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第四部
第五章・百人一首大会(その2)
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潮音はその翌日の昼休みにも、教室で国語の資料集を広げて百人一首のページを開いてみた。しかし百首もある和歌の中には意味すらちんぷんかんぷんなものも少なくなく、潮音はどこから覚えればいいのかさっぱりわからなかった。潮音が周囲を見渡しても、教室の中には大会に備えて百人一首の本を見ている生徒の姿もちらほら見られたが、潮音は彼女たちの様子を見ても、自分が彼女たちから大きく遅れを取っていることを感じずにはいられなかった。
潮音がそのまま教室を見回していると、他の生徒と談笑していたキャサリンと目が合った。キャサリンも潮音が国語の資料集を広げているのを見て、潮音の方に寄ってきた。
「藤坂さんも百人一首大会に出るのですか?」
キャサリンにきょとんとした顔で見つめられて、潮音は思わず口を開いていた。
「キャサリンって、百人一首の意味とかわかるの?」
「私も和歌の意味はよくわからないことが多いけれども、それでも今から千年も昔の文学が普通の家でもゲームとして親しまれているのだから、やはり日本という国はすごいと思います」
「それを言ったらうちの学校だって、文化祭で『ロミオとジュリエット』という、キャサリンの生れた国で何百年も昔に書かれた芝居をやったけどな」
潮音はそう答えながらも、心の中では以前に礼法の授業で言われた、「国際化が進む時代だからこそ、日本の歴史や文化についての理解を深めなければいけない」という先生の説教を思い出していた。そう考えると、キャサリンも百人一首のルールには興味津々のようだし、潮音は学校でわざわざ百人一首大会を開くことにも意味があるのかなと思い始めていた。
「私…なんか恥ずかしいよ。日本人なのにキャサリンに百人一首の説明さえもできないなんて。そういうのは琴絵か紫に任せときゃいいって思ってたけど」
潮音が気恥ずかしそうに話すと、キャサリンは潮音をなだめるように言った。
「気にしないでください。私だってちっちゃな頃から母に日本語や日本の文化について教わっていたし、日本の漫画やアニメだって好きだったけれども、実際に日本に来るまで日本について全然知らなかったことに気づきました。…いや、イギリスについても知らなかったかもしれません」
そこでキャサリンは、潮音の手にしていた国語の資料集をあらためて見返した。
「この百人一首だって、いくつかの歌を見ていると、その自然や季節を美しいと感じる心は、今の日本のアニメの中にも生きていると感じました。特に私がすごいと思うのは、百人一首の中には女性の詠んだ歌もたくさんあることです。今から千年も昔に女性が自分の心を素直に表現していて、それが今に残っているのですから。源氏物語や枕草子だって女性が書いたものですし」
キャサリンが日本のことを持ち上げるのを聞いて、潮音はますます気恥ずかしい思いがした。むしろキャサリンの方が、自分よりも日本の文化についてずっと理解していると思ったからだった。
そのようにして潮音とキャサリンが話していたとき、寺島琴絵が桜組の教室に戻ってきた。琴絵は潮音とキャサリンが国語の資料集の百人一首のページを広げながら話している様子を見て、だいたいの事情を察したようだった。
「キャサリンも百人一首大会が楽しみなのね」
「はい、うちの学校に百人一首大会があることは母からも聞いていましたから」
キャサリンが嬉しそうにうなづくと、琴絵は今度は潮音が手元で広げている国語の資料集に目を向けた。
「紫からだいたいの話は聞いてるわよ。藤坂さんはその場の成り行きで百人一首大会に出ると言ったけど、なかなか覚えられなくて困っているわけね」
そして琴絵は潮音の顔を向き直した。
「もしよかったら、私が百人一首についていろいろ教えてあげるわ。もうそろそろ昼休みも終りだから、今日の放課後にちょっと文芸部の部室に寄って行かない?」
琴絵が笑顔で潮音に話しかけると、潮音はその琴絵の誘いを二つ返事で了承した。潮音は琴絵が助け舟を出してくれたことに感謝したい思いだった。
その日の放課後、琴絵は潮音を文芸部の部室に誘った。潮音が部室の中に通されると、潮音はきょろきょろと壁一面の本棚に並ぶ本の数々を見返していた。潮音は読書家というわけでもなかったが、その文芸部の部室の雰囲気がどこか好きだった。
「まあゆっくりしていってよ」
琴絵は潮音を席につかせると、テーブルを挟んで向かい合うように自分も椅子に腰を下ろした。テーブルの上には、百人一首について書かれた解説書が何冊か置かれていた。
潮音がようやく落ち着きを取り戻すと、琴絵はあらためて潮音の顔を見ながら口を開いた。
「で、藤坂さんは百人一首大会に出るとは言ったものの、なかなか歌を覚えられなくて困っているわけね」
潮音がこくりとうなづくと、琴絵は潮音の顔をあらためてまじまじと見つめた。
「じゃあそんなときは、どうすればいいか教えてあげようか」
潮音は琴絵がどのようなことを言うのかと注目していると、琴絵は一転してあっけらかんとした表情で潮音に言った。
「そういうときにはね、無理に覚えようとしないのが一番よ」
潮音がその琴絵の意表をつくような発言に拍子抜けしていると、琴絵はあらためて話を継いだ。
「百首全部を覚えなきゃいけないなんて変に意気込んだりしないで、いっぺんざっとでいいから百首全部に目を通してみな。そりゃ百人一首に載っている歌の中には掛詞が使われていて内容が複雑なものや、なじみのない言葉が使われているものだってあるけど、そんなのは後回しにして、まずは自分の心の中に残るような、ピンとくるような歌がないか見てみたらいいよ」
「心の中に残るって…」
「この歌に書かれている情景が心の中に浮んで来るような歌や、この歌を詠んだ人の気持ちがわかるような歌がいくつかでもあったら、そういう歌から覚えていけばいいんじゃないかな。そういう風に思うってことは、その歌は藤坂さんの心に響くものがあるってことだからね」
その「心に響く」という言葉を聞いたとき、潮音ははっと胸をつかされるような思いがした。潮音は自らの性別か変ってから間もない春浅い日に、綾乃と流風に連れられて海岸に出かけたときのことを思い出していた。そこで潮音は、思い切って琴絵に自分の気持ちを打ち明けてみた。
「私…去年高校の入試が終ってからすぐ後に、海に行ったことがあるんだ。そのときの私は、自分がいきなり男から女になってしまったというショックと、将来への不安で押しつぶされそうになっていて、物事を考える余裕すらなかった。でもそんなとき、青い海やその彼方に広がる空を見て海からの風に吹かれ、靴を脱いで波打ち際で海の水に足を浸してみたとき、ずっと忘れていたものを思い出したような気がしたんだ。心の底から突き上げてくるようなものを感じて、凍てついていた心が解きほぐされるような思いがした。『感動する』ってこういうことなんだって思ったよ」
潮音はそのとき、早春のまだ冷たい海の水が、さざ波となって自らのくるぶしをなでたときの清冽さを思い出していた。その潮音の言葉を、琴絵は興味深そうな面持ちで黙って聞いた後で、笑顔を浮べて口を開いた。
「その『感動する』という気持ちこそが大切なんじゃないかな。その藤坂さんが言う『感動する』という心は、百人一首の歌を詠んだ歌人だって変らないはずだよ。そうやって藤坂さん自身が文学を好きになれたら、百人一首を覚えるのだって少しは楽になるんじゃないかしら」
そして琴絵は、あらためて潮音に語りかけるように言った。
「藤坂さんだっていろいろ悩んでいることはわかるけど、そんなの誰だってみんな一緒よ。私だって将来は小説家になりたいと思ってネットの小説サイトに投稿だってしてるけど、なかなか読んでもらえないしね。ましてプロの小説家としてそれだけで生活していける人なんて、ほんの一握りしかいないっていうし。あと大学では文学部に行って文学の研究をしたいって思ってるんだけど、親からは文学の研究を続けていくのは大変だし、文学部は就職にも不利だから、もっと就職に有利な学部にした方がいいと言われてるんだ。おまけにうちの親からはちょくちょく、『小説書くのもいいけど勉強もしろ』と言われてるし」
そこで潮音は、正月にみんなで初詣に行ったとき、喫茶店で話題が受験のことになると琴絵が少し表情を険しくさせて口ごもるような様子をしたことを思い出して、あのときの琴絵の態度にはやはり意味があったのかと気づいていた。
「寺島さんほどの優等生でも、そんなに悩むことがあるなんて」
潮音が意外そうな顔をしていると、琴絵は呆れたような顔をした。
「当り前でしょ。悩みなんか誰にだってあるよ。『小説家になりたい』なんて言ったって、私みたいにそう思って小説書いてる人が日本の中だけでどれだけいると思う? 私としちゃ就職に有利とかそんなのじゃなくて、ほんとに自分の好きなことをやってみたいけど、現実はそうもいかないし。…でも話が百人一首からそれちゃったね。それにあんな辛気臭い話してごめんね。ともかく藤坂さんは百人一首についてはまだ初心者なんだから、あまり勝とうなどと意気込んだりしないで、むしろ百人一首を楽しめればいいくらいの気持ちで気楽にやればいいよ。自分の好きな歌があったら、『この札は自分が取る』という気持ちでやればいいかもね。でも時間もたったから、そろそろ藤坂さんも家に帰った方がいいんじゃないかしら」
「ありがとう、寺島さん。百人一首のこと以外にもいろいろ話聞いてくれただけじゃなくて、素直に自分の気持ちを打ち明けてくれて。これで少し気が楽になったよ」
そこで潮音は、琴絵と別れて帰途につくことにした。
潮音は帰宅する間も、琴絵にはあれだけの文学の知識があるのにそれを活かすのも大変なのかと思うと、まして自分には何があるのか、何をすればいいのかと自問せずにはいられなかった。潮音は車窓に流れる海を眺めながら、先ほどの琴絵の言葉を思い出していた。
――その『感動する』という気持ちこそが大切なんじゃないかな。
潮音はこの先自分が何をするにしても、その「感動する」という心は失いたくないと感じていた。
潮音がそのまま教室を見回していると、他の生徒と談笑していたキャサリンと目が合った。キャサリンも潮音が国語の資料集を広げているのを見て、潮音の方に寄ってきた。
「藤坂さんも百人一首大会に出るのですか?」
キャサリンにきょとんとした顔で見つめられて、潮音は思わず口を開いていた。
「キャサリンって、百人一首の意味とかわかるの?」
「私も和歌の意味はよくわからないことが多いけれども、それでも今から千年も昔の文学が普通の家でもゲームとして親しまれているのだから、やはり日本という国はすごいと思います」
「それを言ったらうちの学校だって、文化祭で『ロミオとジュリエット』という、キャサリンの生れた国で何百年も昔に書かれた芝居をやったけどな」
潮音はそう答えながらも、心の中では以前に礼法の授業で言われた、「国際化が進む時代だからこそ、日本の歴史や文化についての理解を深めなければいけない」という先生の説教を思い出していた。そう考えると、キャサリンも百人一首のルールには興味津々のようだし、潮音は学校でわざわざ百人一首大会を開くことにも意味があるのかなと思い始めていた。
「私…なんか恥ずかしいよ。日本人なのにキャサリンに百人一首の説明さえもできないなんて。そういうのは琴絵か紫に任せときゃいいって思ってたけど」
潮音が気恥ずかしそうに話すと、キャサリンは潮音をなだめるように言った。
「気にしないでください。私だってちっちゃな頃から母に日本語や日本の文化について教わっていたし、日本の漫画やアニメだって好きだったけれども、実際に日本に来るまで日本について全然知らなかったことに気づきました。…いや、イギリスについても知らなかったかもしれません」
そこでキャサリンは、潮音の手にしていた国語の資料集をあらためて見返した。
「この百人一首だって、いくつかの歌を見ていると、その自然や季節を美しいと感じる心は、今の日本のアニメの中にも生きていると感じました。特に私がすごいと思うのは、百人一首の中には女性の詠んだ歌もたくさんあることです。今から千年も昔に女性が自分の心を素直に表現していて、それが今に残っているのですから。源氏物語や枕草子だって女性が書いたものですし」
キャサリンが日本のことを持ち上げるのを聞いて、潮音はますます気恥ずかしい思いがした。むしろキャサリンの方が、自分よりも日本の文化についてずっと理解していると思ったからだった。
そのようにして潮音とキャサリンが話していたとき、寺島琴絵が桜組の教室に戻ってきた。琴絵は潮音とキャサリンが国語の資料集の百人一首のページを広げながら話している様子を見て、だいたいの事情を察したようだった。
「キャサリンも百人一首大会が楽しみなのね」
「はい、うちの学校に百人一首大会があることは母からも聞いていましたから」
キャサリンが嬉しそうにうなづくと、琴絵は今度は潮音が手元で広げている国語の資料集に目を向けた。
「紫からだいたいの話は聞いてるわよ。藤坂さんはその場の成り行きで百人一首大会に出ると言ったけど、なかなか覚えられなくて困っているわけね」
そして琴絵は潮音の顔を向き直した。
「もしよかったら、私が百人一首についていろいろ教えてあげるわ。もうそろそろ昼休みも終りだから、今日の放課後にちょっと文芸部の部室に寄って行かない?」
琴絵が笑顔で潮音に話しかけると、潮音はその琴絵の誘いを二つ返事で了承した。潮音は琴絵が助け舟を出してくれたことに感謝したい思いだった。
その日の放課後、琴絵は潮音を文芸部の部室に誘った。潮音が部室の中に通されると、潮音はきょろきょろと壁一面の本棚に並ぶ本の数々を見返していた。潮音は読書家というわけでもなかったが、その文芸部の部室の雰囲気がどこか好きだった。
「まあゆっくりしていってよ」
琴絵は潮音を席につかせると、テーブルを挟んで向かい合うように自分も椅子に腰を下ろした。テーブルの上には、百人一首について書かれた解説書が何冊か置かれていた。
潮音がようやく落ち着きを取り戻すと、琴絵はあらためて潮音の顔を見ながら口を開いた。
「で、藤坂さんは百人一首大会に出るとは言ったものの、なかなか歌を覚えられなくて困っているわけね」
潮音がこくりとうなづくと、琴絵は潮音の顔をあらためてまじまじと見つめた。
「じゃあそんなときは、どうすればいいか教えてあげようか」
潮音は琴絵がどのようなことを言うのかと注目していると、琴絵は一転してあっけらかんとした表情で潮音に言った。
「そういうときにはね、無理に覚えようとしないのが一番よ」
潮音がその琴絵の意表をつくような発言に拍子抜けしていると、琴絵はあらためて話を継いだ。
「百首全部を覚えなきゃいけないなんて変に意気込んだりしないで、いっぺんざっとでいいから百首全部に目を通してみな。そりゃ百人一首に載っている歌の中には掛詞が使われていて内容が複雑なものや、なじみのない言葉が使われているものだってあるけど、そんなのは後回しにして、まずは自分の心の中に残るような、ピンとくるような歌がないか見てみたらいいよ」
「心の中に残るって…」
「この歌に書かれている情景が心の中に浮んで来るような歌や、この歌を詠んだ人の気持ちがわかるような歌がいくつかでもあったら、そういう歌から覚えていけばいいんじゃないかな。そういう風に思うってことは、その歌は藤坂さんの心に響くものがあるってことだからね」
その「心に響く」という言葉を聞いたとき、潮音ははっと胸をつかされるような思いがした。潮音は自らの性別か変ってから間もない春浅い日に、綾乃と流風に連れられて海岸に出かけたときのことを思い出していた。そこで潮音は、思い切って琴絵に自分の気持ちを打ち明けてみた。
「私…去年高校の入試が終ってからすぐ後に、海に行ったことがあるんだ。そのときの私は、自分がいきなり男から女になってしまったというショックと、将来への不安で押しつぶされそうになっていて、物事を考える余裕すらなかった。でもそんなとき、青い海やその彼方に広がる空を見て海からの風に吹かれ、靴を脱いで波打ち際で海の水に足を浸してみたとき、ずっと忘れていたものを思い出したような気がしたんだ。心の底から突き上げてくるようなものを感じて、凍てついていた心が解きほぐされるような思いがした。『感動する』ってこういうことなんだって思ったよ」
潮音はそのとき、早春のまだ冷たい海の水が、さざ波となって自らのくるぶしをなでたときの清冽さを思い出していた。その潮音の言葉を、琴絵は興味深そうな面持ちで黙って聞いた後で、笑顔を浮べて口を開いた。
「その『感動する』という気持ちこそが大切なんじゃないかな。その藤坂さんが言う『感動する』という心は、百人一首の歌を詠んだ歌人だって変らないはずだよ。そうやって藤坂さん自身が文学を好きになれたら、百人一首を覚えるのだって少しは楽になるんじゃないかしら」
そして琴絵は、あらためて潮音に語りかけるように言った。
「藤坂さんだっていろいろ悩んでいることはわかるけど、そんなの誰だってみんな一緒よ。私だって将来は小説家になりたいと思ってネットの小説サイトに投稿だってしてるけど、なかなか読んでもらえないしね。ましてプロの小説家としてそれだけで生活していける人なんて、ほんの一握りしかいないっていうし。あと大学では文学部に行って文学の研究をしたいって思ってるんだけど、親からは文学の研究を続けていくのは大変だし、文学部は就職にも不利だから、もっと就職に有利な学部にした方がいいと言われてるんだ。おまけにうちの親からはちょくちょく、『小説書くのもいいけど勉強もしろ』と言われてるし」
そこで潮音は、正月にみんなで初詣に行ったとき、喫茶店で話題が受験のことになると琴絵が少し表情を険しくさせて口ごもるような様子をしたことを思い出して、あのときの琴絵の態度にはやはり意味があったのかと気づいていた。
「寺島さんほどの優等生でも、そんなに悩むことがあるなんて」
潮音が意外そうな顔をしていると、琴絵は呆れたような顔をした。
「当り前でしょ。悩みなんか誰にだってあるよ。『小説家になりたい』なんて言ったって、私みたいにそう思って小説書いてる人が日本の中だけでどれだけいると思う? 私としちゃ就職に有利とかそんなのじゃなくて、ほんとに自分の好きなことをやってみたいけど、現実はそうもいかないし。…でも話が百人一首からそれちゃったね。それにあんな辛気臭い話してごめんね。ともかく藤坂さんは百人一首についてはまだ初心者なんだから、あまり勝とうなどと意気込んだりしないで、むしろ百人一首を楽しめればいいくらいの気持ちで気楽にやればいいよ。自分の好きな歌があったら、『この札は自分が取る』という気持ちでやればいいかもね。でも時間もたったから、そろそろ藤坂さんも家に帰った方がいいんじゃないかしら」
「ありがとう、寺島さん。百人一首のこと以外にもいろいろ話聞いてくれただけじゃなくて、素直に自分の気持ちを打ち明けてくれて。これで少し気が楽になったよ」
そこで潮音は、琴絵と別れて帰途につくことにした。
潮音は帰宅する間も、琴絵にはあれだけの文学の知識があるのにそれを活かすのも大変なのかと思うと、まして自分には何があるのか、何をすればいいのかと自問せずにはいられなかった。潮音は車窓に流れる海を眺めながら、先ほどの琴絵の言葉を思い出していた。
――その『感動する』という気持ちこそが大切なんじゃないかな。
潮音はこの先自分が何をするにしても、その「感動する」という心は失いたくないと感じていた。
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