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Act.6
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渡してきたその動画のサムネイルですでに高度SMサナくんだとわかったが、彼は微妙にズレているのかなんなのか、真ん中の再生ボタンを押してから「あ、嫌だったら消していいよ」だなんて言ってくる。
逆に圧だ。「いや…」と見るしか対処がない。
「あ、タバコくれません?」
音はサイレント、簡易的な灰皿のみがある庭木で囲まれた狭いスペース。
画面には簡素な箱のような場所に拘束具で足を開かされた目隠しのサナトがいる。口まで利けないようだ。
ミノルくんに一本タバコを渡して銘柄とか、と過ったが、彼はどうやらなんでもいいらしい。
何も気にせず「火もください」と言った。俺もタバコを吸うことにする。
「ネコセンのクセに喘げもしないし病んで薬飲んじゃってるから勃ちもしねぇ、いや、まぁネコセンなんて勃たなくてもいいんだけどそんでこんくらいしか撮りようなくて」
「……全然わかんねぇな…」
「うん、俺たちも意味不明だった。
けどこの動画超絶倫でさ、ラリってんのよ最早。サナはしかもメスイキ出来っからのわりに重宝されてさ」
「全然何言ってっかわかんねぇけどめっちゃ足とか痙攣してね!?」
「うん、そーなのそれ安定剤キめちゃったクセにバイアグラもキメちゃってさ、」
「どーゆこと!?」
「うーんそっか、そうだよね。
えっとね、ネコセンってのは入れられ専門。こいつ勃たねぇからそれしかやれねぇのよ。メスイキっつーのは出さなくてもイケる、うーん女並みにね、もう無限、出さないのに絶倫。ノンケにゃ無縁の話だよね」
「うん全くわかんないわ」
世界が違う……!!
「んで、えーっとね、安定剤って大半が副作用で“性欲減退”とか“倦怠感”とかって出るの、いやまぁ逆なやつもあるけど。こーふんとかして動悸とか抑える役割なわけよ。から、興奮剤のバイアグラやっちゃうとダメなわけね、こう、喧嘩しちゃって」
「うわぁ……なるほどね」
「からこの痙攣はどーゆうのか最早わかんねぇんだけどそーゆー仕事してたわけ」
あいつが絶倫とか……虫も殺せなそうなクセに、マジか。
確か…そう、串屋で会ったオカマが体調不良でなんて言ってたけど……。つまりそうされてしまったということなのか?
「よく死ななかったなオイ。怖ぇわ。てか…えぇえ?そんなやるぅ?」
「この病院はウチの我が儘聞いてくれっから安定剤もそーゆーのじゃない方向で、とか話してたらしいけどね。でも俺もあいつのことよく知らないからまぁ仕事に関してはこんなもんで。ここまで俺の経験談も入れ、てとこ」
「……大変だな」
「んー、俺はここまでじゃないけどね」
そうなのか。
「ただ、うんだからセックス依存症になるメカニズムはわかる、くらいで……なんとなくね。で、これはまぁ大体の精神病の共通項だと思うよ。
俺は病むことあんまないからまた別な感じなんだけど、ナメてるって、はは、このノリで言うとなんかやらしいねいやそうじゃなくて仕事のあり方というか」
早口克つはぁはぁしてきたこの子。何これが依存症だったりするの!?
「うんまぁ簡潔によろしく」
「はは、ごめんね、完治とかしないにはしないけどまぁしてなくて」
やっぱりかー!何、スイッチやっぱAVなの!?全然不明なんだけど。
「全部それに聞こえちゃうんだよね。外歩くのも大変だったよ最初」
…これが医者の言う、要するに「犯罪者予備軍」なのか。
「いや……うん無理すんな」
直訳するとそうとしか聞こえなかったけど、でもそこまでかなぁ…?この子、そんなことは…と思うが、ここまで血の滲むような努力があった…のかもしれないし…。
「うん、はぁ、頑張るわ。
あいつはこう…躁とコレ、苦痛よね、このギャップにも見事にこてんぱんにされたらしくてさ多分」
「うん…」
「聞く限り普通なら可哀想なんだけど…みんな同業だからね、そういうのもないしさ。楽しんじゃえばよかったか、と言えばやりたくもなかった仕事だったみたいで。
ただぼんやり「使えねぇ」としか思わないもんでね。いつか辞めるだろ、みたいな。
自分を苦しめたのはやっぱ態度とか……より、なんつーかタチセンはタチセンで傲慢なやつばかりなんだよ、どこかさ。一時期、こいつイカせたらすげぇみたいなステータスまで出来ちゃったらしくてさ」
「もう泥沼もいいところというか…」
ケータイを返した。
普通に血の気が引いてくる。
「あ、タチセンって」
「うんノリでわかった」
「頭良いね流石画家先生」
「まぁ……」
「まぁ、そういうわけで色々とサンドバッグだったんだよね、サナは」
嫌いと言いつつも。
ちょっと感じていた。この子、案外良い奴タイプなのかもしれない。本当は深い友人だった、とかでは……でもサナトについての話し方は不快そうだ、自身で言う通り。
「……大体が人伝だからわかんないんだけどさ。さっき言った通り寝に帰るような場所で、寧ろだからねぇ、先輩にめっちゃくちゃボロッカスにヤられてましたとかばっかで」
「うーん、そうなんだね」
「やべぇなっつーとき大抵、そう、絵の話をぽけーっとしながら話してんのよ」
「………」
なんと言えば良いんだか。
「サナの話はウチでは相当有名でさ。みんな知ってる。俺だってあいつが失神して代役したこともあるし。
やべぇやべぇってみんな気付いてたんだよ多分、空気でわかる」
「……そうなんだね」
タバコを何本か吸い終え彼は「だからぼんやりと思ったわけ、」と、自然と扉を開ける。
「自殺したのは、夢の世界イッちまったんだなって。
だからセンセーが言いたいのもわからんでもないけどさ」
……そうか。
「難しいもんだな」
「無理なら引くべきだと思うけど、自業自得だしあいつも」
「まぁそうだね。
いまんとこ…そうじゃなくて。勿論同情とかでは……というのもわかるんだけどさ」
夢の世界になんて行っていない。確実に現実にいるよ、あいつは。
逆に圧だ。「いや…」と見るしか対処がない。
「あ、タバコくれません?」
音はサイレント、簡易的な灰皿のみがある庭木で囲まれた狭いスペース。
画面には簡素な箱のような場所に拘束具で足を開かされた目隠しのサナトがいる。口まで利けないようだ。
ミノルくんに一本タバコを渡して銘柄とか、と過ったが、彼はどうやらなんでもいいらしい。
何も気にせず「火もください」と言った。俺もタバコを吸うことにする。
「ネコセンのクセに喘げもしないし病んで薬飲んじゃってるから勃ちもしねぇ、いや、まぁネコセンなんて勃たなくてもいいんだけどそんでこんくらいしか撮りようなくて」
「……全然わかんねぇな…」
「うん、俺たちも意味不明だった。
けどこの動画超絶倫でさ、ラリってんのよ最早。サナはしかもメスイキ出来っからのわりに重宝されてさ」
「全然何言ってっかわかんねぇけどめっちゃ足とか痙攣してね!?」
「うん、そーなのそれ安定剤キめちゃったクセにバイアグラもキメちゃってさ、」
「どーゆこと!?」
「うーんそっか、そうだよね。
えっとね、ネコセンってのは入れられ専門。こいつ勃たねぇからそれしかやれねぇのよ。メスイキっつーのは出さなくてもイケる、うーん女並みにね、もう無限、出さないのに絶倫。ノンケにゃ無縁の話だよね」
「うん全くわかんないわ」
世界が違う……!!
「んで、えーっとね、安定剤って大半が副作用で“性欲減退”とか“倦怠感”とかって出るの、いやまぁ逆なやつもあるけど。こーふんとかして動悸とか抑える役割なわけよ。から、興奮剤のバイアグラやっちゃうとダメなわけね、こう、喧嘩しちゃって」
「うわぁ……なるほどね」
「からこの痙攣はどーゆうのか最早わかんねぇんだけどそーゆー仕事してたわけ」
あいつが絶倫とか……虫も殺せなそうなクセに、マジか。
確か…そう、串屋で会ったオカマが体調不良でなんて言ってたけど……。つまりそうされてしまったということなのか?
「よく死ななかったなオイ。怖ぇわ。てか…えぇえ?そんなやるぅ?」
「この病院はウチの我が儘聞いてくれっから安定剤もそーゆーのじゃない方向で、とか話してたらしいけどね。でも俺もあいつのことよく知らないからまぁ仕事に関してはこんなもんで。ここまで俺の経験談も入れ、てとこ」
「……大変だな」
「んー、俺はここまでじゃないけどね」
そうなのか。
「ただ、うんだからセックス依存症になるメカニズムはわかる、くらいで……なんとなくね。で、これはまぁ大体の精神病の共通項だと思うよ。
俺は病むことあんまないからまた別な感じなんだけど、ナメてるって、はは、このノリで言うとなんかやらしいねいやそうじゃなくて仕事のあり方というか」
早口克つはぁはぁしてきたこの子。何これが依存症だったりするの!?
「うんまぁ簡潔によろしく」
「はは、ごめんね、完治とかしないにはしないけどまぁしてなくて」
やっぱりかー!何、スイッチやっぱAVなの!?全然不明なんだけど。
「全部それに聞こえちゃうんだよね。外歩くのも大変だったよ最初」
…これが医者の言う、要するに「犯罪者予備軍」なのか。
「いや……うん無理すんな」
直訳するとそうとしか聞こえなかったけど、でもそこまでかなぁ…?この子、そんなことは…と思うが、ここまで血の滲むような努力があった…のかもしれないし…。
「うん、はぁ、頑張るわ。
あいつはこう…躁とコレ、苦痛よね、このギャップにも見事にこてんぱんにされたらしくてさ多分」
「うん…」
「聞く限り普通なら可哀想なんだけど…みんな同業だからね、そういうのもないしさ。楽しんじゃえばよかったか、と言えばやりたくもなかった仕事だったみたいで。
ただぼんやり「使えねぇ」としか思わないもんでね。いつか辞めるだろ、みたいな。
自分を苦しめたのはやっぱ態度とか……より、なんつーかタチセンはタチセンで傲慢なやつばかりなんだよ、どこかさ。一時期、こいつイカせたらすげぇみたいなステータスまで出来ちゃったらしくてさ」
「もう泥沼もいいところというか…」
ケータイを返した。
普通に血の気が引いてくる。
「あ、タチセンって」
「うんノリでわかった」
「頭良いね流石画家先生」
「まぁ……」
「まぁ、そういうわけで色々とサンドバッグだったんだよね、サナは」
嫌いと言いつつも。
ちょっと感じていた。この子、案外良い奴タイプなのかもしれない。本当は深い友人だった、とかでは……でもサナトについての話し方は不快そうだ、自身で言う通り。
「……大体が人伝だからわかんないんだけどさ。さっき言った通り寝に帰るような場所で、寧ろだからねぇ、先輩にめっちゃくちゃボロッカスにヤられてましたとかばっかで」
「うーん、そうなんだね」
「やべぇなっつーとき大抵、そう、絵の話をぽけーっとしながら話してんのよ」
「………」
なんと言えば良いんだか。
「サナの話はウチでは相当有名でさ。みんな知ってる。俺だってあいつが失神して代役したこともあるし。
やべぇやべぇってみんな気付いてたんだよ多分、空気でわかる」
「……そうなんだね」
タバコを何本か吸い終え彼は「だからぼんやりと思ったわけ、」と、自然と扉を開ける。
「自殺したのは、夢の世界イッちまったんだなって。
だからセンセーが言いたいのもわからんでもないけどさ」
……そうか。
「難しいもんだな」
「無理なら引くべきだと思うけど、自業自得だしあいつも」
「まぁそうだね。
いまんとこ…そうじゃなくて。勿論同情とかでは……というのもわかるんだけどさ」
夢の世界になんて行っていない。確実に現実にいるよ、あいつは。
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