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10話 私にだって言い分があります!
しおりを挟む「まあ、なんだ。俺も質問したいことがいろいろあるのだが、いいか?」
私が絶望に打ちひしがれている姿を見て申し訳なさそうにアレクが聞いてきた。
「私が答えられる範囲でならいいですわ。」
もうどうにでもなれと半ば、投げやりになりながら答えた。
「まずは一つ、なんで君みたいなご令嬢が護衛も付けず街の中をあんな時間にほっつき歩いていたんだ? …まあ、なんとなく予想はできるのだがな。」
やっぱり十中八九そういうことを聞かれると思っていた。
ここはひとつ胸をはって宣言してやるわ。
「それは、もちろん、家出をしたからに決まっていますわ!」
「なんつー、無謀な事を……。で、家出の原因は親父さんにでも怒られたからとか?」
アレクの想像していた通りだったらしくあきれ顔で聞いてくる。
なんだか馬鹿にされているみたいで少しムカついたが私にも言い分がある。
「だって、あれくらいの事で修道院に行けとか横暴すぎると思わない? 私、まだ18なのよ? これからやりたい事とか行きたい所とかたくさんあるのにこれからの人生、ずっと一つの場所に閉じ込められるなんて考えられないわ! それなら私は貴族の名を捨てて平民になった方がましだわ!」
いつもの令嬢口調も忘れて捲し立てた。
「お前の気持ちはわからなくもないが考えが浅はかすぎるな。簡単に平民になると言っているが生活はどうするんだ。今までのように何でもしてくれる侍女や食べ物を用意してくれる料理人もいないのだぞ。」
「私は一通り自分のことはできるし、炊事洗濯なんて簡単だわ。あなたがここへ連れてこなければ明日から職を探して仕事だってするつもりだったし!」
「はっ! どうだかな。どうせ侍女たちができるのだから自分もできるとかいうやつじゃないのか? 悪いことは言わないから、痛い目見ないうちにさっさと家に帰った方がいいぞ。」
アレクは馬鹿にしたような顔で言ってくる。
くそぅ、ほんとさっきからムカつく奴だわ。
記憶がないただの令嬢だったヴィクトリアだったら無謀な事だと思うけど、前世の記憶がある今の私ならバイトや仕事をした経験があるし、一人暮らしだってしていたのだから普通に生活できる。
「馬鹿にしないで! あんたがここに連れてこなければ明日から職を探して仕事を始めるつもりだったのよ! どうせ、私を差し出してお父様の覚えをめでたくしようとか思っているのでしょ! おあいにく様、何度連れて行かれようとも絶対、抜け出してやるんだから!」
「……まったく、以前の深窓のご令嬢という噂は幻だったんだな。こんなじゃじゃ馬娘だったとは。宰相の気苦労が窺い知れるぜ。」
アレクは呆れたように額に手をあてて大きくため息をついた。
そして、しばらく何かを考えている素振りを見せた。
「…それで、どうするの?私を家まで連れて行くの? 連れて行ってもまた出るから無駄だけどね!」
「あーちょっと待て。……よし、わかった。お前、そんなに仕事できる自信があるならしばらくの間この家で働かないか?」
「へ?」
何かを決心したように、アレクが言った言葉はまさに私にとって晴天の霹靂だった。
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