陶酔サナトリウム【途中完結】

二色燕𠀋

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Act.6

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 もしかして病院にケータイを持ってきた、というのはこいつかもしれない、いや、寮の同室、なら大体そうなんだろう。

 ミノルくんはドアを閉めると急に「すみませんね」と、あのハイテンションを脱ぎ捨てしょんぼりというか、落ち着いた様子でそう呟いた。

「あーでもしないと出れないんで」

 なーるほど。使いこなしたわけね。
 (本気で頭おかしいのかと思った病気とかではなく)

 掴んだ手もさっと離し、「まぁ、」と振り向きながら受付の出口の先を指差している。

 興味はあるなと「んじゃぁコーヒーでも奢る」と言ったがそうか、カフェインってダメだとかさっき言われた気がする。
 と過ったが彼はニコッと笑い「ありがとう」と言った。

 しかし心療内科の扉を出るまでは至って無言で、ホントに信じられない、あのマシンガンさと別人だ。
 更には自販機まで無言だったが自分で金を入れ不味いメーカーのブラックを押すと同時に「改めましてですが」と始まる。

 ガチャン。
 ついでに「ブラックで良いですか?」と気を配る始末。

「いや、いいよありがとう」

 俺は別の、それよりは不味くないメーカーのブラックを買ったが、彼はどこかそっぽを向いて缶コーヒーを開け、「ハシダマサユキと申します」と名乗った。

「マサユキの“マサ”が果実のジツなんで、ミノルくん」
「あぁ、そうなんだ…。
 あ、五十嵐透」
「……どっかで聞いたことあるような無いような」

 軽く認知度調査だったのだがダメだったらしい。しかし俺は大人だ、「あぁサナトの画集じゃないかな」とさもさっぱり答える。

「………あぁ!えっ、あんたがあの画家?もしかして」
「そう」
「へぇ~。なんで?」

 なんで?とは?

 疑問が顔に出ていたのだろうか、「あ、いやなんであいつの付き添いなのかって」と付け足してくる。
 ふぅん、つーか空気読めるタイプだったんだね君。

「アシスタント募集に来た。
 そしたらハチャメチャなことになってて色々あってまぁ…」
「なるほどね。
 タバコでしたっけ。病院じゃ吸えないよ」
「うん、だよね。車で吸おうかと」
「あ、止めた方がいい。俺多分あんた襲っちゃうから」
「なるほど、さっきあの女医から聞いた。もしかして性なんちゃら」
「あぁありがと気を使ってくれて。そういう言い方すんなって言われたんでしょ。セックス依存症でいいですよ。
 そう、まぁほぼ完治だけどわかんないし」
「んーまぁこっちこそ気を使ってくれて感謝なんだけどどーしてもタバコ吸いたいしなんなら大丈夫俺君ならなんかあっても蹴り飛ばせると思うから」

 そう言えばミノルくんはポカンとしたがすぐに「っはははは!」と笑い飛ばした。

「んーでもまぁごめんね、神経質なのよ。医者が裏で吸ってるとこ案内しますから」
「それはいいの?」
「うん、医者来ねぇし何話してもダイジョブっしょ」

 俺はいや、君の病状だとかを言ったわけだがまぁ敢えて言うのはやめた。
 彼は本当に気にもせずただ歩き出すので着いて行くことにする。

「あ、とか言ってあんた、どうなの?きっと今あれを引き取ってこうしてんのかなとか思って話を進めたんだけど」
「合ってる、合ってる」
「じゃぁなんとなくわかったっしょ。あんま病院側はサナを離す気がないって」
「うん。
 まぁ素人視点からの俺の客観的な意見としてはどうしてもいて欲しいのかも……まぁ別に通院でもいいとは言ってるけど俺が「無理なんでこちらに預けます」を待ってんのかなって。まぁその辺はっきり言ったけど」
「悪いね、実は踏み込む前暫く聞いてた。からまぁサナがあそこにいないのわかって入れたのもあるけども。あんたもどかしそうだなって思ったんだけどどう?」
「そうだねー…話通じねぇな女ってとことん、とか思っていた矢先だった」

 エスカレーターで一階まで降りた。
 彼はどうやら病院の奥まで向かい「わかる」と同意する。

「というか、頭のセンセーってのは頭にしか興味ねぇって消化器外科のセンセーが言ってたことがある。マジにその通りだと思うんだよね、すぐなんでも病気にしちゃうし。
 だから女がどうこう以前もあるけども、だからサナがああなってるわけでさ。論文だとかでしか語れないのは仕方ないけども」
「うん、簡単に言えば頭硬いってやつかな?」
「それもあるけど、俺サナのはセンセー共のせいもあるんじゃないかなと思うし。勿論そう、センセー達がいう“そういう職種”ってのも6割りくらいはあるだろうけどね。
 あいつ嫌いって言ったけど、あいつ仕事やる気なくてというかナメててさ、先輩にもどんだけ向いてないって言われたか。でもどーしょもなくて病んじゃった、てのもわかる気がする。俺も働けなくなったわけだし」
「あ、なるほどね」
「ただ……まぁ…」

 病院一階の最果てについた。扉がある。
 彼はその扉を難なく開けると共に、ポイっとケータイを渡してきた。
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