラしたように側にあるタバコへ手を伸ばしては諦めたので、「どうぞ、」と促した。
僕をチラ見しバツが悪そうに「どうも」と言って、タバコに火をつける。
「…多分、昔の夢、見ました」
「昔の夢?」
「誰かの指を噛み切ったところでいまに至ります」
「…怖いこと言うなよ~…、」
「五十嵐さん」
「なに、」
「僕って怖いですか」
その言葉に「えっと…」と濁すのはわかっている。当たり前のそれすらも、肺か、心臓か、心に染みて麻痺していく。
「…取り敢えず金輪際はやめるから、」
「…僕は不衛生ですね」
「だから何がだよ、悪かったって」
「別に貴方が悪いと思う必要なんて」
「性格悪いな、お前、」
睨まれた。
僕の心臓はそれで一瞬止まってしまった気がして、同時に動きが止まってしまったことにも気が付いた。
「………、」
それにも五十嵐が言葉を詰まらせるのだから、どうしたらいいかなんてわからないのだけど、そう言えば先ほど頬を殴ってしまったと、僕はカップを置いてそこに手を伸ばしていた。
それにも五十嵐は何も言わない。
「…僕の、手を、縛った方がいいです、」
「…あぁねっ、」
今度は僕の手が払われ、「からかうなよ」と言われてしまった。
「良くないぞお前。俺が言えたことじゃないけど。俺はそんなSじゃない」
「いや、病院では、やるもんなんです。錯乱して、暴れる患者になんて」
「お前は別に家では患者じゃない」
思考が止まった。
「だが正直あんなときどうしていいかわからん。から、もうやめる、俺も忘れる」
やめる。忘れる。
……あれ?
「く…び、ですか、」
「は?え?」
「あの、」
「あー……、ごめん忘れろ。うんもう今日は俺が悪いからわかった、上で寝る。あぁ、けどお前はこれは…普通に寝れるのか?」
「…え?」
「…いいや、一回外でタバコ吸ってくるわ、」
そう言ってタバコを持って立ち上がった五十嵐に唖然として思考がまた、止まってしまった。今日の夕飯は、コーヒーが、身に染みる。
結局僕はそんな五十嵐がベランダに出た背中を暫く動けずにいて、あぁ疲れたな、もうそのパソコンは脱け殻だろうと頭のどこかでわかったからまたベットに寝転んだ。
思考回路が定まっていないと、理解はする。
だけどモヤモヤする、本当に僕は悪かったか、かといって五十嵐は悪くないのだし、そもそもその虚像の箱の中は何回も死んでいるじゃないかと結論付けた。なんでそんなに過去に縛られるのか、それこそSMプレイなんじゃないかと思ったら、「ははっ…、」と漏れ出ていた。
一つのことしか出来ない、支配されるようだ、僕は。
今日の朝御飯はきっとコーヒーで良いのだし、起きたら勝手に五十嵐がレタスをちぎって皿に盛り付けてくれるのだ。
そう考えたら軽くなって、目蓋が眠気と共に降りてきた。
海のカップには1匹の揚羽が迷い込んでいた、そしてそうだ、僕は『破壊』の中で確か、綺麗な女性が野原で座り込んでいる、そんな綺麗な絵を見たはずだったんだ。
ゆっくり、世界が袋綴じになってゆく。
結局それから寝る直前まで、五十嵐がベランダから帰ってくる気配はなかった。
自意識過剰過ぎたな。頭を空にしようと、目を閉じた。
「…どうぞ。
えっと、よくわからん」
「…僕もですよ」
五十嵐が「あぁそうか…」と言葉を探している。
コーヒーは肺に染みるように暖かい。
しかし五十嵐は、やはりイライラしたように側にあるタバコへ手を伸ばしては諦めたので、「どうぞ、」と促した。
僕をチラ見しバツが悪そうに「どうも」と言って、タバコに火をつける。
「…多分、昔の夢、見ました」
「昔の夢?」
「誰かの指を噛み切ったところでいまに至ります」
「…怖いこと言うなよ~…、」
「五十嵐さん」
「なに、」
「僕って怖いですか」
その言葉に「えっと…」と濁すのはわかっている。当たり前のそれすらも、肺か、心臓か、心に染みて麻痺していく。
「…取り敢えず金輪際はやめるから、」
「…僕は不衛生ですね」
「だから何がだよ、悪かったって」
「別に貴方が悪いと思う必要なんて」
「性格悪いな、お前、」
睨まれた。
僕の心臓はそれで一瞬止まってしまった気がして、同時に動きが止まってしまったことにも気が付いた。
「………、」
それにも五十嵐が言葉を詰まらせるのだから、どうしたらいいかなんてわからないのだけど、そう言えば先ほど頬を殴ってしまったと、僕はカップを置いてそこに手を伸ばしていた。
それにも五十嵐は何も言わない。
「…僕の、手を、縛った方がいいです、」
「…あぁねっ、」
今度は僕の手が払われ、「からかうなよ」と言われてしまった。
「良くないぞお前。俺が言えたことじゃないけど。俺はそんなSじゃない」
「いや、病院では、やるもんなんです。錯乱して、暴れる患者になんて」
「お前は別に家では患者じゃない」
思考が止まった。
「だが正直あんなときどうしていいかわからん。から、もうやめる、俺も忘れる」
やめる。忘れる。
……あれ?
「く…び、ですか、」
「は?え?」
「あの、」
「あー……、ごめん忘れろ。うんもう今日は俺が悪いからわかった、上で寝る。あぁ、けどお前はこれは…普通に寝れるのか?」
「…え?」
「…いいや、一回外でタバコ吸ってくるわ、」
そう言ってタバコを持って立ち上がった五十嵐に唖然として思考がまた、止まってしまった。今日の夕飯は、コーヒーが、身に染みる。
結局僕はそんな五十嵐がベランダに出た背中を暫く動けずにいて、あぁ疲れたな、もうそのパソコンは脱け殻だろうと頭のどこかでわかったからまたベットに寝転んだ。
思考回路が定まっていないと、理解はする。
だけどモヤモヤする、本当に僕は悪かったか、かといって五十嵐は悪くないのだし、そもそもその虚像の箱の中は何回も死んでいるじゃないかと結論付けた。なんでそんなに過去に縛られるのか、それこそSMプレイなんじゃないかと思ったら、「ははっ…、」と漏れ出ていた。
一つのことしか出来ない、支配されるようだ、僕は。
今日の朝御飯はきっとコーヒーで良いのだし、起きたら勝手に五十嵐がレタスをちぎって皿に盛り付けてくれるのだ。
そう考えたら軽くなって、目蓋が眠気と共に降りてきた。
海のカップには1匹の揚羽が迷い込んでいた、そしてそうだ、僕は『破壊』の中で確か、綺麗な女性が野原で座り込んでいる、そんな綺麗な絵を見たはずだったんだ。
ゆっくり、世界が袋綴じになってゆく。
結局それから寝る直前まで、五十嵐がベランダから帰ってくる気配はなかった。
自意識過剰過ぎたな。頭を空にしようと、目を閉じた。
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