読書感想文

二色燕𠀋

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三浦しをん『むかしのはなし』

感想-2

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わたしを記憶するひとは誰もいない。
わたし自身さえ、私のことを忘れてしまった。
胸のうちに、語り伝えよという声のみが響く。
これは多分、思い出のようなもの。
あとはただ、ゆっくりと忘れ去られていくだけの。


所謂扉文
タイトルページをめくってすぐの文章です。

一冊を通すと、「残された時間の各々の過ごし方」で、
花 だけは、どうにも、滅んだ後の話で。

チケットは世界で1000万枚のみ、ここに書かれている主人公たちは、大体当たっていない。これは学者とか、ヤクザとかが手に入れられたもので。

ヤクザに干されたホストのメールだったり
最後に空き巣が友人の願いを聞いて事情聴取書だったり
禁断の恋愛をした女子高生の精神科カルテだったり
舟師の淡い初恋日記だったり
タクシー運転手のボイスレコーダーだったり
宇宙船の中の日記だったり
地球にいた頃の思い出を語るCD-Rだったり

全話、こうして本当に「昔話」になっていて、
どれも正直好きで。

最後に残るのは、残された話を聞くことは、なんだろうか。
あの、最遊記外伝の天蓬元帥の、「ホントはなんだっていいんです、覚えていてくれれば」みたいな。これが残る。


懐かしき川べりの町の物語せよのモモちゃんも言っていて、
「だれかを好きだった記憶もなくなるぐらい生きて、俺が死んでも気づくやつが一人もいないほどになったら、そのときやっと、俺は本当に自由になれるんじゃないかと思うんだ」

そうか、と行き着くんですよね。最後には。

はい、引用を多数残します。

 俺は愛情からおまえを選んだわけじゃない。おまえが一番、俺になにも求めなかったし、おまえが一番、俺に金を遣わなかった。だから選んだ。そういう選びかたも、たまにはおもしろいかなと思って。
 そう、たぶん愛ではなく。(ラブレス)

 刑期を終えたら? さあ、どうしようか。ロケットの墓参りに行きたいね。楽しくて美しい数日を過ごしたことを、あいつに報告してやりたい。(ロケットの思い出)

 会いたい、会いたい、会いたい。
 それだけなの。(ディスタンス)

「そうだ……ラジオをつけようか」
 と僕は言った。
「いらねえよ」
 修ちゃんは船縁に寄せる波音を聞いているのか、目を閉じたまま答えた。(入り江は緑)

 私たちは生きている。どれだけ終わりが近づいてきても、哀しいほどに生きている。(たどりつくまで)

 鳥も土地もない場所で暮らす日に備え、サルはずっとずっと、そういう環境に適合する花の開発だけを続けてきたんですって。(花)

 聞こえるかい。聞いてほしい。
 すべてが終わったあとにも、この声が語りつづけるモモちゃんとの夏の思い出を。(懐かしき川べりの町の物語せよ)
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