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ホワイトチョコレート
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そもそも恋という感覚が何なのか、久しく忘れていた気がする。
小夜は帰り、迷わず後部座席に乗り込んだ。これはきっと疲れているんだ。まぁ昨日もあんま寝てないだろうしな。
案の定乗ってすぐこくこくと寝たのがバックミラー越しに見えた。
ぼんやりとまわりの景色を見てみる。花屋は見つからなかった。それっぽいのを見かけたのは店から少し遠い、いかにもおじいちゃんおばあちゃんがやっていそうな古い店だった。
「小夜もさ、大人になったなぁ…」
「ん?」
「思い出したよ。初恋ってやつをさ」
「…そうだね」
俺の初恋も、小夜と同じくらいの歳だったのかもな。
もっと前にもあった気がするけど、愛情と言う存在に気付いたのは多分それくらいだった。俺はいつから、こうなったんだろう。
「失恋でも成功でも、やっぱこーゆー話ってちょっと暖かくなるもんだな」
「確かにね」
無駄に切なかったり無駄に嬉しかったりしたあの喜怒哀楽は、初恋特有かもしれない。
恋愛にも確かにあるが、初恋はなんだか無駄に戸惑ったもんだ。それが後になってなんだかんだでこうして懐かしさを呼ぶんだ。
「純粋に恋をするってやっぱすげぇよな」
「まだ小夜は気付いてないだろうけどね。てかさっきまでびびってたのに」
そう真里が茶化してくるから。少し羞恥が沸く。確かになんであんなにびびってたんだろう。
どう転んだって俺はただの保護者じゃないか。
「ホントになー」
ふと、雪子さんの顔が浮かんだ。あの人なんで今日、一人で来たんだろう。
「なんか嬉しそうだね」
「え?そうか?」
「でも何か戸惑ってるでしょ?」
確かにそりゃぁ…戸惑うけど。
俺って今、何に戸惑ってたんだっけ。
「ねぇねぇ。その美人さんさ、また来るかな」
真里の話題変換に驚いた。驚いたと言うより、少し動揺した。
「雪子さん?まぁ、来るんじゃない?近くで花屋やってるみたいだし」
「俺も見とけばよかったなぁ」
そう、いたずらっ子の笑顔で真里は言った。
「あのおっさんがたじたじしてたよ」
「へぇ。そんな美人なのか」
「ちょっと女にあんなんなってるおっさん、面白かった」
「でも柏原さん的には光也さん向きの客なんだね」
「うーん。あの人の基準よくわかんないからな」
「俺ちょっとわかるよ」
「そうなの?」
「まぁ俺あんまカウンター出ないけどさ、なんとなくあの人が話してるの聞くと、なるほどなって思うよ」
そう言うもんなのか。
「あの人さ」
「ん?」
「閉店近くに一人で来てさ。でもどうやら酔いたいような雰囲気じゃなかったんだよな。既婚者の女がそんな時間に近くの居酒屋くるって、結構訳ありじゃない?」
「確かにねぇ…実は独り身だったりして」
「え?」
「指輪イコール既婚者とも限らなくない?例えばこんな時間に一人で飲みたくなったから指輪はめて、男を近付けないようにするとかさ」
「うーん…」
「そーゆー感じでもなさそう?」
「うん。結婚指輪ってはめてると取れなくなったりするじゃん?なんかそんな雰囲気だった気もする。結構高そうだったしね」
「でもこんな時間に一人でってなるとね。なんだろね。たまたま旦那いなかったのかな、家にさ」
「だよなぁ。普通怒るよな」
だけどそもそも。花屋というのは本当なんだろうか。いろいろと謎だ。外をぼんやり眺めながらぼんやり考える。
そうやって考えていると、真里が肩を叩いてきたので振り返ると、頬を真里の人差し指が直撃した。
典型的すぎるいたずらに、一瞬反応が遅れたが、取り敢えず指をはらった。真里はなんだか笑ってる。
「また来てくれるといいね」
「うん…まぁ」
あの場所を、気に入ってくれたらいいんだけど。
ふと真里が、俺の頭をぽんぽんと叩き、なんだか髪を弄ってくる。真里を見れば、無表情のまま前を見ていた。
片手運転なんて危ない。
「片手運転」
「…今日は疲れたんじゃない?家まで寝てなよ」
確かに言われてみれば疲れた。気疲れと言うやつだろうか。
「うん、寝れたら寝る」
そう言いつつ疲れに気が付いたらあっさり眠くなって。うとうとし始めた頃、真里の小さな溜め息が聞こえて。それがそのときの記憶の最後となった。
小夜は帰り、迷わず後部座席に乗り込んだ。これはきっと疲れているんだ。まぁ昨日もあんま寝てないだろうしな。
案の定乗ってすぐこくこくと寝たのがバックミラー越しに見えた。
ぼんやりとまわりの景色を見てみる。花屋は見つからなかった。それっぽいのを見かけたのは店から少し遠い、いかにもおじいちゃんおばあちゃんがやっていそうな古い店だった。
「小夜もさ、大人になったなぁ…」
「ん?」
「思い出したよ。初恋ってやつをさ」
「…そうだね」
俺の初恋も、小夜と同じくらいの歳だったのかもな。
もっと前にもあった気がするけど、愛情と言う存在に気付いたのは多分それくらいだった。俺はいつから、こうなったんだろう。
「失恋でも成功でも、やっぱこーゆー話ってちょっと暖かくなるもんだな」
「確かにね」
無駄に切なかったり無駄に嬉しかったりしたあの喜怒哀楽は、初恋特有かもしれない。
恋愛にも確かにあるが、初恋はなんだか無駄に戸惑ったもんだ。それが後になってなんだかんだでこうして懐かしさを呼ぶんだ。
「純粋に恋をするってやっぱすげぇよな」
「まだ小夜は気付いてないだろうけどね。てかさっきまでびびってたのに」
そう真里が茶化してくるから。少し羞恥が沸く。確かになんであんなにびびってたんだろう。
どう転んだって俺はただの保護者じゃないか。
「ホントになー」
ふと、雪子さんの顔が浮かんだ。あの人なんで今日、一人で来たんだろう。
「なんか嬉しそうだね」
「え?そうか?」
「でも何か戸惑ってるでしょ?」
確かにそりゃぁ…戸惑うけど。
俺って今、何に戸惑ってたんだっけ。
「ねぇねぇ。その美人さんさ、また来るかな」
真里の話題変換に驚いた。驚いたと言うより、少し動揺した。
「雪子さん?まぁ、来るんじゃない?近くで花屋やってるみたいだし」
「俺も見とけばよかったなぁ」
そう、いたずらっ子の笑顔で真里は言った。
「あのおっさんがたじたじしてたよ」
「へぇ。そんな美人なのか」
「ちょっと女にあんなんなってるおっさん、面白かった」
「でも柏原さん的には光也さん向きの客なんだね」
「うーん。あの人の基準よくわかんないからな」
「俺ちょっとわかるよ」
「そうなの?」
「まぁ俺あんまカウンター出ないけどさ、なんとなくあの人が話してるの聞くと、なるほどなって思うよ」
そう言うもんなのか。
「あの人さ」
「ん?」
「閉店近くに一人で来てさ。でもどうやら酔いたいような雰囲気じゃなかったんだよな。既婚者の女がそんな時間に近くの居酒屋くるって、結構訳ありじゃない?」
「確かにねぇ…実は独り身だったりして」
「え?」
「指輪イコール既婚者とも限らなくない?例えばこんな時間に一人で飲みたくなったから指輪はめて、男を近付けないようにするとかさ」
「うーん…」
「そーゆー感じでもなさそう?」
「うん。結婚指輪ってはめてると取れなくなったりするじゃん?なんかそんな雰囲気だった気もする。結構高そうだったしね」
「でもこんな時間に一人でってなるとね。なんだろね。たまたま旦那いなかったのかな、家にさ」
「だよなぁ。普通怒るよな」
だけどそもそも。花屋というのは本当なんだろうか。いろいろと謎だ。外をぼんやり眺めながらぼんやり考える。
そうやって考えていると、真里が肩を叩いてきたので振り返ると、頬を真里の人差し指が直撃した。
典型的すぎるいたずらに、一瞬反応が遅れたが、取り敢えず指をはらった。真里はなんだか笑ってる。
「また来てくれるといいね」
「うん…まぁ」
あの場所を、気に入ってくれたらいいんだけど。
ふと真里が、俺の頭をぽんぽんと叩き、なんだか髪を弄ってくる。真里を見れば、無表情のまま前を見ていた。
片手運転なんて危ない。
「片手運転」
「…今日は疲れたんじゃない?家まで寝てなよ」
確かに言われてみれば疲れた。気疲れと言うやつだろうか。
「うん、寝れたら寝る」
そう言いつつ疲れに気が付いたらあっさり眠くなって。うとうとし始めた頃、真里の小さな溜め息が聞こえて。それがそのときの記憶の最後となった。
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