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数億光年の下で
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そこから慌ただしく忘年会シーズンは過ぎ、気が付けばクリスマスを目前に控えていた。
おっさんの家には24日に押し掛けることになり、それまでおっさんはなんだか浮き足立ってる気がした。
だが当の24日、待ち合わせを駅にしたのだが、なかなか来ない。電話をすると、「マジか、そんな時間?」とか言われ、仕方なくおっさんが指定してきた、おっさん家付近の公園で待ち合わせした。
誰もおっさんの家に行ったことがなかったので、そこで待っているしかなくて。
公園に着いてから一本電話を入れると、5分くらいで現れた。
「悪ぃ悪ぃ。お詫びにうまい飯作ったから許してな」
「やったー、なんだろう」
「小夜ちゃんの好物も光也の好物も真里の好物も作ったよ」
そう言うおっさんがなんだか嬉しそうで。
それからおっさんについて行く。着いたところは少しだけ見たことがある、いかにも高そうな高層マンションで。入口なんかカードキーみたいので開けていた。
「すげぇ」
「これ…私たち三人合わせても多分…」
「住めねぇな」
「どうかな?外れにあるからなぁ、18万くらいだよ」
「…金銭感覚…」
「いやぁでもちょっとなー、引っ越そうかなとは思ってるけどね。一人で住むにはちょっと広いからな」
エレベーターに乗るとおっさんが押したボタンは10階。なんだそれ。最早空じゃねぇか。空気薄いんじゃないか?
「何階まであんの?」
「12かな」
「半端な数だな」
「うん、俺もそれ思う」
そして案内されたのは10階の一番端の部屋だった。
間取りも2LDK。お邪魔するのが怖い。なのに本人スタスタ行っちまって、「靴箱テキトーにいれて」と言われてみてみれば、目の前の扉みたいなやつ。多分これ靴箱だと思って恐る恐る開けたらビンゴ。広すぎる。
けれども半分くらいは何かの段ボールで埋っていて、下の段の一番端には何足か、明らかにおっさんが履けなそうな、むしろ履かなそうな女物の靴があって。
なんとも言えない気持ちになるのを抑え、靴をしまって家に上がる。
「広いですねー!」
と先を行く小夜を羨ましいと思った。そんな俺の肩を叩いたのは真里だった。
「ホント猫みたいだなあんた、ビビりすぎだよ」
とか軽く笑われたので少し肩の荷が下りた。確かに俺は気にしすぎだ。
促されて部屋に入ってみると、料理を並べるおっさんがいて。それを見て、シャンパンを持参したのを思い出し、紙袋を掲げた。
「お、何?」
「シャンパン」
「流石光也。まぁ座れ座れ」
三人で座ろうとして、椅子が2つ、明らかにあとで買ってきたような、折り畳みだけどわりとしっかりした木の椅子なのに気が付く。後の二つはテーブルに合ったデザインの椅子なのに。
元々ここには二人以外、立ち入る者がなかったのだろうな。
俺と小夜が座って、少しの間、おっさんはまだキッチンに立っていた。真里は料理を運んだりグラスを出したりしておっさんを手伝っている。
見回さなくても目につく位置にはまだ、彼女の痕跡があった。例えば小夜に出された猫が描いてあるカップや、開け放たれた寝室から見える然り気無くかかったワンピース。テレビ台に置かれた指輪の箱。やっぱりまだ、立ち直るには早いのかもしれない。
おっさんの家には24日に押し掛けることになり、それまでおっさんはなんだか浮き足立ってる気がした。
だが当の24日、待ち合わせを駅にしたのだが、なかなか来ない。電話をすると、「マジか、そんな時間?」とか言われ、仕方なくおっさんが指定してきた、おっさん家付近の公園で待ち合わせした。
誰もおっさんの家に行ったことがなかったので、そこで待っているしかなくて。
公園に着いてから一本電話を入れると、5分くらいで現れた。
「悪ぃ悪ぃ。お詫びにうまい飯作ったから許してな」
「やったー、なんだろう」
「小夜ちゃんの好物も光也の好物も真里の好物も作ったよ」
そう言うおっさんがなんだか嬉しそうで。
それからおっさんについて行く。着いたところは少しだけ見たことがある、いかにも高そうな高層マンションで。入口なんかカードキーみたいので開けていた。
「すげぇ」
「これ…私たち三人合わせても多分…」
「住めねぇな」
「どうかな?外れにあるからなぁ、18万くらいだよ」
「…金銭感覚…」
「いやぁでもちょっとなー、引っ越そうかなとは思ってるけどね。一人で住むにはちょっと広いからな」
エレベーターに乗るとおっさんが押したボタンは10階。なんだそれ。最早空じゃねぇか。空気薄いんじゃないか?
「何階まであんの?」
「12かな」
「半端な数だな」
「うん、俺もそれ思う」
そして案内されたのは10階の一番端の部屋だった。
間取りも2LDK。お邪魔するのが怖い。なのに本人スタスタ行っちまって、「靴箱テキトーにいれて」と言われてみてみれば、目の前の扉みたいなやつ。多分これ靴箱だと思って恐る恐る開けたらビンゴ。広すぎる。
けれども半分くらいは何かの段ボールで埋っていて、下の段の一番端には何足か、明らかにおっさんが履けなそうな、むしろ履かなそうな女物の靴があって。
なんとも言えない気持ちになるのを抑え、靴をしまって家に上がる。
「広いですねー!」
と先を行く小夜を羨ましいと思った。そんな俺の肩を叩いたのは真里だった。
「ホント猫みたいだなあんた、ビビりすぎだよ」
とか軽く笑われたので少し肩の荷が下りた。確かに俺は気にしすぎだ。
促されて部屋に入ってみると、料理を並べるおっさんがいて。それを見て、シャンパンを持参したのを思い出し、紙袋を掲げた。
「お、何?」
「シャンパン」
「流石光也。まぁ座れ座れ」
三人で座ろうとして、椅子が2つ、明らかにあとで買ってきたような、折り畳みだけどわりとしっかりした木の椅子なのに気が付く。後の二つはテーブルに合ったデザインの椅子なのに。
元々ここには二人以外、立ち入る者がなかったのだろうな。
俺と小夜が座って、少しの間、おっさんはまだキッチンに立っていた。真里は料理を運んだりグラスを出したりしておっさんを手伝っている。
見回さなくても目につく位置にはまだ、彼女の痕跡があった。例えば小夜に出された猫が描いてあるカップや、開け放たれた寝室から見える然り気無くかかったワンピース。テレビ台に置かれた指輪の箱。やっぱりまだ、立ち直るには早いのかもしれない。
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