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二
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それから意識は飛んでしまった。何もない、その筈なのに「おい雪、」と、衝撃で起きたらそこには慌てた陽一がいた。
「おい、ちょっ…救急車、」
きゅうきゅうしゃ。
勘弁して欲しい。だけど言葉は出ていかない、何かしらが右目で痺れてぼやけている。陽一だとわかるだけで、しかしケータイを手にしたそれは払いのけてすっ飛ばしてしまった。
驚愕の表情に「よーいち、」あやふやに言う。それで隅っこが掴めた気がした。
「ぁにしに、きたん…よ、」
「雪、」
「帰れ、」
「そんなの」
「帰…」
霧散する。視界は乱視にぼやけて感情だけが爆破された。
「帰っ…て…!」
「ムリだよ、」
「ふざけんなよっ、」
違う。
やり場はなくてなにか、手にしたものを投げるしかないが、当たらない場所だろうと頭の片隅で理解する。陽一の背後の壁にガラスが当たったようだ。
「もぅやめろっつーんだよっ!」
「落ち着けって、大丈夫だから、」
大丈夫だから?
暴力を止めた陽一の力強さに雪の微弱なふらふらした意識は倒れ込む。その胸は生温かったが自分の背を擦る優しく強い温もりに感情は頭に登り滴となった。湿った息と、言葉と。
俺は何をしている、どうしてこいつに温情を与えられている。
俺は何をしている、どうしてこいつに温情を与えた気になっている。
一歩引くしかない。
緩まったその手を離れた雪はそのまま側のソファーで寝ることにした。
ただ涙は止まない。生理現象のようにたがはない。ダルく左腕を瞼に乗せて「帰って」と震えた声で言い捨てた。
「…お前が来ないって、春斗さんが」
「謝っ…とく、帰って」
「雪、」
「いいから…、もうしないから、」
掠れた声で泣いている。
ふざけるな。
どちらともなく思うのだけど。
こうしてしまったのは自分かもしれないこうなってしまったのは自分のせいかもしれない。
陽一は仕方なしに、ちゃぶ台に見えるだけの薬をポケットにしまった。
「…また明日、渡しにくるから…」
どうだってよかった。
返事をしなければ陽一はそのまま部屋を出ていった。
どうだってよかった。
そう、本当にどうだってよかったはずだったんだと雪はそのまま眠りについた。
次に浅く起きたのは、慌てた様子でドアが空いた暗闇だった。
「あ、すんませんね」と、軽い調子の声に、ぼんやりと目が覚めてしまった。
どれほどそうしたのかはわからないが、「ははっ、雪ぅ」と言う声に、13年分の月日が一気に冷や汗になって流れ落ちた気がした。
「どーしょもねぇのな、お前」
年月を見たその過去の人物に、思考回路が一気に電気信号として理解を越えたのが、わかった。
「おい、ちょっ…救急車、」
きゅうきゅうしゃ。
勘弁して欲しい。だけど言葉は出ていかない、何かしらが右目で痺れてぼやけている。陽一だとわかるだけで、しかしケータイを手にしたそれは払いのけてすっ飛ばしてしまった。
驚愕の表情に「よーいち、」あやふやに言う。それで隅っこが掴めた気がした。
「ぁにしに、きたん…よ、」
「雪、」
「帰れ、」
「そんなの」
「帰…」
霧散する。視界は乱視にぼやけて感情だけが爆破された。
「帰っ…て…!」
「ムリだよ、」
「ふざけんなよっ、」
違う。
やり場はなくてなにか、手にしたものを投げるしかないが、当たらない場所だろうと頭の片隅で理解する。陽一の背後の壁にガラスが当たったようだ。
「もぅやめろっつーんだよっ!」
「落ち着けって、大丈夫だから、」
大丈夫だから?
暴力を止めた陽一の力強さに雪の微弱なふらふらした意識は倒れ込む。その胸は生温かったが自分の背を擦る優しく強い温もりに感情は頭に登り滴となった。湿った息と、言葉と。
俺は何をしている、どうしてこいつに温情を与えられている。
俺は何をしている、どうしてこいつに温情を与えた気になっている。
一歩引くしかない。
緩まったその手を離れた雪はそのまま側のソファーで寝ることにした。
ただ涙は止まない。生理現象のようにたがはない。ダルく左腕を瞼に乗せて「帰って」と震えた声で言い捨てた。
「…お前が来ないって、春斗さんが」
「謝っ…とく、帰って」
「雪、」
「いいから…、もうしないから、」
掠れた声で泣いている。
ふざけるな。
どちらともなく思うのだけど。
こうしてしまったのは自分かもしれないこうなってしまったのは自分のせいかもしれない。
陽一は仕方なしに、ちゃぶ台に見えるだけの薬をポケットにしまった。
「…また明日、渡しにくるから…」
どうだってよかった。
返事をしなければ陽一はそのまま部屋を出ていった。
どうだってよかった。
そう、本当にどうだってよかったはずだったんだと雪はそのまま眠りについた。
次に浅く起きたのは、慌てた様子でドアが空いた暗闇だった。
「あ、すんませんね」と、軽い調子の声に、ぼんやりと目が覚めてしまった。
どれほどそうしたのかはわからないが、「ははっ、雪ぅ」と言う声に、13年分の月日が一気に冷や汗になって流れ落ちた気がした。
「どーしょもねぇのな、お前」
年月を見たその過去の人物に、思考回路が一気に電気信号として理解を越えたのが、わかった。
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