読書感想文

青空シリーズ

泉鏡花「迷子」

　児童文学のような話で、泣いている迷子ちゃんをどうしよう、というものですね。

　短編のよさ、には「単純明快」というものもありますが、私は答えは書いていないがハッキリしている、というのはハッキリしても余韻があるものです。

　泉鏡花は毎度、情景や人物がとても浮かんでくる、この語彙センス素敵、だなんて思うんですがその一つに「強弱がはっきりしているな」というのを思いまして、


「ちつとも此邊このへんぢやあ見掛みかけない兒こですからね、だつて、さう遠方ゑんぱうから來くるわけはなしさ、誰方どなたか御存ごぞんじぢやありませんか。」
　誰たれも知しつたものは居ゐないらしい。
「え、お前まへ、巾着きんちやくでも着つけてありやしないのかね。」
　と一人ひとりが踞つくばつて、小ちひさいのが腰こしを探さぐつたがない。ぼろを着きて居ゐる、汚きたない衣服きもので、眼垢めあかを、アノせつせと拭ふくらしい、兩方りやうはうの袖そでがひかつてゐた。


ルビっ！(笑)大変っ！(笑)

　一番分かりやすいなという部分を抜いたんですが…(笑)
　いやはや本題に戻りますと、「誰も知った者はいないらしい」の一言で様子を片付けているがなんとなく、キョロキョロ見回しただろうな、て部分と、「～と一人…」からの行動、見た目、ここは長いというかちゃんと書かれてますよね。お陰で人物か非常にわかりやすいとな。

　迷子とはあたふたしちゃうねぇ、ははは～という和やかさにも、子供にとっちゃぁ大冒険だ、いや、回りにも実は大事件だ。
　まるで「はじめてのおつかい」な気分ですね。

　しかし細やかだなぁと感じるのは、小さなことをこうして取り上げている、というところでしょうかね。彼はきっとよくものを考察し眺めていたのだろうな、と思います。