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Act.4
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空気も壁も薄汚れた狭い箱のような天井を眺めている。
多分僕はベットに仰向けで、今日の夕飯は豆腐だけで良い、もう何も食べる気すら起きないなと考えていたら「あぁ、コレ凄いねぇ…」だなんて、粘っこい、不衛生で不潔な声が耳元に聞こえて来る気がするんだ。
今日の夕飯は水と…豆腐でなく果物が入ったゼリーが良い、透明で透けていて、輝いて綺麗で、「ほぅら自分で見てごらんよ」と湿った、男の声がするような気がして今日の夕飯は、もうスポーツ飲料で充分だと頭のなかで考えていたら、誰かが覆い被さって「佐奈斗、」と切れそうな声が聞こえてきた。
ほ…ら。
「……っ、」
喉が詰まったような、いや、圧迫されたような、そんな苦しさに頭が今日の夕飯は、今日の夕飯はもう、なんでもいいから絞め殺して欲しいだなんて舌を噛もうとしたときにがりっと、とても硬い何かを噛んだ気がして「いってええええ!!!」と断末魔が聞こえてきた。
これ以上見てはいけない、あぁ、見てはいけない、明日の夕飯は、明日は、いつまでこんなことをしているんだろうと僕の口に広がった鉄の味に吐き気がして喉を、動かしている、苦しい、苦しいとベットで這いつくばっていたら嘔吐したものは誰かの、どこかの指の第一関節までが転がった。
「……っ!」
声は飲み込まれて、シーツに血が広がってゆく、明日の朝が怖い、この指は誰のものなんだ、あぁ、ああ、苦しい、首が、息が出来なくて、どうして、どうして喉の底に苦味が流れ込むんだ、苦しい、誰か、何か、
「佐奈斗、おい大丈夫か、」
誰かが心配そうに僕の顔を眺めていた。
この人、この驚いた顔のボサボサ頭はと頭が回らず乾いた音がして五十嵐は僕から顔を背けた。
この人は五十嵐透だ、そして夢を見ていてさっきまでの人とは違うと急速に脳へ理解が流れた瞬間に「っはぁ、…っはっ」息苦しくなった。
「おい、大丈夫か!」
五十嵐が心配そうに体勢を治して僕の身体を揺すったその手に反射でしがみつく。心臓が異様に速い。
「っいっ…、」と苦悶の表情を見せた五十嵐の腕にしがみついた僕の手は、食い込みそうなほどに力を入れている、ダメだ、これは違う、どうしよう、あぁあ怖い、怖い、息が苦しい、焦る、あああ、っはぁ、息が…、
「落ち着けよどうした、深呼吸しろ、…わかった、一回離せ、」
あぁ、そうだ、でもこの手を離したら。
「……っ待って、あの、」
「喋るな!息、」
息。
そうだ、苦しいんだ。
しかし理解したら苦しい。あぁ、いまどうやら過呼吸なんだ、じゃぁ、じゃぁどうにかしなければ、はぁ、はーっ、詰ま、る、はぁ、はーっ、はぁ、「よし、それだ多分」、あぁ落ち着いてきた。あぁ、苦しい、歪んでくる。
だけど力を入れていた五十嵐の腕に、その逞しさに急に安定してきた。
酷く呼吸の音が掠れていたけど、力が抜けた隙に胸元をぽんぽんとしてくれた五十嵐の手の甲に触れたら途端に安心が、溢れだした。
「……ビビった…、」
安心が流れ込めば目は霞んでくる、これは血液循環で透明になった塩分だと理解すれば「すみません…」と、安心したように座った五十嵐を眺めた。
そのテーブルにあったブルーライトは、一時停止に仰向けで男に跨がられた僕らしき人が映っていた。理解した。あれは芋虫で、悪夢の原因じゃないかと「触らないで、」と五十嵐の手を振り払った。
僕はかつて、アダルトビデオ、しかもゲイビデオの男優だったらしい。
「…あ。
…………悪かったよ」
しゅんとした五十嵐に怒りすら覚え、「何してるんですか…」が喉で潰されて低くなった。
「いや、なんも、そういったことはしてないけど、」
「…不衛生です」
あの画面の向こうで僕は、食い扶持の事を考えているんだ。だけど、この時の事なんて覚えていない、綺麗さっぱり。
非常に、不衛生だ。
「…ごめんて、」
五十嵐は少し強めにそう言い、「コーヒーが良いんでしょうか水が良いんでしょうか」と、露骨に不機嫌になってそう続ける。
なんであんたがキレるか全然意味不明なんですけど。
「…コーヒーで」
「はいわかりましたっ、」
五十嵐はパソコンを閉じリビングでコーヒーを用意し始めた。
僕はそれに疲労を自覚する。
「…五十嵐さん」
返事はなかった。
ならもういいやと「やめていただけませんか」と告げた。
「…うん、」
「でも、ね」
「…なんだよ」
「多分、僕は、」
言葉が、途切れ途切れで気持ち悪い。
けれど五十嵐は「悪かった、落ち着くまで喋らんでいいよ」と言う、それは、優しく不機嫌。
「…覚えてないんです」
「うん」
コーヒーの臭いが近付き、五十嵐はパソコンの横に、わりと雑に海のカップを置いてくれては、振り向くように僕を見る。
「けど…」
「うん」
「それ、夕飯の事を考えてるんですよ」
そう聞いた五十嵐は少し意外そうな顔をして「そうなの?」とまたパソコンに手を掛けて、やり場のないように動作を止めた。
「…いや、開いていいですすみません」
「は?」
「すみません、あの、よくあることで…」
「いや…、えっと」
ベットから降り、素直にコーヒーを飲むことにした。降りた先には五十嵐の敷布団があるが、最近ここでの飲食すら気にしなくなってきた。
多分僕はベットに仰向けで、今日の夕飯は豆腐だけで良い、もう何も食べる気すら起きないなと考えていたら「あぁ、コレ凄いねぇ…」だなんて、粘っこい、不衛生で不潔な声が耳元に聞こえて来る気がするんだ。
今日の夕飯は水と…豆腐でなく果物が入ったゼリーが良い、透明で透けていて、輝いて綺麗で、「ほぅら自分で見てごらんよ」と湿った、男の声がするような気がして今日の夕飯は、もうスポーツ飲料で充分だと頭のなかで考えていたら、誰かが覆い被さって「佐奈斗、」と切れそうな声が聞こえてきた。
ほ…ら。
「……っ、」
喉が詰まったような、いや、圧迫されたような、そんな苦しさに頭が今日の夕飯は、今日の夕飯はもう、なんでもいいから絞め殺して欲しいだなんて舌を噛もうとしたときにがりっと、とても硬い何かを噛んだ気がして「いってええええ!!!」と断末魔が聞こえてきた。
これ以上見てはいけない、あぁ、見てはいけない、明日の夕飯は、明日は、いつまでこんなことをしているんだろうと僕の口に広がった鉄の味に吐き気がして喉を、動かしている、苦しい、苦しいとベットで這いつくばっていたら嘔吐したものは誰かの、どこかの指の第一関節までが転がった。
「……っ!」
声は飲み込まれて、シーツに血が広がってゆく、明日の朝が怖い、この指は誰のものなんだ、あぁ、ああ、苦しい、首が、息が出来なくて、どうして、どうして喉の底に苦味が流れ込むんだ、苦しい、誰か、何か、
「佐奈斗、おい大丈夫か、」
誰かが心配そうに僕の顔を眺めていた。
この人、この驚いた顔のボサボサ頭はと頭が回らず乾いた音がして五十嵐は僕から顔を背けた。
この人は五十嵐透だ、そして夢を見ていてさっきまでの人とは違うと急速に脳へ理解が流れた瞬間に「っはぁ、…っはっ」息苦しくなった。
「おい、大丈夫か!」
五十嵐が心配そうに体勢を治して僕の身体を揺すったその手に反射でしがみつく。心臓が異様に速い。
「っいっ…、」と苦悶の表情を見せた五十嵐の腕にしがみついた僕の手は、食い込みそうなほどに力を入れている、ダメだ、これは違う、どうしよう、あぁあ怖い、怖い、息が苦しい、焦る、あああ、っはぁ、息が…、
「落ち着けよどうした、深呼吸しろ、…わかった、一回離せ、」
あぁ、そうだ、でもこの手を離したら。
「……っ待って、あの、」
「喋るな!息、」
息。
そうだ、苦しいんだ。
しかし理解したら苦しい。あぁ、いまどうやら過呼吸なんだ、じゃぁ、じゃぁどうにかしなければ、はぁ、はーっ、詰ま、る、はぁ、はーっ、はぁ、「よし、それだ多分」、あぁ落ち着いてきた。あぁ、苦しい、歪んでくる。
だけど力を入れていた五十嵐の腕に、その逞しさに急に安定してきた。
酷く呼吸の音が掠れていたけど、力が抜けた隙に胸元をぽんぽんとしてくれた五十嵐の手の甲に触れたら途端に安心が、溢れだした。
「……ビビった…、」
安心が流れ込めば目は霞んでくる、これは血液循環で透明になった塩分だと理解すれば「すみません…」と、安心したように座った五十嵐を眺めた。
そのテーブルにあったブルーライトは、一時停止に仰向けで男に跨がられた僕らしき人が映っていた。理解した。あれは芋虫で、悪夢の原因じゃないかと「触らないで、」と五十嵐の手を振り払った。
僕はかつて、アダルトビデオ、しかもゲイビデオの男優だったらしい。
「…あ。
…………悪かったよ」
しゅんとした五十嵐に怒りすら覚え、「何してるんですか…」が喉で潰されて低くなった。
「いや、なんも、そういったことはしてないけど、」
「…不衛生です」
あの画面の向こうで僕は、食い扶持の事を考えているんだ。だけど、この時の事なんて覚えていない、綺麗さっぱり。
非常に、不衛生だ。
「…ごめんて、」
五十嵐は少し強めにそう言い、「コーヒーが良いんでしょうか水が良いんでしょうか」と、露骨に不機嫌になってそう続ける。
なんであんたがキレるか全然意味不明なんですけど。
「…コーヒーで」
「はいわかりましたっ、」
五十嵐はパソコンを閉じリビングでコーヒーを用意し始めた。
僕はそれに疲労を自覚する。
「…五十嵐さん」
返事はなかった。
ならもういいやと「やめていただけませんか」と告げた。
「…うん、」
「でも、ね」
「…なんだよ」
「多分、僕は、」
言葉が、途切れ途切れで気持ち悪い。
けれど五十嵐は「悪かった、落ち着くまで喋らんでいいよ」と言う、それは、優しく不機嫌。
「…覚えてないんです」
「うん」
コーヒーの臭いが近付き、五十嵐はパソコンの横に、わりと雑に海のカップを置いてくれては、振り向くように僕を見る。
「けど…」
「うん」
「それ、夕飯の事を考えてるんですよ」
そう聞いた五十嵐は少し意外そうな顔をして「そうなの?」とまたパソコンに手を掛けて、やり場のないように動作を止めた。
「…いや、開いていいですすみません」
「は?」
「すみません、あの、よくあることで…」
「いや…、えっと」
ベットから降り、素直にコーヒーを飲むことにした。降りた先には五十嵐の敷布団があるが、最近ここでの飲食すら気にしなくなってきた。
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